花弁〜散らせてあげましょう〜
貴方にはキラキラと輝いた花弁があります。
貴方自信のなかに唯一無二の誰もが真似することのできない
綺麗な紅の花弁が秘かに輝いています。
けれど貴方は気づきません。
だって自分の自身の中が見えないから。
貴方は自分の中にある輝く花弁見たくはありませんか?
自分を支えてくれる美しい花弁見たくはありませんか?
そしてその花弁はみんな違ってみんないいのです。
誰も真似ることのできない貴方の個性が溢れてるんです。
素敵ですよね。
貴方自信にあるその美麗な花弁、私がご覧にならせてあげましょうか?
「……やめとく」
まるで宗教の勧誘のような意味のわからないことをまくし立てる女性。
そんな奴は無視して関わらないようにするべきだ。
「……貴方の美しい……花弁」
「……?」
女が何か呟いた。
何だか少し気になって進みかけていた足を止めてしまった。
関わるなという赤信号を無視しても好奇心が湧いてきて……ついに振り向いてしまった。
「……あ」
そのとき俺はありえない情景を見た。
だけど俺はなぜか怖いとも感じる余裕さえもなく体が動かなかった。
女は刃物を振りかざしていた。
不思議と冷静に実況できるほど頭は冴えている。
他人事のように「ああ……俺死ぬのか」なんて思った。
ただぼぉーとそれを見上げ俺はキラリと刃が反射するとこもはっきりと見た。
「下さいぃぃぃぃ!」
発狂したような声。
女の刃物が見えなくなった……と思ったら「うっ」と暑さを感じた。
……ああ俺死ぬんだな。
あっけねーな。
貴方の体から咲き誇る花弁、実に美しいですよ。
ああいつまでもこの状況を見ていたいです。
ですが、この花弁は黒く枯れていってしまうんですよね。
だから新たな花弁を探すことにしましょう。
大丈夫、貴方の花弁は私がしっかりと見届けてあげましたよ。
最期に美しく散れてよかったですね。
美しい花弁でした。
綺麗な花弁でした。
素敵な花弁でした。
人間は最期にこんな花弁を見せてくれるなんてとても素晴らしい生き物です。
花弁、ありがとう。
「さあ貴方も美しい花弁見たくはありませんか?私が散らせてあげましょう」
白いワンピースに赤い紅い花弁が美しい柄となって描かれている。
ああ散りざま。美しい花弁。命が、チ、ル──。