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扉繋ぎのウォルト  作者: 三原雪
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間章-7 魔術師ラギの弟子

 ラギの屋敷はどこまでも続く針葉樹の黒い森の中にある。

 屋敷の裏には過去のラギ、召使や弟子――あるいは協力者が埋葬されている墓地があった。かなり広く間を開けて墓は点在している。魔術師同士が顔を突き合わせればうるさい議論が白熱するので、距離は開けた方がいい。どうせこの森にはこの屋敷しかない。土地は有り余っている。

 その墓地に、ラギェンによって師匠は埋葬されていた。

 木切れで十字を立てただけの簡素な墓。下生えが生い茂る深い森の中、その周囲だけは黒々と盛り上がった土が存在を主張する。

「そのうちちゃんと墓石を立ててやるよ」

 ラギェンが隣で言う。

「頼むよ。俺の師匠だ」

 ウォルトは答えた。目を覚ました日の午後。ラギェンに支えてもらいながら、無理してなんとか連れてきてもらった。

 二人で黙祷を捧げる。

 冥福を祈り、謝罪を述べ、深い感謝を捧げる。

 ゆっくりと目を開いた。

 引き結んだ口を開く。

「ラギェン、俺にその名をくれ。師匠からはラギの名を貰う。

 ラギとラギェンの名を背負い、智の限りを尽くすと誓おう」

 一陣の風が吹いた。

 その風はウォルトと名乗っていた少年の黒髪を不器用に掻き回して消えていく。黒い双眸の強い光には意志があり、揺るぎない決意がある。



 己の内の不完全な魔術を数年がかりで調整した後、ウォルト――ラギは旅に出る。魔術の実践と、ラギェンとして扉の情報を集めるためだ。

 その道中。

 薄暗い雨の日、一切の記憶を無くして自分の名すら忘れた少年と出会うことになる。

 扉繋ぎという奇跡を起こす少年。

 ――覚えていたのはただ一つの名。


 アドリヴェルテ。


   ――魔術師ラギの弟子 END――


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