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ベンチ外高校球児、心の声

作者: 大和正谷

 小学3年生から野球を始めて、5年生でレギュラーになって、6年生でチームのキャプテンになった。


 中学校では、1年生のときは3年生が引退するまで、入学してから4ヶ月くらいは雑用。2年生からは、ぼちぼち試合に出る、準レギュラー。3年生になり、いよいよ俺らの代がやってきた。きつい冬を乗り越え、あっという間に最後の大会が始まる。しかし、自分のエラーで終わってしまった。責任を感じ、今までにないくらい涙が出た。


 高校に入学しても、野球をしようと決めた。入学して、3ヶ月後に先輩たちの最後の大会が始まった。スタンドで一生懸命応援した。負けて先輩たちが泣いて、抱き合ったりしているのを見るけれど、中学のときのような涙が出る気配は微塵もなかった。2年生になってもベンチ入りどころか、練習試合も出れなかった。もちろん、先輩たちが最後の試合で負けても、泣くことはできなかった。3年生になり、情けにも近い形で練習試合には出してもらえたが、結果が出せず、練習中もアピールできないままでいた。怪我なんかしている暇なんかないはずだったのに、父親を殴ってしまい、拳にヒビが入った。もう野球をやめたいとまで思った。自分が野球をやめることを想像したら、悔しくて涙が出た。監督の理解を得て、必死にリハビリをしたが、結局、最後までベンチに入ることはできなかった。最後の大会、相手は甲子園連続出場を目指す強豪だった。序盤は接戦だったけど、終わって見れば7回コールド負け。この結果を目の当たりにしても、涙が出ることはない。涙と泥でぐちゃぐちゃになった選手とバスまで歩いた。俺たちの思いを背負って戦った同級生に何もねぎらいのことばをかけないのは、さすがに悪いと思い一言、「今までありがとう、最高やった」と声をかけた。「こっちこそありがとう、楽しかった」この何もないような返事の一言が、俺の高校野球人生、いや、今までの野球人生全ての思い出が、走馬灯のように駆け抜けた。いつの間にか、俺も皆と一緒に泣いていた。自分がふがいないから、自分のせいで、自分が直接試合の勝敗に関わるときは泣いたが、人のプレーで涙が出たのは本当に初めてだった。


 つらいことのほうが圧倒的に多かったが、野球が好きだ。このメンバーで野球がするのが好きだ。試合に出れなかったことは悔しいけれど、それと同じくらい、それ以上にこのメンバーと野球ができたことが楽しかった。

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