工場の戦い5
ナナトは引き続き、盾全体まんべんなく弾を当てていく。
ツアムが撃つ弾はモネアの頭上だけでなく、モネアの部下たちの頭上の天井にも正確に当てて木片を下へと落とした。いくら致命傷にはならないとはいえ、当たるのを避けて部下たちがもぞもぞと動く。
その隙に、ルッカは隠れている皮の束の裏から飛び出した。身を屈め、全速力で壁側へ駆け、そのまま工場の奥へと進んでいく。モネアの横を通り越し、工作機の裏の隙間を縫ってついにディーノが捕まっているパレットの裏へとやって来た。
パレットの裏へ回った瞬間、ルッカは床に伏しているディーノと、その奥にいるモネアの部下一人を視認する。モネアの部下もルッカの気配に気付いて振り返り、持っているライフルの銃口を向けようとした。
させない!
ルッカは腰まで届く黒髪を空中になびかせ、身を低く屈めながら一気に距離を詰めて右手に持つトンファー型ライフルをモネアの部下の頭上に振り下ろす。部下はライフルでその一撃を受け止めて防ぐと、蹴りを繰り出した。ルッカはそれを紙一重で避ける。
お互いここまで距離が近づいてしまえば銃口の長いライフルはかえって邪魔になる。ルッカは得意とする近接戦闘で相手をなぎ倒そうとトンファーの連続攻撃を繰り出した。が、部下もさるもので、全てライフルで受け止めるか身を躱して避ける。
しかしルッカの最後の一撃を躱した瞬間に体勢を崩したため、ルッカはその隙を突いて躱されたトンファーの腕の振りの勢いを利用し、地面から跳んで空中で回し蹴りを見舞った。蹴りは見事に部下の胸に命中し、男は背後のパレットごと五メートルほど後方に吹き飛ばされてしまう。
「立って! 奥まで逃げてください!」
ルッカは着地と同時に大声を上げた。床に伏していたディーノは弾かれたように立ち上がり、頭を両手で守りながら工場の奥へと駆け出した。
「ぐっ、このアマ…」
回し蹴りをくらって吹き飛ばされた男がライフルを向けて放つが、ルッカから大きく外れる。ルッカも射撃で応戦したものの、あいにく男と共に吹き飛ばされたパレットに邪魔をされて体に当てられなかった。ルッカはその場から離れ、ディーノの背中を追いかける。




