ひみつのおかたさま~御方さまとジルファのある日の会話~
「ねえジルファ。この間とっても無礼な質問されたのよ」
「ほほう、あなたに、ですか。それは命知らずも居たものですね・・・おっと危ない、殴らないで下さいよ。で、どんな質問をされたんですか?」
「憎たらしい、顔ぐらい殴らせなさい。減るものじゃなし」
「減らなくても、顔に痣なんかこしらえて帰れば、リルフィが心配するじゃないですか。彼女を悲しませたくないんです」
「ああら、リルフィは全然、爪の先程も気にしないと思うけど・・・ま、貴方がそう思うのは自由よね」
「彼女は照れ屋なので、表に出せないだけですよ、内心は心配してくれるんです」
「ふ~~~ん・・・ところで、コレよ。“何処かの誰かさんが置いていった質問状”」
「ほほう・・・何何?これはまた、本当に命知らずな質問ばかりだ。いっそ天晴れというか」
「言わなくてよろしくてよ。と言うか、殆ど貴方にも関係するものじゃない」
「そうですね。まず年齢、これは世間一般的な言葉で言うなら、私たちは“同い年”ですしねえ。ところで御方様、正確な年って、覚えてらっしゃいます?・・・いたたたたっ、離れ業とは酷いですね」
「何よ、その程度の石くれくらい、避けなさいよ。貴方は自分の年も覚えてないわけ?」
「はあまあ~何せ、年なんか数えるの、疾うに止めてしまってますしねえ~というか、私たちが“私たち二人”に分かれる前から、止めてるんですが・・・?」
「そういえば、そうだったかしら?」
「そうですよ。最も、リルフィと出逢ってからの年月は数えていますとも!」
「・・・ああそう」
「何ですかその嫌そうな顔は。当然じゃないですかちなみに今は彼女と出会って・・・」
「はいそれは置いといて、次の質問よ」
「置かないで下さい、話くらい聞いてくれてもいいじゃないですか・・・ええと、ジルファさんとの関係ですねえ・・・関係ねえ」
「チェスミーが傍に居たものだから、答えられなかったわよ」
「まさか、元々は同一人物です、なんてね」
「同一人物だって信じられないくらい、顔も体も変わってしまったけれどね」
「それは仕方ないでしょう。一つであったものを二つに分け、心も・・・言ってみれば不均衡な分け方をしたんですからね。バランスを保つのが役割の“君”が、なんとバランスを崩す事をしでかしたものか・・・これも恋のなせる業か・・・」
「はいそこ~ストップ。惚気るの止めないと今度はコレ直撃させるわよ」
「石のテーブルは勘弁して欲しいものですね。確かに同一人物だとは思えないくらい違ってきてますが、それでも、いわゆる“兄弟”くらいには似てるでしょう」
「ええそうね、不本意ながら・・・あら?そういえば私は何故この形を取ったのかしらね」
「私が男性形を取ったからでしょう?」
「そうね・・・もとは私は、中性形を取っていたんだわね」
「リルフィを拾った頃は、まだそうでしたね。リルフィが女の子だったから・・・あ」
「何?その今更気がついたってカオは」
「・・・リルフィが女の子になったのって、確かスティールの姿をそっくり写したからでしたね・・・」
「元々の姿って・・・というか、性別って、何だったのかしら」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
「・・・まあ、リルフィが可愛いことには変わりないし、細かいことはもういいのよ」
「そうですね、深く追求するのは止めておきましょう。ところで、このお茶美味しいですね」
「そうでしょう。この間市場で買ったのよ」
「また出歩いているんですか。傍仕えの者が心配するから程々にした方がいいのでは?」
「いいじゃない。この目で自分が治めている界を見、住民の声を聞くことも、大切な勤めよ」
「・・・公私混同」
「今何か言ったかしら?」
「いいえ、お茶請けのお菓子があまりにも美味しくて、感動の声をあげただけですとも!」