異世界・三日目(3)
メシア=フランピュールさんの道場へ早速向かうこととなった。
宿賃が勿体なくなるが、当分宿には戻ることがないだろうから部屋代をキャンセルして手荷物一つでメシア=フランピュールさんの道場に向かう。
石造りの路地を歩いていくと次第に道が整っていない町の側面的な位置まで来たようだ。
そこに、一際周りの風景に似つかわしくない木造の建物があった。
しっかりと白地の石造りで土台を構え、艶のある木造の建物は新しく、憮然とそこを陣取っている。
一見してみるだけで、堂々と見えてしまうのは建物の作りゆえか、それともまだ見ぬ依頼主のメシア=フランピュールさんの性格を揶揄しているか。
道場の正門に立つと一気に緊張が押し寄せてきた。
たった一歩を踏み出すだけの筈が、正門の奥から何者かが強く意識をこちらに向けてきているようで下手に動けずにいた。
依頼主に会わなければ、依頼は始まらないのだ。
この身に降りかかる意識を押し込めてその一歩を踏み出した。
すると、胸の支えが取れたかのようである。
正門の奥からの圧力を感じなくなったのだ。
気のせいだったのだろうか。
そして、道場の横に置いてあるメシア=フランピュールさんの住まいと見られる玄関の戸を叩いた。
「こんにちはー!ギルドから依頼を受けてきましたー!」
しばらく待っていると、玄関の戸が開き目の前に依頼主が現れたのだった。
「ふん、一見は悪くないと思ったが、良く見えるのは黒髪だけで、その体つきは素人そのもの。フィーネの目も腐ったようだな」
初めて会って、開口一番にバカにされるとは思わなかった。
今回の依頼主は、美人だが実力主義でもあるようだ。