春の海
これは詩(?)です。
靴を履き
家を出て
最初に向かうのは
いつも決まった場所
近くの公園
海浜公園
そして 海
もうすぐ陽も落ちるのに
この時間は居心地が良い
足元を見ると
いつも巻貝が落ちている
水に濡れて輝く
それはまるで水晶のように
純粋で 汚れなく
僕には眩しいくらい
そしていつも思い出す
子供の時のこと
まだ幼かった
君のこと
一緒に手を繋いで
遊んだこと
二人の小指が
交わりあったこと
ほら、聞こえるよ
耳を澄まして
静かに歌う 夏の声
賑やかな 子供の声
魚を取り巻く 水鳥たちの声
昔、約束したよね?
またここに来るって
一緒に貝殻を拾うって
またここで会うって
指を絡めあったよね
小指と小指
約束の証
今も忘れていない
ねぇ、君は今どこなの?
ねぇ、もう会えないの?
風が吹いているよ
何もかもを吹き流すように
君と僕を引き離すように
遥か彼方、水平線から
今の想いを乗せて
昔の想いを このまま吹き飛ばしてしまうように
それならそれでいい
悲しみも 苦しみも
絶望も 孤独も
全部吹き飛ばしてくれればいいのにね
想いが君に届いてくれればいいのにね
あっ
風が止んだ
風の無い浜はこんなに寂しくて 悲しくて
哀れで 孤独なんだね
もう誰も 歌っていない
もう誰の声も無い
静かな夕凪の時間
寒くなってきたね
暗くなってきたね
帰ろう
一緒に帰ろう
あの頃に
君と僕だけの
遠くて儚い夢に
一途な記憶に
蒼く澄み切った
あの春の海に……
わけが分からないという方もいらっしゃるでしょうが、これを読んで「なんだか感傷的だなぁ」とまでは行かなくても『少し心に残る』位の印象があれば幸いです。これを読んでいただきありがとうございました。