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霜月3日
今日は、珍しく仕事中のジルに会った。いや、見た?
一緒にいたのはキラキラした人だった。ジルが、守っている?人だと思う。
だから、王子様だったのかな。と思います。
リドル様、誰だったんでしょうか?
霜月4日
キラキラした人、と言うだけで誰だかわかるはずはないでしょう。
ジルが仕えている人、と言うことであるなら、第一王子のコンラッド王子です。
彼は、王妃譲りの見事な金の髪に、美しい翡翠の瞳で、大変整ったお顔立ちをしています。まだ成長期ですから、ジルの肩にやっと届くくらいの身長で、貴女とそう変わらないかもしれません。もし、それらしい方を見かけたら、貴女はすぐにその場を立ち去りなさい。不躾に王子を見るなんてことは、不敬にあたりますから、間違っても目を合わせないように。そっと、目立たぬように立ち去るんですよ。
くれぐれも、王子に近寄らないように。貴女がうかつなことをすれば、ジルや私の迷惑になるということを、心してください。
でも、リドル様、これは不可抗力、と言うやつなのです。
目の前に立つキラキラしい人を前に、何とか溜息をかみ殺す。
ニコニコ笑顔で、廊下の真ん中に立ち塞がっている人は、一般的にきっと見事と言っていい眩い金の髪に、宝石のような翡翠の瞳。その目線は、ほとんど私と同じ高さ。それでもってついでに、ちょっと幼さが残るものの、綺麗な顔立ちをしている。いわゆる美少年。後、5,6年もすれば、子供向けの絵本に載るような白馬の王子様にぴったりの容姿だ。
目を合わせない、って無理です。だって、まん前にあるんだもの。目立たぬように立ち去る、って、どうすればいいの? だってもう、こんなにばっちり目が合ってるのに、今さら。
「君がジルの子猿だね」
母国語じゃないので、いまいちヒアリングは得意じゃない。
うん、だからきっと聞き間違い。
なんだろう、今の、幻聴かしら。
「子猿、どうしたの?」
やばい。思いっきりぶん殴りたい。
でもダメ。ジルに迷惑かけちゃう。仮にもこれはジルの上司。私より若そうだろうがなんだろうが、多分おそらく一国の王子さま。
我慢よ、我慢!
「耳が聞こえないのかい? 猿だから理解できない?」
ぶちんっ、と何かが切れた。
「ジ」
「ん?」
『ジルのド阿呆!!』
我慢できず、母国語で大声で叫んで逃げた。
霜月5日
王子様にはもう二度と会いたくないです。