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首なし熊を焼き尽くし、呆然としている女性の方を向く。どうやら恐怖のあまり悲鳴すら出せなかったらしい。
このまま見つめあっても埒が明かない、話しかけよう。
「あの、怪我は有りませんか?」
「え、あ、はい」
ああよかった、ちゃんと返事してくれた。何も言えない状態だったら余計な時間を食う所だった。
そうだ、この人に結晶使ってみるというのはどうだろう?感情視認使った限りでは根底は普通にいい人っぽいし。でも戦いに巻き込むのはなぁ。そこは本人次第か。そもそも能力の適性あるかどうかも感情視認じゃ分からん。
「…」
「…」
は、話が進まねえ!何て言えばいいんだこういう時って!?くそ、最後に他人とまともに会話したのっていつだ?
たぶん年単位で前だ。なんでそんな空いてんだよ!
えーっと、あー…よし。
怪我はなさそうだし、まずは説明からするか。その後に断られることを前提で勧誘してみよう。
記憶操作の類は使えないし、断られた時の秘匿をどうするかが問題だな。一人で狩るのも限界が近そうだし、承諾してくれると嬉しいが。
「とりあえず、色々と説明しますね」
「は、はい」
なんか説明して欲しそうな雰囲気だったので、ざっと知っていることを話した。
自分が能力者であること、断定できないがあの化け物たちは人の感情から産まれたものであること、このまま数が増えたら人を襲いだすかもしれないこと等々。
あと、彼女は「伊藤伊織」さんだそうだ。姓名両方に「伊」がついてるのって珍しいな。普通に一人暮らしでここの近くの大学に通ってる21歳らしい。嘘は言ってなさそうだし事実だろう。
最初はずっと「はい???」みたいな反応だったが、実際に首なし熊と俺の火エンチャ拳を目の当たりにしていたおかげか、すんなりと受け入れてくれた。
さあ、ここからが本番だ。乗ってくれるといいが。
「もしよければ、協力していただけ──」
「わ、私にできることなら!」
「え」
早くない?ちゃんと考えた?普通に腕バッサリ斬られたり毒で悶え苦しむ羽目になったりするんだぞ?
俺は肉体強化による強引な再生及び免疫強化でどうにかしたが、能力次第では普通に死ぬだろう。そこもちゃんと説明したんだけどな…
「本当にいいんですか?死ぬかもしれないし、そもそも能力に適性があるかも分かりませんよ?」
「はい」
即答かよ!しかも覚悟完了してるし。感情視認使ってこんな眩しいもの見る日が来るとは。
どうしよ…とりあえず今日集めた水晶をいくつか吸収させてみるか?
死なないよね?




