7.困惑。
「縞々パンツ恐るべし……」
「誰が縞々パンツだーーーーー!」
「ぐはぁああ!」
地面に倒れたチンピラが脳天を踏みつけられて、コンクリート地面に顔面を埋めながら気絶する。
チンピラ達から縞々パンツと呼ばれるようになってしまった蕾は、真っ赤な顔で武器である薙刀、桜一紋を振り回していた。
「お前がお前がお前がお前がお前がー! 余計な事を言うからーーー!」
「あははっ。映画とかでも名乗る人見てると、どうしても何か言いたくなるんだよね。ごめん!」
「手を合わせて頭を下げられた程度で許すと思うか! ちょこまかと逃げるな! 大人しく斬られろ!」
「お、お前ら喧嘩なら俺達の居ない所でやってくれー! うわぁああ!?」
蕾は振るう薙刀の風圧で周りのチンピラを吹き飛ばしながら透と戦っていた。
とっくに戦意消失しているチンピラにはいい迷惑である。
「クソッ、が! てめぇらいい加減にしやがれ!」
倒れていたチンピラのリーダーらしき男が、手元にあった鉄パイプを持って振りかぶった。
狙いは背中を向けて蕾を見ている透である。
「ちっ、大人しく倒れていればいいものを、その程度の攻撃……」
「ぎゃっ!」
「なっ――!?」
蕾は予想外の事態に攻撃を中断した。
透が予想に反して後頭部を鉄パイプで殴られ、小さな悲鳴を上げて前倒しになったのである。
「は、ははっ! 女だからって偉そうにしてるから、そんな目に合うんだ、ざまぁみろ! は~、スッキリしたぜ! てめぇはなんか知らねぇけど、こいつを斬りたいんだろ? それは譲るぜ、好きにしな!」
カランと鉄パイプを投げ捨てるとリーダの男は満足したのか、子分を引き連れて帰って行った。
残されたのは蕾と倒れたまま動かない透である。
「……おい。演技は止めたらどうだ?」
蕾は透の悪ふざけだと思ったようである。最初は驚いて放心していたが、直ぐに強い表情を取り戻した。
しかし、何時まで経っても透が返事をする気配はない。
段々と演技ではないと思い始めたのか、蕾の表情にも焦りが見え始める。
「お、おい? まさか本当に? ど、どうすれば……」
「だい、じょ、うぶだよ……」
「危ない!」
透の額から血が流れ出していた。
蕾は気が動転した様子で、立ち上がろうとしてよろめいた透の体を両手で支える。
「ごめん、護るって言ったのに……僕の方が支えられちゃってるね」
「そんな事はどうでもいい! 早く病院に!」
「病院はちょっと拙いかな、近くのマンションに僕が借りてる部屋がある。そこに行けば治療可能だから」
「肩を貸せばいいのだな? 任せろ!」
蕾は桜一紋をカードに戻すと、透の左腕を自分の首に回して担ぎ上げる。
透は彼女にとって仇の筈である。しかし、ぐったりとした透は、段々と口数も少なくなっている。
どこか余裕があるような、憎らしい態度も今は見られない。
傷を負った一人の弱い人間。蕾はそれをどうこうしてやろうという気にはならなかった。
「今は命は取らないでおいてやる。だが、勘違いするな! 弱ったお前を斬ったところで、この怨みが晴れる気がしないだけだ!」
やっぱり悪い子じゃない。
透は心の中で確信を得ながら、必死で肩を貸して歩く蕾を優しい目で見ていた。




