004 確認
森の中をあてもなく歩きながら、自身の置かれた状況を頭の中で整理してみる。
異世界に召喚された。
なぜか森の中に。
もう元の世界には帰れないかもしれない。
まあそれは仕方ない。とくに未練もない。
呪いのせいで、確率で化物に見えてしまう。
この化物に見えてしまう呪いの詳細を鑑定さんに髪の毛を1本支払って質問してみた結果、見た人によって様々な化物に見えてしまうらしく、そして確率は90パーセントらしい。
無論、化物に見えてしまう確率が90パーセントだ。
厳しぃー!!
それから魔法について鑑定さんに10本払って質問してみた結果、魔法は基本的にこの世界では秘術として秘匿されたものが大半であり、そもそも魔法の数が少なく、呪文は門外不出が基本らしい。しかも一つの魔法を覚えるのに、最低でも数年の修行が必要なのだとか。
マジ厳しぃーー!!
で、MPが異常に多い理由を鑑定さんに尋ねたら、髪の毛を12000本寄越せと言われたので諦めた。
MPが多い理由の情報量が、とんでもなく高いってことだけ覚えておこう。そうしよう。
あとステータスを見ていて気づいたが、RHの数値が12減って、99,988になっていたので、多分だが髪の毛の残量を現した記号なのではと推測した。
分かりにくいので、今後は自分の中でRHは残毛ということにした。
とりあえず、現状分かっているのはこのくらいか。
まあ、これじゃ何もわかっていないとも言えるな。
――兎にも角にも、目先の目標を定めてみる。
食料をゲットする。
飲料をゲットする。
人里に向かう。
こんな所か。
まあ3つ目の目標の人里に向かうは、化物に見えてしまう呪いのせいで、どうなってしまうか分からない、危険が伴うものだ。
それでも、人に会って情報を仕入れないことには今後どう生きていくかの指針すら出すことができない。
なので出来るだけ穏便に、運よく呪いが発動しない10パーセントの人間に出会い、そして話を聞くって方針で行くことにした。
そんなに上手く事が運ぶとは思えないが、希望的観測でもしておかないと、このままでは八方ふさがりになってしまうからな。
ある程度は楽観視していこう。
そう心に決め、とりあえず食料になりそうな物を探しながら、俺は森を元気に歩いて行った。
2分後、俺の眼前に、全長3メートルはあるかという猪のような化物が大木をなぎ倒しながら出現した。
そいつがこちらに向かってブフォーブフォーと殺さんばかりの唸り声をあげている。
――ああ、死んだわコレ。
リスポーン地点はどこかなぁ。
リスポーン出来ればいいなぁー。
俺はスキル、遠い目で現実逃避、を発動した。
何が何だか分からないまま、異世界での戦闘が始まった。