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12.飛翔。

「シェルターへの一般市民収容を完了いたしました! 元総司令補佐!」

「ご苦労様、私は総司令から今回の事件解の為にと、全権を与えられているわ」

「はっ! 何なりと御命令ください!」


 横一列に並んだ五人の女性兵の代表らしき一人が、満が見せた総司令権限発動バッチを見て、一歩前に出て敬礼をする。


「じゃあ被害状況を教えてくれるかな?」

「ははは、はひ! 幸いプーリッツ学園の訓練施設等が崩壊しただけで、住居地区は殆ど無傷です! 死傷者は居ません!」


 透に話しかけられ、女性兵は心底慌てて答えた。

 一人の女性兵が透の手によって再起不能となった場面を見て、恐怖してしまっているのである。


「ちょっとしゃしゃり出ないでよ。全権を預かっているのは私よ」

「僕は父さんからこれを預かってます」

「うぐっ……英雄石えいゆうせき


 透は懐から出して見せたのは、青いひし形の宝石がついたネックレスである。


「す、すごい。英雄石見たの始めて」

「何だその英雄石ってのは?」

「知らないの!? 国の英雄である透君のお父さんは、軍の最高司令官と同じ権限を与えられているの。その証があの英雄石なの!」

「凄そうだなそりゃ……」

「凄そうじゃなくて凄いの! その正体は五百億はすると噂のスカート鉱石! それも自然加工の完全天然物!」

「ごひゃ!? お、おお……そいつぁ、すげぇ奴を殴っちまったな。こりゃ死刑か……」


 雨美の話を聞いて、恭二は何てこったと空を仰いだ。


「雲上さん。確か情報部に所属していたよね?」

「は、はい! 所属しています!」

「いつもの通りでいいから。えっと……」

「俺の名前は周藤 恭二だ! 銃殺なり撲殺なり好きにしやがれ!」

「それはしないから……周藤さん握手してもらっていい?」

「別にかまわねぇけど……?」


 透の差し出した右手を見て、不思議そうに恭二は握手をした。

 すると、透が首に掛けていた英雄石が僅かに光り輝いた。


「え……? 英雄石が光った……?」

「やっぱり素質があるんだ」

「へ? 素質ってなんだよ?」


 目を丸くする満と意味有り気な透の様子に、恭二はますます分からないと言う顔をする。

 透はそんな恭二を見てクスリと笑うと。満と女性兵に向き直った。


「コホンッ! では! これより作戦名。『鬼と仲良くなろう』を開始する!」


 嬉しそうに言う透を置いて、周りは全員キョトンとしていた。

 透はジープに乗り込むと、五人の女性兵を含む全員を、おいでおいでと手招きする。

 うながされるまま、全員狭いジープにぎゅうぎゅうになって移動すること、数分。

 透達はプーリッツ学園の地下へとやって来た。そこは巨大な地下ドームである。

 そこにあった物を見て、透以外の全員が顎を上に向けて、口をぽかんと開けていた。


「な、何だこれ!? 巨大なカブトガニか!? で、でけぇ! あ!? これってまさか!」

「空中移動母艦。鋼甲虫こうかっちゅうともえ。実物見たの初めて! きゃー! 感激~!」

「こんな物を所持してるとか……総司令は知ってるのかしら。はぁ……」

「元総司令補佐、自分達は夢を見ているのでしょうか……歴史書で見たものが目の前にあります」


 巨大な戦艦を見て子供のように目を輝かせる恭二と雨美。

 満は疲れたような諦めたような顔で溜息をついた。

 女性兵五人は一人を除いて、声もない様子である。


「ん……どこかな? おーい! リネー!」

「あらー? その声は透ねー! 飛び降りるから受け止めてー!」

「リネってリーネ? あーそうか、ここ学園の地下。最悪だわ……」


 急に鋼甲虫・巴の上から、名前を呼ばれた影が声を上げた。

 明らかに嫌な顔をする満を余所に、影は空中へ飛び出すと、透に向かって落下してきた。

 金髪巻き毛と青い瞳。体は子供のように小さいが、その顔は大人びた雰囲気を漂わせている。

 手には広げた白い日傘を持ち、体はふわふわと揺れ、フランス人形のような白いスカートが僅かに膨らむ。

 リーネはそのまま、ゆっくりと透の両手に納まった。


「久しぶりね透。入学式の挨拶で顔だけ見たわ。酷いじゃない、フィアンセの私に顔も見せないなんて」

「僕は何時からフィアンセになったのかな。巴のメンテナンスありがとうリネ」

「久しぶりねリーネ。相変わらずのチビさんだこと」

「あら。誰かと思ったら貧乳の満さんじゃないの、今は軍を止めて使用人してるらしいわね」


 胸を張るリーネの巨大な二つの山は大きく揺れた。明らかにD以上の戦闘値である。


「Bあるわよ……。それに愛芽家次期当主の使用人よ。そこは馬鹿にしないで。その年で校長だなんて、チビの癖にオバサン臭いわね」

「ほーほほほっ! 私はまだ15ですもの、本物のオバサンと違ってまだまだこれからよ~!」

「くっ……私だってまだ25よ! チビの癖に! ロリの癖に!」

「元総司令補佐! 落ち着いてください!」


 女性兵が五人掛かりでリーネに飛び掛ろうとした満を止める。

 彼女達二人は同じプーリッツ学園の卒業生であり、同級生である。

 当時、飛び級の天才幼女リーネと、同じく飛び級の天才少女満は、ライバル関係にあった。

 筆記テストでは互いに満点を取り、実技での総合評価も互いにAAAランク。

 二人は互いを意識するあまり、犬猿の仲になってしまったのである。


「なんだ? ガキの癖に大人びた奴だな」

「し、失礼な事言わないで! あの人はリーネ・シャルアート! 四大名家シャルアート家のご息女様でプーリッツ学園校長なのよ!」

「ハァアアアアアアアア!? あのガキが校長だぁああああああああ!?」

「あら。うふふっ。あのふざけた男は蜂の巣にしても構わないかしら?」

「ぷっ……ガキ、本当だから言い返せないのね。これは最高だわ」


 あどけない表情の中に、かろうじて見えるお姉さんスマイルで、リーネはどこからか小型拳銃を取り出した。

 満は恭二が叫んだ言葉をメモしている。


「蜂の巣は駄目だよ。あの人、適合者だから」

「あら。へぇ~そうなの、それはそれは」

「うお……ここ寒くねぇか?」


 嬉しそうに、にやりと笑うリーネの視線を感じて、恭二は言い表せない寒気を感じたようである。


「それでどう? 飛べる?」

「あら。私を誰だと思っているのかしら?」


 透の言葉を聞くと、リーネは再び大きな胸を揺らして、自信に満ちたお姉さんスマイルを見せた。


 ………………。

 ……………。

 …………。

 ……。


「メインオペレータ。鋼甲虫・巴のエネルギー充電状況を報告!」

「はい! 高遠心力電磁エネルギー充電率90%、上昇中です!」


 インカムを装着した雨美が、リーネの言葉に反応して、オペレーションモニターを見て報告する。

 情報部に所属している彼女は、その役を任されたのである。


「サブオペレータA、B、C、D、E。電光砲出力の報告せよ!」

「船主電光砲、エネルギー充電率70%です!」

「左舷電光砲、エネルギー充電率63%です!」

「右舷電光砲、エネルギー充電率72%です!」

「船尾電光砲、エネルギー充電率80%です!」

「船底電光砲、エネルギー充電率90%です!」


 雨美に背を向けて、取り囲むように座るのは五人の女性兵である。

 彼女達はメインオペレーターの補佐、及び電光砲の操作を担当している。


「高遠心力電磁エネルギー100%! 反重力システムオールクリア! 飛べます艦長!」


 雨美が大きな声を上げる。

 リーネは丸いステージの上で、右手を前へと振り突き出しながら、命令を下した。


「巨大戦艦鋼甲虫・巴! 発進準備!」


 ドームが割れ、連動するようにプーリッツ学園の地面が二つに分かれる。

 二つに割れた巨大な闇の底から、巨大な棒状の柱が姿を現す。

 棒の先端についた巨大な丸い飴のような物を、無数の足で掴んで丸まっているのは、巨大戦艦鋼甲虫・巴である。

 鋼甲虫・巴は足の関節や甲羅の隙間、尻尾を蒼白く発光させ、丸い発進台からふわりと宙へ浮き上がった。

 丸まっていたその体は水平となり、足は全て折り畳まれて壁の中に納まり、細長い尻尾は弓なりに、空に向かって反り返る。


「巨大戦艦鋼甲虫・巴! 発進!」

「はい!  空鞭尾くうべんお、開放! 鋼甲虫・巴! 発進します!」 


 雨美が透明の操作盤にある赤いボタン押すと、鋼甲虫・巴の弓なりになっていた尾が、馬の尻を叩く鞭のように真下へしなる。

 尾は空気を弾き、その機体を一気に空高く上昇させた。

 同時に、全方位モニターとなった、艦長室の透明の床に映る街の光が、一気に小さくる。

 それを目視して、雨美は驚きの声を上げる。


「と、飛んだ……飛びました透君! あ、ごめんなさい。副艦長飛びました!」

「ふふっ。そうだね。さあ……あの赤い柱目指して全速前進!」


 発進の様子をリーネの後ろで控えてみていた透は前に出て、右手を振りかざした。


 心を失った悲しい鬼の元へ、いざゆかん。

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