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地底湖の戦い3

 ナナトは立ち上がってその場から離れ、岩土竜いわもぐらも再び地面に潜った。


 ナナトに怪我がないことを確認したルッカは安堵して移動しようとする。そのとき、背後からピチョンという音がして後ろを振り返った。どうやら天井の鍾乳石からしずくが地底湖に落ちたらしい。水面に広がる波紋を見て、ルッカは閃いた。


「ナナト! すぐに凍結弾を撃てますか?」


 ルッカは穴を避けて跳び回りながら叫んだ。


「できるけど?」


「岸から二メートルぐらい離れた水面を一発撃ってください!」


 そう言うと、ルッカは二丁のトンファー型ライフルの銃身を交差させて、コツ、コツと音を立てる。先ほどナナトがやった、音でのおびき寄せだ。立ちどころに近くの穴からモグラが出現して攻撃し、ルッカが身をひるがえして皮一枚の差でかわす。


 ナナトはシリンダーに凍結弾を装填しながら、壁側から反対の地底湖側まで一直線に駆けた。モグラはルッカが引き付けているので奇襲される心配はない。地底湖まで三メートルと迫ったときには、ナナトはすでにシリンダーまるまる一個、計十二発の凍結弾を装填し終えていた。


 岸から二メートルの位置に狙いを定め、言われた通り、水面を撃つ。

 キン!

 凍結弾を撃ったとき独特の高い金属音が鳴り響き、岸のすぐ傍に、水たまり状の氷が生成された。半径一メートルの氷の円だ。


「そこ! から離れてっ! じっと! してて! ください!」


 上空に舞い、音を鳴らして攻撃を躱しつつルッカが叫んだ。言われた通りに、ナナトは地底湖に沿って移動し、氷から離れる。

 コン、コン

 ルッカが音を立てたところに、モグラを地中から現れて爪を振りかざす。ルッカはそれをかわして移動し、再び音を鳴らす。この動作を繰り返しながら、段々と、ルッカは氷のできた地底湖側へとモグラを引き寄せていく。そして、いよいよ地底湖まで残り五歩となった距離で、ルッカは陸地から跳躍して氷の上に跳び乗った。


 コン、コンと、ダメ押しとばかりにルッカが氷の上でトンファーを叩く。一瞬の間、地面は静かだったのだが、やがて地震のように地面が小刻みに揺れ始め、そして。


 地底湖に最も近い穴から、モグラが噴き出す水柱と共に飛び出してきた。


 全身に水を被り、水柱の勢いで天井に届く高さまで打ち上げられたモグラは、地面に仰向け叩きつけられ、もんどりうった。すかさずナナトが近くへ駆け寄り、胴体のちょうど胸の位置に鎖でくくりつけられていた大きなトパーズ、大人の拳ほどあるやつを見つけて、電撃弾で鎖を断ち切る。トパーズはモグラの体のすぐ横に落ち、同時にじたばたとしていたモグラの動きが止まった。呼吸のために腹が上下しているところを見ると、気を失っただけのようだ。


 ルッカが氷の上から明るく声をかけた。


「ありがとう。私の銃だと装填に時間がかかったんです」


「うまくいったね」


 ナナトも笑顔を返す。これが野生のモグラだったら、こんな作戦には引っかからなかったろう。いくら地中では外の様子は見えないといっても、モグラは水の気配を感じ取って、湖まで穴を掘り進めて貫通させてしまう失態はおかさなかったはずだ。洗脳され、ただ人間を襲うように命令されたことが仇となった。本能より命令が優先されてしまったのだ。


「ま、まずいぞ」


 一連の様子を見ていたヒュワラーとアンバオの顔が蒼白になった。その表情から察するに、もう頼りになる武器はないようだ。さらにそこへ、壁側に開けられた無数の穴の一つからツアムたちが出てきた。ツアムのすぐ後ろについていたウサギ・ポピルが、吹き上げる水柱を見て指を差す。


「おい、なんだあれは。間欠泉かんけつせんか? うお。馬鹿でかいモグラも倒れてるぞ!」


 噴水のように噴き上がる水柱にモグラ。集団で固まっているウサギたちにナナトと氷の上に乗っているルッカ。そしてリヤカーのタイヤをツルハシで持ち上げようとしている男二人を見て、ツアムは現状を理解した。


「どうやらちょうど終わったところのようだな。呪いを解く解呪法を知りたいんだが、呪術師はそっちのローブの男か?」


 ツアムは松明たいまつを投げ捨てると、拳銃をヒュワラーとアンバオに向けた。ひっとアンバオが悲鳴を上げる。しかしヒュワラーはリヤカーを盾に裏側へ回ってか屈みこみ、ズボンから何かを取り出した。


「ツアムさん、気を付けて。奥の人が何かしようとしてる!」


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