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実月1日
今日はお休みです。
デモ、この日記はお休みです。
明日頑張ります。デモ、終わり。今日はお休み。
実月2日
昨日家に帰りました。ジルの家です。ジルはまだです。
1番のお兄様が、お菓子をくれました。ナイショと言うそうです。リドル様にも、前、ナイショをもらいました? お菓子が違うので、ナイショって店の名前だったんですね。覚えました。ナイショのお菓子は美味しいです。またください。
お姉さまも、お菓子をくれました。昨日はおやつがタクアン? いっぱい? で嬉しかった。
2番のお兄様は、今日お菓子をくれました。ナイショのお菓子じゃなかったけど、美味しかった。お菓子だけじゃなくて、いっぱい食べて大きくなれと言われました。私はもう大きくならないのに、お兄様はよく分からないです。太れって言ったですか?
今日の夜、遅いに、ジルが帰ります。
明日はお祭りです。
「ジル、お帰りなさい」
「ああ、ただいま」
メイドさんからジルが帰って来たと聞いて、玄関に迎えに行く。
執事さんにコートを預けていたジルが、私を見て微かに片眉を上げた。
「起きていたのか?」
「はい」
「夜着のまま部屋から出るのはよくない。体が冷える」
そう言って、ジルは私を軽々と抱き上げた。左腕に私を乗せて、子供を抱きかかえるように、腰の辺りを右手で支えられる。そのまま歩きだすジルの肩に手を置いて、何とか安定を図った。
時々、ジルは私をこうして子供扱いする。初めこそ抵抗したけど、お姫様抱っこよりはましだから諦めた。いったいジルは私をいくつだと思っているのだろう。
「仕事、忙しかった?」
「終わらせてきたから問題ない」
人を一人抱えているとはとても思えない軽い足取りで、ジルは階段を上っていく。
さすが騎士様だ。
ジルは、王宮で近衛騎士として働いているのだ。身元のしっかりした、優秀な人がなれる仕事だと、ジルのすぐ上のお兄様が言っていた。
「お前こそ、明日は起きられるのか?」
「大丈夫。起きられなかったら、ジルが起こしてくれる、ね?」
そう言うと、ジルは呆れたように小さく息を吐く。
断られなかったから、明日は寝坊しても大丈夫。ジルはちゃんと起こしてくれる。
ジルは二階に上がって、左の廊下を進む。一番手前の部屋がジルの部屋で、その向かいが、私が借りている部屋だ。
ジルは私の部屋のドアを開けると、そのまま寝室に向かって、ベッドの上に私を下した。
ぐしゃりと頭をなでられる。
「早く寝ろ」
「はい! お休みなさい」
明日は、ジルとお祭りです。