王立図書館抜粋
魔術。
それは今から2500年ほど前に現れ、2000年前に消滅した、神秘の技術。
魔術を極めし魔道士は、湖をワインに変え、岩塊を金塊に変えたという。
それのみならず、魔術は恐ろしい殺人の技ともなった。
人を殺すのにどんな手段が必要だろう?
頭を切り落とす?心臓を一突き?、そんな面倒な事をする必要はない。
魔術を持ってすれば、頚動脈を潰してやるだけでいい。
魔道士達にとってそれは容易な事であった。
彼等は大いに恐れられ、崇められた。
勿論雑多な人びとにも、簡単な魔術を使うことは出来た。
だが、特に魔導を極めた4人の魔道士は格別とされ、今でも各地に像や絵画が残されている。
世界は四人の魔術によって大いに発展を遂げ、栄華の限りを尽くした。
だが、始まりがあれば終わりもある。
四人の魔道士達も、盛者必衰の理からは逃れることができなかった。
彼等は彼等にしかわからぬ理由で殺し合いを始めた。
魔導をつかった、地形が変わるほどの殺し合いを。
始めに義眼の魔道士が、義足の魔道士を殺した。その理由は今となっては神のみぞ知る。
次いで、義手の魔道士が義眼の魔道士を殺した。
最後に全き魔道士が義手の魔道士を殺した。
そして彼は、魔術を扱うための己の秘蔵の書と共に、自らを封印した。
魔道士を失った人びとは、魔術を後世に伝えることができず、次第に魔術を扱うものは姿を消して違ういき、歴史は衰退した。
王国付き図書館師匠 ジェグライ
魔法と人びと 第1巻より抜粋