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第一話 俺はこの娘(小学6年生女子)と添い遂げる!

 俺は興奮していた。隣に座るまだ幼気いたいけな少女。その四肢、横顔、さらさらの髪、ちらりと覗くうなじ、そして胸が見えそうで見えない絶妙な角度。

 思わず今すぐにでも襲いかかってしまいそうなほど俺は昂ぶっている。

 しかし俺は弁明しておきたい。俺はロリコンではない。好きになった相手がたまたま小学6年生の女の子だったというだけなのだ!

 隣の少女、璃奈りなは机に向かい、俺の出した問題にしばらく考え込んでいた。そう、俺は彼女の家庭教師だ。無理やり家に押しかけた強姦魔などではない。全てが合法だ、今のところは。

 考えてもみて欲しい。親の友人に家庭教師を頼まれ、面倒ながらも時給のよさに目が眩み、いざ教え子に会ってみたらとんでもない天使だった。そんな時、恋に落ちない男がいるだろうか? 否、いないに決まっている。

 ただ顔が可愛いというだけではない。俺が怪我をしていれば絆創膏と消毒液を持ってきてくれるし、俺のくだらない話にも笑ってくれる。まさに天使。エンジェルなのだ。

 そんな璃奈の隣に座って勉強を教えるだけでも幸せだ。しかし俺は、それだけで終わるつもりはない。このままワンステップ、ツーステップと登り、璃奈と添い遂げてみせる。

 そうだ、人生は一度きり。死んだら終わりなのだから、楽しんだもの勝ちではないか。モラルなどというものに足を取られ、身動きが取れない奴らが哀れで仕方がない。俺はそんな奴らを横目にこの人生を目一杯楽しむんだ。

 璃奈が解答を書き終え、俺の前へと用紙をすっと差し出す。

「先生、これで合ってるかな」

「どれどれ……」

 俺は彼女の差し出した解答用紙を覗き込んだ。

 正直、璃奈は家庭教師なんかいらないんじゃないかというくらい頭がいい。もちろん、家庭教師をやめさせられるのは嫌なのでそんなことは言わないが、本当にいつか解雇されてしまうんじゃないかと心配になるほど彼女は優等生なのだ。

「おお、全部正解だ。流石璃奈」

 俺は言って、彼女の頭を撫でる。これが少女漫画なら璃奈は俺に撫でられてキュンキュンして仕方がないはずだが、今キュンキュンしているのは他でもない俺である。

 彼女の髪を撫でる時こそが、俺の人生で一番幸せな時間と言っても過言ではない。彼女の頭を撫でるのは全く飽きがこないので、俺はいつまででも撫で続けられる。

「先生?」

 数十秒ほど撫で続けていると、璃奈の愛くるしい声に俺の撫で撫でタイムを中断させられた。まあ、致し方ない。彼女に呼ばられては止めざるを得ない。璃奈に名前を呼ばれる時こそが、俺の人生で一番幸せ……いや、それだとさっきと被るか。とにかく、彼女は俺に幸せを届ける天使ということだ。

 俺が彼女の頭から手をどかすと、いつになく真剣な彼女の顔が見えた。

 意を決したように彼女は口を開き、言った。

「先生、何かあったの?」

 璃奈のその声に、俺はひどく動揺した。

「へ? な、なんで?」

「だってなんか、その……」

 口ごもる彼女。なんだろうか。こちらまで少し緊張してしまう。

「今日はその、いつもと頭の撫で方が違うっていうか……」

 顔を赤らめながらそう言う彼女に、俺の心臓は撃ちぬかれた。これはもうマシンガン級だ。俺のハートは跡形も無い。

 まさか頭の撫で方から俺の気分を当てるなんて。これはもう職人の技だろう。俺のハートを撃ちぬくプロ。まさに凄腕のスナイパー。

 いや、スナイパーはマシンガンを使わないな。凄腕のガンマンってことにしておこう。

「先生! にやにやしてないで教えてよ」

 焦れた彼女が急かしてくる。にやにやしていたのか。いけないいけない。いつも表面上はクールじゃなきゃな。俺は緩んだ頬を引き締め、いつものキリッとした顔に戻した。

 ここは予定より早いがあれを使うしかない。今がベストタイミングだ。

 俺は息を吸い、覚悟を決めた。

「いや何、璃奈の可愛さに少し動揺してしまってね」

 キリッとした顔のままで言い放つ俺。鏡がなくても分かる。今の俺は、イケメンだ……!

 璃奈も恥ずかしいのか俺から顔を背けている。効果はバツグンだってやつだ。

 しかし、顔をそむけたままの璃奈がつぶやいた言葉は、予想に反していた。

「先生、ちょっと気持ち悪いかも……」

「え……?」

「い、いや、なんでもないよ! 次の問題出して、先生」

 いや、なんでもないって。いま気持ち悪いって言ったよね? 先生の聞き間違えじゃありませんよね?

 俺は冷静を装いながら、問題文を書いていく。

 やばいやばい、嫌われたか? いや、まだ平気だろう。しかしこのままだとまずいのではないか。今までで気持ち悪いって言われたの何回目だっけ? 今ので四回目くらいになるんじゃね?

 俺、嫌われてるんじゃないか……?


 落ち込みながらも冷静な顔で家庭教師を終え、俺は帰路についた。

 いや、あれは彼女の照れ隠しなんじゃなかろうか。考えてもみろ。本当に気持ち悪いと思った相手に、気持ち悪いと言うだろうか。分別のある子なら、そんなことは言わないはずだ。そして璃奈は、間違いなくいい子だ。それなら、あの子の気持ち悪いは照れ隠しだと言える。

「なんだ、良かった。そうだよな、そうに違いない。はっはっは」

 一人暮らしをしている自宅のアパートに着き、中を見ると電気がついている。消し忘れたのだろうか。手慣れた動作で鍵を開けてドアを開くと、家の中から醤油ベースの煮物のような良い匂いがしてきた。

 なぜだ。俺は一人暮らしのはず。誰かが家で料理をしているなんてわけが……。

「おかえりなさい、雅志くん」

 俺の帰宅を出迎える声。しかし何度も言っているように俺は一人暮らしだ。しかも今の声、女のそれですらないぞ。

 俺は玄関から中の様子を覗いた。ピンクのエプロンをかけたメガネ男が、お玉を持ってくねくねと動いている。衝撃的な図だ。もはやR-18Gだ。

「ご飯にする? お風呂にする? それとも、あ、た、し?」

「気持ち悪いよお前!」

「照れ隠し? もーう、嫌だなぁ」

「いや本気で気持ち悪い!」

 そうか。俺はエプロン姿の友人に突っ込みながら思った。

 璃奈の「気持ち悪い」も、本気だったかもしれないな。それは悲しい。だけど、自分に嘘はつけない。気持ち悪い人に対して気持ち悪いって言っちゃったし。

「お前のせいでV字回復していた俺の気分が台無しだよ」

「俺に頼る気になったか、雅志」

 エプロン姿の彼は智也という俺の友人だ。メガネをかけた理知的なその顔立ちは女子から人気があるが、くねくねと動いている今ではただの気持ち悪いやつだ。しかもよく見たらエプロンがハート柄だ。

「そのくねくね動きをやめろ」

「これは女子力をUPさせる舞いだ」

「女子力アップさせて何に使うんだよ」

 俺はちゃぶ台の前に座った。最初はびっくりしたが、慣れてしまえばどうということはない。

「それで、今日もあれの話か?」

「営業だよ、営業。しつこくなければ営業成績は上げられないのだ」

「お前は将来大物になりそうだよ」

 俺が璃奈のことを好きであることは、誰にも秘密のはずだった。しかし、俺が恋をしていることを見ぬいた智也は俺を泥酔させ、恋の相手が誰か吐かせたのだ。ちなみに本来の意味でも吐いた。

 そしてこいつは、そのキレる頭脳を使って恋愛成就の手助けをしている。金も取っているらしい。その金稼ぎの客として、次は俺に狙いを定めてきたのだ。

 小学生から友人だったよしみで安くするとは言われたが、人に恋愛相談をするのもなんだか嫌だし、成就するかも分からないのに金を払うのも嫌だった。前払い制なのが癪に障る。

 このことについて悩んでいたせいで、璃奈の頭の撫で方がいつもと違っていたのだろう。ということは気持ち悪いって言われたのもこいつのせいじゃないか? 全くふざけた野郎だ。

「俺はお前には頼らないって。とっとと諦めろよ」

「合鍵は俺が持っているからな。お前が承諾するまで通い妻だ」

「分かった! 承諾するからそれは勘弁してくれ!」

 というかいつの間に合鍵作ったんだこいつ。いつか奪い取らないと。

 智也がにやりと笑った。

「いいだろう。作戦は既に考えてある。安心しろ、お前の恋愛は必ず成就させてやる」

 璃奈と結ばれる。それは夢にまで見た願いだ。

 彼女は俺にとって、もはやいなくてはならない存在なのだ。彼女が高校生にもなれば、恋人が出来るかもしれない。そうすれば、俺は彼女と一緒にいることはできなくなる。

 そんなことを考えるだけで胸が張り裂けそうになる。そんな人生は俺には何の価値もない。だったら、彼女を自分のものにするしかない。

 一度きりの人生で、叶えたいことも叶えられずやりたいことも出来ないまま朽ちていく、そんなのは御免だ。

 モラルも俺の将来も世間体も知ったことではない。大切なのは俺の想い、そして璃奈からの愛を獲得すること、それだけだ。

 俺はこの想いを遂げてみせる。たとえどんな手を使ってでも。

「よろしく頼むよ、智也」

「それでは前払いとなっておりますので、最初にお代の方お願いしますぅ」

ちゃんとラブコメとして面白いのか心配ですな。久しぶりにお馬鹿な感じで、ライトな感じで、ゆるゆると続けていきますので、よろしくお願いします。

更新の方は不定期となってます、いつか連載が止まっても察してあげてください。

感想、アドバイスなどお待ちしております。

twitter、HPの方もよろしくお願いします。

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