表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神様の手違い  作者: 特異点
1/1

ナナコロビヤオキ

これまた趣味で書かせていただきました。

前作とは全く違うお話ですが、似た世界観を読み取っていただければ幸いです。


またネタが貯まったら続きを書かせていただきます

「ねぇ…ほんとにつよくなるの?」


1人の少年は問うた。

時速50kmのトラック、風になびく草木、空をやかましく飛び回る烏。それらが「停止」した世界で少年は目の前に現れた、なんとも知れぬ相手に問うた。


『ああ、本当だ。』


夕暮れの帰り道、少年はその言葉に唾を飲んだ。



少年は学校でいじめられていた。

下駄箱の上履きが無くなっていたり

授業中鉛筆で刺されたり

給食なんてまともに食べられた試しがない。


いじめはエスカレートする一方で

少年は悲しくも世の中の風当たりというものを

若くして知ってしまった。



学校内のいじめも下校途中とて例外では無かった。

石を投げられ、虫を投げられ、叩かれ蹴られ。

「どうしていつもこうなんだろう。」

それが、少年が一人になった時の口癖だった。

親に相談しても、ある程度のやんちゃとして聞き流され、

先生に相談しても、いじめる側の親が有権者らしく、我慢しろと言われる。


少年に芽生えた敵意は、

少年自身への嫌悪へと変格した。

いじめられる原因は自分にあって、自分が悪い。

親も先生も味方しないのも全部自分のせいなんだ。

そう思うようになり、少年の心から「楽しい」という人生の活力そのものが消失していった。


小石を蹴りながら帰る坂道。

入学当初こそ何もかもが新鮮で楽しかった帰り道も、

今となっては心身の痛みに耐える時間でしかなかった。


「死んだ方がいいのかな」

復讐しようなどと言う暴力的解決案は既に無かった。

蹴った小石が側溝に落ちた所で、自分の生きる理由などを小学生ながらにして考えてみた。


クラクションで我に返った少年は前方を確認した。

トラックが減速しながらも、止まれずに突っ込んでくる。

ブレーキの音が段々と大きく近くなってくる中

少年は思わず目を瞑った。


十秒程自分に何も起こらない事に疑問を抱き、

恐る恐る目を開けると、あと数センチの所でトラックは止まっていた。


「う、うわぁ!」


驚いて後方に飛ぶと、ケタケタケタと笑い声が聞こえて来た。

少年は周りを見渡すとトラックの上に骸骨が佇んでいた。


「…」


『トラックみてビビるのに、この姿を見て叫び声1つあげないたぁ、肝の座ったガキだぜぇ』


「…何が…あったの?」


『んん〜至極普通の質問だなぁ。』


「し…ごく…?」


『ん?ああ、わからねえのか。わからねえよなぁ。小学校…ええと、』


「二年生…」


『お、おぉ、二年生かぁ。それじゃあ言葉遣いに気をつけないとな。』


少年は、冷静だった。

また手の込んだいじめだと思っていた。

トラックの運転手はいじめる奴の知り合いで

びっくりさせた所で骸骨で小便でもちびらせるって計画なんじゃないかと考えていた。


『しつもんに答えてやろう。』


骸骨をトラックの上から一言、非現実を吐いた


『時間が止まってるんだ』


「時間が…?」


『ああ、そうだよ。信じられないと思うが時間が止まってる。それ以上でもそれ以下でもない。』


「止まってるのはトラックだよ?」


『んん〜、そうだね、なんて言うんだろうなぁ、トラックは一秒ごとに進むよね?』


「う、うん、そうなの…かな」


『二秒経ったら、また進んでるよね?』


「あ、そうか」


『そうそう、時間が止まってるからトラックも進まない。今のところはその程度の認識でいいよ』


「ていど…?にんしき?」


『それくらい分かってればいいってことよ。』


骸骨は説明を終えると、本題に移った。


『単刀ちょ……難しい事はほっといて、少年に会いに来た本当の理ゆ…ワケを言おう』


「がいこつさんがぼくに会いにきたワケ?」


『がいこつさん…か。まあいいか。

少年は、今死ぬ所だったよね?』


「う、うん。」


『その死に方、死ぬ日、死ぬ場所、死ぬ年齢

全部が、なんというか、急だったんだ。』


「9?」


『ん〜早すぎたってことかな』


「早すぎた…」


『ああ、早すぎた。人間の生きられる時間ってのは神様が決めてて、その時間までしか生きられないんだけど、逆に言うとその時間が来る前に死ぬ事は無いんだ。

なのに、少年、君は死ぬ事が出来た。』


「ぼく…しんだの?」


『いいや、死んでないよ。がいこつさんが時間を止めたからね。ぶつからずにすんだよ』


「… 」


『おいおい、せっかく助かったってのに。死んでも良かったみたいな顔するなよ。』


「だって、どうせまたいじめられるし、だったらしんだほうが…楽しいのかなぁって、」


ケタケタと骸骨は笑うと、それは違うと言った


『俺が言うのも変だけどな、生きてりゃいいことあるもんだぜ?』


「…ない」


『まぁ、そんなに答えを急ぐなよ。

なんでいじめられるのか分かるかい?』


「ぼくが…わるいから…」


『どう悪い?』


「えっ…それは…」


『弱いから か?』


「う、うん。」


『じゃあ強くなるおまじないをかけてやる』


「…つよくなる…おまじない?」


『ああ、そうだ。もういじめられなくなるような、

それくらい強くなるおまじないさ』


「…」


『好きな言葉とか…あるかな?』


「…ない」


『んん〜、ことわざ…なんて知らないかなぁ』


「うん…」


『じゃあ、[ナナコロビヤオキ]でいいかな』


「なにそれ」


『七転び八起きって言ってな。

7回転んだって8回起きればいいっていう根性論だ。

実際には1回余計に起きてるんだが、おおよそデフォルトの状態が一起きとしてカウントされてるらしい。』


骸骨は何かを急ぐように今までの、子供に話しかけるようなペースをやめ、理解の追いつかないような言葉を並べ始めた


「なにいってるかわかんないよ…」


『強くなるのは少年、お前自身だ。勝手に強くなる。俺はそのきっかけを与えるに過ぎない。』


「だから、なにをいってるのか…」


『おまじないはとっくにかけた。あとは自分でその能力を知るんだな。』


骸骨はそういうと少年の目の前から、トラックの上から消え去った。

それと同時に時は動き出す。


「え」


少年は後方まで飛ばされた。

四肢こそ吹き飛ばなかったものの、全身が後方に飛ばされた。


「やっべぇ!引いちゃったよ……小僧がうつむきながら道路に出てくるから…救急車呼ばなきゃ、どうしようどうしよう」


「あ、あの」


「え?ぅわっ…もう化けて出たのか?!ナンマイダ-ナンマイダ-」


「ばけ??いや、あの、ぼくはだいじょうぶなので、気にしないでください」


「ええ?!坊主、怪我は…」


少年の体には傷一つ、血一滴たりともついていなかった。

早すぎる死

少年に与えられた能力 ナナコロビヤオキ

骸骨の風貌をした謎の存在


果たして少年の人生は…


いかがでしたでしょうか。

アレコレ考えた挙句、結局神様絡みに落ち着いてしまいますね。


楽しんでいただけたなら冥利に尽きるというものです。


では、これにて つづく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ