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第十話 まずいかもしれない

評価ポイントがまた伸びてる……っ!!

入れてくださった方々ありがとうございます!

できればブックマークも増えて欲しいです!笑

 

 断りの言葉を口にしようとした瞬間、俺の口が塞がれた。

 原因はもちろん、王女様だった。


 え、王女様!? くそ、いつの間にってか、力つよ! こんな細腕のどこにこんな力が……! ほ、解けない……!


「異論、何でしょうか?」

「おおおふぅおぅぐ(異論しかありません!)」

「ふむふむ、異論はないと?」

「ふぐ、ふぅおふぐ(いや、異論あるって!)」

「――ないそうです」


 まさかとは思うが、この王女様、このまま押し切ろうとしてる? この俺の口が塞がれた状態で? はっ、だとしたら甘い! 見てみろ! あの困り切った王妃様の顔を……! 王妃様は俺たちの様子をずっと観察している。


 この状況を見れば、王女様がこの場を無理やり進めようとしていることくらい分かるはずだ!

 そうだろう! 王妃様!


「ふふ、そんなにラブラブな所を見せなくても大丈夫よ、ディアナ。あなたの母は『応援』していますから」


 ……な……ん……だと……。


 あまりの衝撃に固まる俺。


 この人、俺たちのことをよく見ているようで、実は見ていないな? 口を手で塞ぐ時点で、普通ではないことにどうして気づけない! 母親の前で口を塞ぐという行為、そしてその行為に対して大して抵抗している『ようには』見えない俺!


 バカップルのするやつだ!


 ……絶句であった。

 ちがう……ちがうんだ。これでも全力で抵抗しているんだ。なのに、どういう訳か、身体が全く動かせないんだ。まるで首の皮を掴まれた猫みたいに。


「ありがとうございますお母様。アレン様と二人、まずは目前の壁を越えて見せますわ」

「ふふ、頑張りなさい。『あの人』はなかなかに頑固だわ。特にあなたのことに関しては……」

「ええ、承知しておりますわ」

「そう。ならば良いのです。昔からあの人は貴女のことになると……と、また話し出してしまいそうになりますわね」

「ふふ、お母様、大丈夫ですわ。心配しなくてもアレン様であればきっとお父様も認めてくださいますわ」

「押さえるべきポイントはしっかりとね? あとは二人で乗り越えることよ。……私も歳かしら? ついついお節介を焼きたくなってしまうわ」


 ……やべ、どうしよう。これ完全に婚約の流れになってない? 完全に母親としての立場から発言してない? 

くそ、アゴまで固定されて、まともに発音することすら出来ねぇ。


「彼の両親には手紙を送るとして、時間があるようならこの後お茶でもどうかしら?」


 それから思いついたかのように両手を合わせる王妃様。

 彼女は途端に目をキラキラとさせて、俺たちを見る。


「そうです。実は(わたくし)、昔から娘と恋のお話をすることが夢だったのです! 二人の馴れ初めとか聞かせてちょうだいな」

「是非とも。実を言うと、(わたくし)もお母様に話したいことが沢山ありましたの! ……ですが、アレン様に馴れ初めを聞かれるのは……その……大変恥ずかしいので、お母様と二人きりの時に……」


 ……おかしい。さも馴れ初めがあるかのような発言が聞こえてくるんだが?


 アレン坊やは未だ恋をしたことがないんだけどな。いつの間に、彼は大人になってしまったのだろうか。


「うふふ、では、久しぶりに母娘のお茶を堪能することと致しましょうか」

「はいよろこんで」


 俺は、ふと、思った。


「アレン様、本日は王城まで足をお運びになってくださり、ありがとうございます」


 ……なんか、話、まとまってない?


「あなたも突然の出来事に驚いたでしょう。ごめんなさいね。私のディアナが。しかし、これから襲いかかってくる試練は、どうあがいても二人の前に必ず現れます。ですが、忘れてはなりませんよ。苦しい時、悲しい時、そういう時こそ二人で力を合わせるのです。そして、幸せは二人で分け合いなさい。


ーーディアナのこと、よろしくお願い致しますわ」



 ちょ……ちょ、マジで、なんの話をしているんだ!

 試練? 愛する者と力を合わせろ? それに王女様のことをよろしくって……、え、それってどういう意味?


 ……まさか、王妃様公認とか言わないよね!?


 俺は出せない声に見切りをつけ、代わりに目線で訴えかける。


「……(嫌です!)」

「ふふ、その表情、ますますあの人に似てきましたね。ディアナ、あなたがしっかりとアレンを支えるのですよ」

「承知しております」


 あああああああ! 承知されてるぅ――!!


「ささ、アレン様。入り口に馬車をご用意しておきました。お見送りを致しますわ」


 呆然としている俺の手を、王女様が握ってくる。

 固定されていた口と顎が自由になる。

 俺はチャンスだと思い、王妃様にお断りの言葉を言おうとするのだが……。


「――それは止めて置いた方がいいですわ。お母様は温厚そうに見えて、じつは非情なお人です。もしも先ほどの発言を撤回された場合、アレン様は薄情者として、お母様に目を付けられますわ。これから『この国で』生きていけなくなるのは、アレン様も望むところではないでしょう?」


 ――鎖。それは、強い特権を持つ者が、持たない者に対して行う精神的枷のことである。


 ばっちりと俺の心をとられてならない『この国での生活』。

 王女様が国と言ったからには、俺は婚約破棄をした場合、この国で満足に生きていないという……そういう脅しだ。


 なぜ国単位での生活となるのか?

 それは、彼女たちが国を『動かす』立場にある人間だからだ。

 俺は王女様の言うことを理解して、もしものことを考えて顔を青ざめた。


「ふふ、大丈夫ですよアレン様。私とこれから共に居ればなにも心配することはありません。私が必ず幸せにして見せますわ」



 そして思い出される昨日(呪い)の言葉。


「……ちなみに俺が誰かに殺されそうになった時は――」

「殺します」

「不慮の事故とかで意識不明の時は――」

「殺します」

「……浮気したら」

「殺しますよ?」

「前世の記憶が蘇ったとかで、人格が入れ替わったら」

「殺しますね」

「逃亡したら?」

「逃げる気がなくなるまで追いかけるのみです」

「そうですか……」


 ずいぶんと逃げ道のない、殺意溢れるプロポーズであった。

 俺からしてみれば、王女様。

 ……王妃様よりあなたの方が何倍も怖いです。


 そうして俺は王女様に連れられ、帰路へとついた。

 学園の寮に着き、ベッドに横たわった俺は思った。





 ……なにか重要なことを忘れている気がするんだけど、なんだっけ?



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