表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/143

アジトの前で

 ナナトとポピルは草むらから草食獣を狙う肉食獣のようにダーチャのアジトの入口を見張っていた。


 ディーノと別れてから建物の様子は何も変わらず、人の出入りは見られない。本当に人が住んでいるのかと疑うほどだ。ゴミ缶の悪臭に耐えかねてポピルが呻きだした。


「鼻が曲がりそうだ。ここに来てからどれぐらいが経ったと思う?」


「二十分ぐらいじゃないかな」


「だよな。気分としてはもう半日いる心地だが」


 ポピルが空を見上げた。


「雨でも降ってくれれば、多少は匂いが収まるかな」


「誰か来る」


 ナナトが気付き、ポピルが顔を下ろした。二人はライフルを手に持ち、そっと様子をうかがう。ダーチャのアジトの前に二人の男が歩いてやってきた。前を歩く小柄な男は上機嫌な表情で見覚えのあるライフルを持ち、後ろの腕が太い大柄の男は一人の小柄な女性を担いでいる。女性は手足を縛られ、口に猿ぐつわをくわえているようだ。体をよじって暴れようとするものの、男の手からは逃れられないでいる。髪の色はブロンドで一つに結われ、身なりのいいその出で立ちは…。


「スキーネ!」


 ナナトとポピルは同時に気が付いた。思わず声が漏れてしまったものの、アジトの入口まで五十メートルは離れているので男たちには気取られなかったようだ。男たちはアジトの中へと入っていく。


「どうしてスキーネが…どうしよう、ポピル!」


「どうやら拉致されたようだな」


 ポピルが歯噛みした。


「今すぐ助けに行きたいが、建物の中の様子がまるでわからない。敵がうじゃうじゃいたら助けるどころか俺たちだって捕まってしまう」


「ツアムさんたちは無事なのかな?」


 ナナトが心配した表情で言うと、ポピルはそうだと気が付いた。


「ナナト、宿屋までの道のりは覚えているか?」


「う、うん。覚えてるよ」


「なら宿に戻ってツアムの姐御あねごたちを連れてくるんだ。俺はここで見張っている。俺は道順を忘れたから」


「わかった。すぐに行ってくる」


「頼んだぞ」


 曇天の下、ナナトは路地裏から出て大急ぎで道を駆け出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ