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扉繋ぎのウォルト  作者: 三原雪
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6章-2 埋めるまで

 ウォルトとラギが扉を抜けた先は、森に飲み込まれた村だった。

 村が森に浸食されている。

 廃墟。

 おそらく誰もいないのだろう。

 直感的にそう思わせる静謐さと寂寥感があった。

 深い深い、一面緑の世界。

 木の合間に点在する木でできた家は蔦に覆われ、最初からそうであったかのように森と同化していた。屋根や家の一部が崩れ落ちている家も目につくが、それすらも予定調和のようにこの胸が詰まる光景を成り立たせていた。

 足を踏み入れてはいけない。

 廃れた世界は侵入者を拒み反射的にそう思わせる。後ろめたさを感じつつ、ウォルトは村の中を歩きだす。

 道があることはまだわかる。そこを通った者達がかつていたのだ。朽ち果てた家にも、住んでいる者達はいた。

 ああ――そうか。だから後ろめたさを感じるのだ。

 かつてここで暮らしていた者達の残像が、そう感じさせるのだ――

「また外れのようだな」

 ラギが告げる。

 ここもアドリヴェルテの森ではない。

「――いちいちへこみはしないさ」

「ならいちいち慰めの言葉もかけてやらんぞ」

「そんなのいらない」

「可愛げのなさは相変わらずだ」

 すぐに扉を引き返してもよかったのだが、なんとなく村の中を見て回る。

 やはり誰もいない。物音一つしない。

 しかし村の端の方まで来たところで。

 ざくり、ざくりと、どこからか小さく音がしていた。

 誰かいるのだ。

 たまに音が途切れるのは手を休めているからだろうか。

 ウォルトとラギは相談するまでもなくそちらに足を進める。

 すぐにその音の元にはたどり着いた。

 村を抜けて少し森を分け入って歩いたその先。

 そこには――

 目を見開く。

 立派な一本の大樹があった。

 一体何人集めればその太くどっしりとした幹を囲めるのか。枝でさえそこいらの木の幹よりも太いだろう。いくつもあるごつごつとした瘤は皺のように年月を感じさせる。それなのに長く張り出した枝の先には、かなりの老齢だろうに青々とした葉を豊富に茂らせていた。

 その大樹の付近には他の木が場を譲ったかのように生えていない。

 代わりにその根元には。

 ――墓標の群れ。

 木切れの十字で埋め尽くされていた。

 この木の下には、それだけの死者が眠っているのだ。

 しかも土が掘り返されてまだ間もない、埋葬されたばかりの墓がそこかしこに目につく。

 ざくり、ざくりと。

 穴を掘る音が耳に大きく響いた。

 そちらに視線を向ければ、黒い大きな影がシャベルで穴を掘っている。その傍らには布で包まれた大きな〝何か〟。

 ――墓穴を掘っているのだと気づくと寒気で背筋がぞくりとした。

 廃墟の墓掘り。

 その背を向けていた墓掘りが二人に気づいたのか、手を止めてゆっくりとこちらを振り向く。

 ――埋められる!

 警鐘が頭の中で鳴り響く。けれど固まった体と思考で何もできない。

 そして。

「お化けだ!」

 図体のでかい墓守がそう叫んで腰を抜かした。


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