卒業アルバム
RRRR・・・
「もしもし?」
「おう、久しぶり。元気してたか?」
「おーおー、本当久しぶりだな。元気だよ、そっちはどうよ?」
「俺も元気だけどさ。ちょっと気になることがあったから電話してみた。」
「ん?どうした?」
社会に出て3年、高校を卒業してから既に7年が経とうとしていた秋のことだった。突然、高校時代の友人から電話があった。いったい何だというのか。
「お前さ、卒業アルバムって今持ってるか?」
「高校のやつなら、あー、あったあった。それがどうしたよ。」
「落ち着いて開いてみてくれ。いろんな写真が載ってる所なんだけど。お前って結構たくさん写ってたよな?」
「まぁ、そうだな。アルバムでは意外と目立ってたけどさ、ははっ。開いたぞ?球技大会のとか、修学旅行とかあるページ。」
特に何かおかしいところはないと思う。それに高校卒業の時だって見てるし、こいつは今更何を言おうとしてるんだ。
「・・・お前の写ってる写真、よく見てみろ。球技大会のやつは右上らへん。駅のホームのやつはお前の頭の左側。どうだ?」
「ん、んー。あぁ、何かどっちも同じやつが写ってるな。微妙にカメラ目線っぽいけど、何か暗そうだ。誰だこれ。」
「やっぱ写ってるか。何回見ても気づかなかったけど、こないだふと見た時に気になってな。それから調べてみたんだけど・・・こいつさ、いないんだよ。」
「は?」
「だから、いないんだ。俺たちの学年に。」
「どういうことだよ!」
「いや、ちょっと気になってクラス写真とか、他の写真もじっくり見たんだけど、お前の写ってる写真にはいくつか写ってるのに、他はまったくいないんだ。お前、何か心当たりとかねえか?」
こいつは何を言っている?いないって、そんなはずないだろ。こうやって写ってるんだから。
「知らねえよ!本当にいないのか?もっかい確かめてみろよ。俺も今から見る。」
「あぁ、わかった。また連絡くれ。」
電話を切ってすぐに調べ始めた。けれど、どこを探しても、他の写真を見ても、そいつは見つからなかった。気味が悪くなったが、何もすることがなく待たせている友人に電話をかけた。
「今見たんだけど、やっぱいねえや。後輩とかそういうのじゃないんかな?」
「俺も最初はそう思ったんだけど、それってほとんど学年行事だろ?あり得ないんじゃねえか。」
「まじ気味わりいよ、何だこれ。」
「ちょっとそっち系に詳しい奴がいるから聞いてみようと思ってるけど、迷惑じゃないか?高校出てから大分たってるし大丈夫だと思うけど、一応気をつけてくれな。」
「おう、悪い。頼むよ。別に何か変なことがあったとかそういうのはないと思うから、まぁ大丈夫だ。ありがとな。」
「おう、じゃあまた何かわかったら連絡するよ。」
ふと卒業後のことを色々思い出してみた。確かに不幸と思うこともいくつかあった。その時には気にならなかったことが、今こうして考えると不気味な関連性さえあるように思えてくる。
試しにいくつか写真を引っ張り出して見た。さすがにこれには写っていないだろう。
っ!! いた・・・
大学時代の集合写真、こんなやつ、絶対にいなかったはずなのに。
関連企業のグループ入社式、確かに人数は多かったけど、何でこんなとこにも写ってるんだ。ありえない。
たまらなく恐ろしくなった。携帯電話を握ってもう一度友人の番号をコールする。・・・・つながらない。くそ、なんでだよ。気分が悪くなる、嫌な汗で体は濡れていた。シャワーでも浴びて落ち着かせようか。
少し間をおいてだいぶ気持ちも楽になった。友人にはまだつながらない、きっと知り合いに話を聞いているんだろう。またあとで聞いてみるか。
ふと暑さを感じたので、窓を開けようとした。かすかな違和感を覚えながら、カーテンをさっと開ける。
窓の外では、俺の後ろで女が笑っていた。