異世界・一日目(4)
ギルド会館の掲示板。
「住み込み・・・住み込みはないだろうか」
淡い期待を抱きながらもそれを探す。
白い用紙に仕事の内容が書かれたもの。それがギルド会館で受けることができる「依頼書」と呼ばれるものである。
この依頼書は掲示板に貼られているため、希望の紙を持って受付の持っていくことで受注することができるが、受注した依頼書をキャンセルするとそれなりのペナルティが発生する。
それはまたいつか話すとしよう。
とにかく今出来ることは、この「ギルドカード・白」が受けられる依頼の中から出来ることを探すことだ。
ギルドカード・白というのは、カードの色であり、信頼度を示したランクの表れでもある。つまり白紙の状態だ。信頼性がまるでない人間に与えられるカードで依頼を5つクリアすると青に上がることが出来る。
青に上がることが出来れば、最低限の信頼は得られる。
「やっぱ、住み込みは無いよなぁ~。はぁ・・・」
誰かを住まわせてまで働きがいを求められてるような依頼は信頼感ゼロのここには無いか。
白の用紙には、結構肉体的な労働もある。
まずはそこからとしよう。
工事現場の清掃業務という用紙を1枚取ると受付のそれを持っていく。
「これ、アバンさんとこの・・・」
確かに依頼主はアバンと書いてあるが、それがどうしたのだろうか。気になったから聞いてみた。
「お知り合いですか?」
「知り合いというよりも、トラブルメーカーです。この方はこの街で土木の仕事をしている獣人なのですが、気性が荒く「白」の依頼の割に難易度が高いのです。これまでに受けて途中棄権した人が後を絶たなくて大変なのです」
「そうですか」
「そのせいか『新人殺し』と裏で呼ばれてますね」
出たよ。おファンタジーの定番だ。
俺には無かったと思ったら、こういう形で来るとは驚くばかりだ。
「ちなみに業務内容は?」
「主に工事現場の清掃です。清掃といっても、最初は簡単なものばかりのはずです。いきなり難しい作業に触れさせるような方ではないので」
トラブルメーカーの割には信頼されてるんだな。矛盾。
「主にアバンさんは街道などの整備を行ってます。なので、土運びや後片付けがメインとなるでしょうね。他にご質問は?」
「今すぐにでも受けられる簡単な依頼で最も高額なものを教えてほしい。内容は問わないから」
「なるほど、急を用するのですか。ふむ、ならば此方はいかがですか?この街の外れにあるところでなんですが・・・・・・」
「ふむふむ、って!えっ、これって・・・」
「これくらい出来ないで、アバンさんの依頼はクリア出来ませんよ」
おいおい、目が笑ってない。まじか。
危険度といえば、こっちのが断然・・・高いと思いますケド。
余談ですが、
主人公の向かった受付の人は『新人育成』が好きな腹黒さんです。