異世界・一日目(3)
そんなこんなで、やってきました。
ここはギルド会館というところです。道行く街の人に話し掛けて、驚きつつも話を心地よくしてくれた皆様に感謝を。
ギルド会館はこの街にある職業斡旋所ってところです。まるでファンタジー小説のようですね。簡単に説明するとギルド会館でカードを発行したら、それを身分証明書として扱える上にギルド会館で請け負った仕事の達成率によりカードの信頼度が上昇し優遇されるシステムらしい。
しかも、ファンタジーな世界の恩恵に預かれる嬉しい特典付き。あるあるな話で、自分に合った職業を授かれるというが中でも何事に特化したという訳でもなく、平均的以下の才能もあるのだという。
王道的に『剣術師』『魔術師』『弓術師』などなど、『術師シリーズ』と呼ばれる物が好まれるらしい。
さっきから不確かな情報ばかりだが、それを確かめに今から行くとしよう。日銭くらいは稼がなければな。初日から野宿とか嫌だよ。
まだ、日が真上に昇りきったくらいだから上手くいけばなんとかなるかもしれない。やれることは、しようと思う。
「ごめんください」
と小言を唱えながらギルド会館に入館した。
中にいる人達から視線を受けるがそれも一瞬で、すぐに彼らは自分等のことに掛かり始める。そこまで誰かを毎度気にしていても仕方がないだろうしな。
街で話を聞いていた通りに、受け付けに向かいギルドカード発行の手続きを始めた。名前と性別の記入を終えると受付の人に連れられて、とある部屋に辿り着いた。
「この石板に触れてもらいます」
「これに触れるだけで、職業が分かるのか!面白いな!」
「ふふっ、そういった反応をくださると開発者も喜びます」
「そうかい?」
軽い世間話を交えながらも石板に触れると文字が浮かび上がってきた。候補に上がってきたのは以下の通りだ。
『魔術師』
魔力を扱うのに長けた人材。
『旅人』
さすらうことで知を得る人材。
『自宅警備員』
家を守るという名目で働かない人材。
この三つが浮かび上がってきた。
「旅人…上にかいてある文字はエラーでしょうか。読めませんね」
リ・スタート。再出発という意味でもある。読めないのか?
「そうですね、読めませんね」
とりあえず話を合わせておくことにした。それから何事もなく話は進むのだった。
石板に浮かび上がってきた文字を見ていた受付の人は『魔術師』を進めてきたが、『旅人』というのも捨てがたかった。この言葉には何かしらの縁を感じるのだ。
それに魔術師が浮かび上がってきたということは、魔術師の才能もあるということだよな。これは間違いなく将来そのものを左右するものだが、同時に自らの可能性を知ることができるのだ。
俺は最終的に『旅人』を選択した。
これが俺だけにしか読めないなら、俺に当てられたメッセージかもしれない。あの面倒くさそうにしてた偉い人からの、そう思うことにした。
何にせよ、これでギルドカードは発行されたのである。
次は仕事を探さなければ、ならん。就職できるといいな。