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実月4日
昨日はお祭り楽しかった。
オミヤゲを買おうとしたら、無理と言われた。明日まで保たないらしい。私はそれをとてもカナシク思った。
ジルは、もう休みはないので城に戻った。
だから、今日はジルの妹とお茶をした。後半年したら、ギョウギミナライは終わりなのかと聞かれた。何が終わりなのかよくわからなかった。
明日からまた仕事でメンドウなことだ。
「たくさん書いてきました」
お休み明けに、一番にリドル様にノートを差し出すと、彼はさも疑わしそうに私とノートを交互に見やった。
その表情のまま、ノートを受け取る。
「ジルに書かせたわけではないでしょうね」
ぱらぱらめくって、リドル様は微かに眉根を寄せる。
「間違いなく、貴女の汚い字ですね」
一生懸命書いてきた私は、じっとリドル様の言葉を待つ。
3日で良いと言われたところを、全日程書いてきたのだから、褒めてもらいたい。ついでに、ご褒美があって良いと思う。ナイショのお菓子を希望だ。
「貴女は、何で食べ物のことばかりなんですか」
呆れたように呟くリドル様。もう読み終わったのだろうか。あれだけ苦労して書いたのに。1日分書くのに、毎日3時間くらいかかっているのに。
お褒めの言葉は? ご褒美は? あるよね? あるはずだよね? 私、頑張った!
「何だってジルは、………」
そこでため息一つ。私は、ただただじっと待つ。
「まあ、良いでしょう。仕事に戻りなさい」
ショックだった。
あまりにもショックだったから、お昼休憩でジルを捕まえた。
ジルと一緒に、いかついおっさんが二人ほどいたが気にしない。上司だったかもしれないが、もちろんそんなこと気にしてはいけない。
いや、ジルごめん! でも、この時は気にする余裕がなかったの。それに、口髭のおじさんも頭の薄いおじさんも、微笑ましそうに見ていた気がするから、きっと大丈夫。
「褒められなかった!」
開口一番叫んだら、ジルはちょっとだけ驚いたようだった。
「………ご褒美が欲しかったのか?」
こくこく頷くけど、ジルが今度は困った顔に変わる。
「お嬢さん、お嬢さん」
ジルと一緒にいた、口ひげがお洒落なダンディなおじさまに声を掛けられて振り向くと、彼はにこにこ笑いながら、大きな拳を差し出してきた。
思わず両手を出す。
横で、ジルが思いっきり顔を顰めたけど見なかった。絶対に何も見ていない。
掌に、可愛らしい色合いの砂糖菓子が落ちてきた。
「ありがとう、オ、オ、お?」
おじさまっていうのはおかしいし、と言うか、そもそも「おじさま」なんて言う言い回しを知らない。
「ダスティです。お嬢さん」
「ありがとう、ダスティさん」
とっても微笑ましい光景だったはずなのに、後でジルに怒られた。
知らない人からお菓子をもらっちゃダメだって。
ジルの目の前だったんだから良いじゃん! ねえ?