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異世界交換日記事情  作者: りく
実月
8/26


実月5日


 君が、一応の努力をしたということだけは認めてあげましょう。

 しかし、休暇中で時間があるにもかかわらず、相変わらずの汚い字、誤字脱字の多さは目に余ります。

 あのような文章では、到底外には出せませんよ。キミの無知は、ホゴシャであるジルの恥であり、現在面倒を見ている私の恥にもなります。もう少し真剣に勉強しましょう。ここに良い手本があるのですから、美しい字を書けるよう真似てみてはいかがでしょうか。






「ふむ。まあ、これで良いでしょう」


 ぱたんとノートを閉じたリドルは、休憩中の侍女を探すべく執務室を出て行った。

 きっと今頃は、少し遅めの昼食タイムで、食堂にいるだろうと当たりをつける。

 行儀見習いの名目で侍女に上がった彼女は、時折思いもよらぬ行動を起こして周囲を慌てさせるが、さすがに伯爵家であるジルの家から送り出されただけあり、必要最低限の礼儀は身に着けていた。

 問題なのは、その礼儀を示すべき相手を判断できないという点にある。

 王宮内での役職はおろか、貴族の階級にまで疎いため、何でもかんでも年長者から礼を取ろうとするのだ。礼儀をわきまえてくれる場合は良いが、逆に、自分と同じか、それ以下の年の者に対しては、どうしても礼儀が疎かになりがちなので、なかなか目が離せない。

 何より厄介なのは、言語関係だった。日常会話が割とスムーズなものだから、ついつい忘れがちだが、外国人の彼女の読解能力は壊滅的だった。これでは、侍女としての仕事もままならない。

 そう思って始めた交換日記だったが、あまりのお粗末さに泣けてくる。

 1カ月面倒を見てきてこの程度の文章しか書けないようでは、面倒を見ている彼自身の資質が問われかねない。

 彼は、決意を新たに食堂の扉を開けようとしたが、その前に扉は開かれ、ぬっと黒い影が差した。


「ああ、リドル子爵、ちょうどよかった」

 全く表情を変えずに、ジルが小さく頭を下げる。彼は手元のノートに気付いて、微かに眉根を寄せた。

「何でしょう、ジル」

 珍しく、その背後に侍女の姿が見えない。


「少しよろしいですか」

「構いませんが……」


 ちらりと食堂を覗けば、件の侍女は、ダスティ大将軍と副将軍に囲まれていた。


「そのノートですが、あれでもあいつなりに頑張ったようなんです」

「はあ……」


 目に映る光景が信じられず、生返事になる。あの、鬼のダスティ大将軍が、にこやかに笑っているように見えるのは、きっと目の錯覚だろう。


「とにかく、何でもいいので褒めてやってください」

「は?」

「リドル子爵に褒められるために、頑張ったようなので」


 ちらりと背後を振り返り、心底困った様子でジルが言う。


「あれは、一体?」

「とにかく、これ以上変な人間に懐かせたくないので、頼みます」


 やけに真剣なジルの様子に、とりあえず頷くしかなかった。

 





追記


 4日間もよく頑張って日記を書いてきましたね。これからもこの調子で励んでください。







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