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囚われのスキーネ

 スキーネを連れた二人の男は、得意満面の顔でダーチャのアジトへ戻り、一室の扉を開けた。部屋の中では一人の男が机の上で箱の金貨を数えている。その箱はモネアがダーチャに贈ったものだった。


「兄貴! 上玉が取れましたぜ」


 ライフルを担いだ男が意気揚々に告げた。後ろから歩いてきた男がソファの上にスキーネを投げ下ろす。金貨を数えていた男はキリのいい数字で区切ったところで顔を上げ、面倒くさそうにスキーネを見下ろした。


「他の奴らはどうしたんです? なんで人っ子一人いねえんですかい?」


「今はおかしらから重要な命令が出て動いている。お前もすぐに外へ向かうんだ。その娘は?」


「一人でほっつき歩いていたところを捕まえました。人を探して旧市街へ迷い込んでいたようです。ほら、こんな上等なもんをぶら下げてましたよ」


 人(さら)いの弟分は、兄貴分にスキーネのライフルを手渡した。


 兄貴分はライフルをしばし眺め、再度スキーネを見下ろす。スキーネは無理矢理カゴに囚われて興奮した猫のように男たちを睨みつけ、フーフーと猿ぐつわから息を漏らしていた。


「早速夜の便で奴隷街へ送りましょう。こいつは高値で売れますぜ!」


「間抜け。この娘をよく見てみろ。仕立てのいい服に高級な銃、なにより人探しでノコノコ旧市街へ入ってくる不用心さ。間違いなく金持ちの娘だ。身代金を取るんだよ。奴隷街へ売り飛ばすのは金を手に入れてからでいい」


「な、なるほど」


 兄貴分はライフルを肩に担ぎながらスキーネのもとへと近寄った。部下へだけでなく、スキーネにも言い放つ。


「地下牢へ閉じ込めろ。名前と家族の居場所を吐くまで一切食事を与えるな。二日もあれば心が折れる」


「わかりやした」


「念のためにどっちか一人が地下牢で見張れ。もう一人は別の指示を与えるからこの部屋へ戻ってこい」


「へい」


 二人の人(さら)いはまたもやスキーネを担ぎ、兄貴分の部屋を後にした。


 スキーネが連れてこられたのは建物の地下にある格子状をした金属牢の前だ。


 地面に下され、手と足を縛っていた縄がナイフで切られたかと思うと、牢屋の中へ突き飛ばされる。前のめりに倒れ込んだスキーネが縄をほどき、自由になった手で猿ぐつわを外して振り返ったときには、人攫いの男たちは牢の鍵を閉めたところだった。


「ここから出しなさい! あなたたち、ただじゃおかないわよ!」


「おうおう、元気のいいこった。果たしてその状態がいつまでもつかな。言っとくが喚いても無駄だぜ。声は地上に届きやしない」


 スキーネが牢の中を見回した。窓はなく、壁は石造りで、木のベッドとトイレ用と思われる桶しかない。


「嬢ちゃん、名前は? どこから来た?」


「誰が言うもんですか」


「へへ。いいんだぜべつに。時間ならたっぷりあるんだ。ここへ来たのは自業自得さ。旧市街じゃ自分の身を守れない奴は同情する価値もない。ま、気が向いたら喋ってくれや。また来るぜ」


 そういうと、腕の太い男に「お前はここにいろ」と言い残し、小柄な男は去っていった。


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