表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

おどろきつづき

それから。

当たり前と言うか、何というか。

結界が強いおかげで、寂しさと寒さが直結することは無くなったが、沈みがちなあたしの凹みを受けて、お天気も崩れがち。

雪・曇り・雨・霙など、からっと晴れた日がほとんど無い。

それに、遠からず体調も崩しそうだ。

暖房器具の使い方もそうだが、ほとんどの設置された器具が、あたしには使用不可。

さすがに、蛇口を捻れば水がでるし、お湯にもなる。

しかし。

壁にはめ込まれたオーブンレンジにしか見えない暖房器具らしきものは、どうすれば動くのか。

教えられていたとはいえこの世界の読み書きは小学生低学年レベル。

平仮名の読みで形が変わった形式の、暗号みたいに使用できる文字でなかったら幼稚園だったかもしれない。

もっとも、単語自体の語彙が少ないため、◎◎を△▽する、とかの意味がわからない。

特に、暖房器具は中に何か入れてそれを反応させて暖める形式らしく、その何かが分からない。

拾ってきた薪とかかな、と思ったけど、無理でした。

魔法が使えないし、それを補助する器具も無いし、はっきりいって手詰まりだ。

何となく、この世界のコンロっぽいものに嵌っていて火を噴く赤い硝子球の親戚みたいなヤツを入れるんだと思うんだけど。

コンロから外すことはできたが、それが失敗で何かやらかしたら、今度はコンロも使えなくなってしまう。

相手は暖房器具。電子レンジは卵で爆発するし、あんまりめちゃくちゃは出来ない。

今はとりあえず、外から石を拾ってきてそれを熱し、鍋に入れて、布を巻いて抱っこして暖を取っている。

ううう、凍死したら、大変なことになるんだからね!!


なぁんて、思っていたのも数日前。

最初のうちは出来あいの食べ物(パンとお菓子)も日に一度運ばれてきていたが、今は、食材だけが三日に一度来る。

パンは粉に、お菓子も粉に。砂糖らしきものが増え、何か分からんが毒薬のにしか見えない新品の十円硬貨粉のような色のが調味料に追加された。

料理するにも、米を炊いたり、肉と魚は焼いたり煮込んだりするが、野菜が曲者だった。

卵は無難にゆで卵かな、と思ったら、水に色が出て鍋が染まったし。

この世界、玉葱は果物みたいですよ。

ぺりっとあの茶色(この世界じゃ黄色)の皮を剥き、あの白い皮みたいな中身を適度に剥いてそのまま食べる。

玉葱そのままの食感で、甘みと果汁が口の中に溢れる。しゃりしゃりするライチみたいな感じだ。

とりあえず、死にはしなさそうなので、野菜類は一度は生で齧ってみることにした。

驚いたことに、お芋が。じゃが芋が。見た目ジャガイモの感じがするのに、お芋じゃない。

パッと見と皮が硬い殻みたいになってイマイチ分からなかったが、中身がマシュマロのようにふかふかで甘~~いのだ。

美味しかった。焼いてみたら、やっぱりマシュマロみたいにとろとろになる。


用途が分からないものも多かったし、当初はその、冷蔵庫も電源が分からなくて困ったが。(裏に元のスイッチがあったので問題は解決した)

それに関しては、外が寒いので、鍋に密封してお外に置いておいたら問題が無い。

むしろ、最近は解凍に困るくらい凍る。


そして。やっぱり。


「さみしいよう」

ぶっちゃけ、まだこうやって弱音がでるのが不思議なくらい、寂しい。

「お腹、痛いし」

大多数の女の宿敵だ。

ぶっちゃけ、男だと思われているあたしにそれようの用品が準備されることも無く。

死にそう。あたし、ただでさえ重いタイプで、薬必須なのに。

ああ、目の前がぐらぐらする。


誰か。(縣陰さん)

 誰か。(馨ちゃん)

  誰か。(響さん)

…………お願い、助けて。


あたしは、眠気もあって、意識を途絶えさせた。



*****亜純SIDE*****

仕事の溜まった部屋で、俺は頭を抱えていた。

あの、馬鹿留守居役のせいで、秋祭りで見込んでいた収益は黒字どころか、赤字に大転落。

最近、微妙に寒さが緩んできたと思って様子を見に行ってみれば、女二人と同衾している始末。

「王、不甲斐無い臣下をお許しください」

異世界でゆっくりされているはずの王に頭を下げる。

歴代でも寛容で高い理念をお持ちの王に、あのような学もない者が留守居となったのは何故なのか。

はぁ。ため息も出ようというものだ。

俺はまだ一度も休去に至ったことはないから、どうなっているのか想像もつかない。

そんな未熟な年齢のせいか、周りにもあまり信用されていないしな。

部屋も暖まったし、気分を変えるために空気を入れ替えようと窓際に立つ。

ん?暗いな。またあの留守居は性懲りも無く落ち込んでいるのか?

いい年をした男が、みっともない。

「あ、あああ、亜純宰相筆頭!!」

縣陰か。

「どうし、!!!」

振り返れば、自慢のヒゲを乱れさせた縣陰が、息を乱して部屋に乱入してきた。

「た、た太陽が!!」

そういえば、暗いと………あの、あの留守居は、留守も出来ぬのか!!!

空は、夜のように暗く、あるはずの太陽の姿は全く見えなかった。

あの無能留守居、この世界を滅ぼす気か!!

***************

久々の投稿です。

ちょっとネットに触れなくなるので三話いきます。

楽しみにしてくれてる人が楽しんでくれるといいなと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ