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 仰向けに寝転んだ状態のナナトは、目を開けても真っ暗であることに初めかなり驚いた。懸命に目を凝らしても自分の両手さえ見ない。そのうち自分が瞬きしているのかどうかさえわからなくなってくる。

 どうやら生き埋めにはなってないらしい。立ち上がろうとしたとき、すぐ近くでガサゴソという音が聞こえた。慌ててリボルバーライフルを掴もうとするもこの暗闇ではそれさえももたついてしまう。

 ふと思い立って、ナナトは声を出してみた。


「ルッカ?」


 すると、返答があった。

「ここにいます」


 暗闇の中、この声が聞けただけでも安心感が胸を満たしてくれる。ナナトは心からホッと一息ついて喋りかけた。


「どこにいるの? 何も見えないよ」


「もう少しで終わりますからじっとしててください」


 何が終わるのかさっぱりわからなかったものの、ナナトは言われたとおり待つことにした。やがてカチッカチッという音ともに目の前で火花が散る。どうやら火打石を擦っているようだ。

 火花が何かに燃え移り、それは徐々に赤い光を強くして熱を帯びてくる。あまりの眩しさにナナトは再び目を閉じた。


松明たいまつです。火は直視しないほうがいいしょう。少し遠ざけますからゆっくり目を開けていってください」


 優しい声だった。ナナトは服の袖で一度目元周りをこすって少しずつ目を見開いていく。

 赤く、煌々とした炎。

 その明るさよりも、松明を持っている人物を見てナナトは「うわ!」と小さく悲鳴を上げた。

 松明を持っていたのは間違いなくさっきまでルッカの服装を着ていた人物。しかしその顔は、黄色の瞳に三本の横ヒゲをピンと生やした獣の顔立ちをしていた。


 ツアムたちの退路を断つように現れた石鼠は五十匹を超えていたが、その数が十分の一以下に減った頃合でようやく逃走へと転じた。ツアムとスキーネは生きて動く鼠が一匹もいなくなったと判明してからもしばらく銃を身構え、自分たちの呼吸音だけが坑道内に響くほど静けさを取り戻してから、ナナトとルッカが落ちていった穴へと近づいた。


 穴のすぐ横では、ウサギ・ポピルが悔しそうに顔をにじませている。

「すまない! 俺のせいだ! 俺のせいで…」


「いや、そうでもないらしい」


 ツアムはそう言うと、穴の淵に刺さっていた木の棒を拾い上げた。木の棒のささくれた部分に藁が挟まってある。


「見てみろ。おそらくあらかじめ穴が開いてあった場所に木の棒と藁を敷き詰め、その上に土をかぶせたんだ」


「というとつまり…」


「落とし穴だ。呪いといい、この罠といい、よほど坑道の奥には行かせたくないようだな」


 スキーネが地面の穴を覗き込んだ。深さもわからない暗闇が続いている。

「どうするのツア姐?」


「ロープを使えば穴の下まで降りられるが、銃を使えない状態になるのはできる限り避けたい。地底湖まで繋がる道は他にもあるから別ルートで下りていこう。はぐれたら入り口へ戻るように言ってあるから、うまくいけば途中で合流できるはずだ」


 ツアム、スキーネ、ポピルは一旦もと来た道を戻って分かれ道から坑道のさらなる下へと向かった。


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