告白
「もういいよ。罰ゲームだったんでしょ?」
海辺の防波堤沿いを歩いていた少女が、ふと足を止めてそう言った。静かな声は潮騒にかき消されるでもなく、少年の耳にしっかりと届いた。振り返って息を飲んだ少年は、逆光で見えない少女の表情を想像して、唇を引き結んだ。
「知ってたよ。私、美人じゃないし、性格もいいわけじゃないから」
少年は言葉に詰まった。彼の脳裏をよぎるのは、少女と過ごした日々だった。夏の暑い盛りには下校中に寄り道をして、駄菓子屋で買った二本一組のアイスを分け合って公園で食べた。一緒に買い物に出かけることもあったし、ファーストフード店で試験範囲のノートを借りたこともあった。今のように、海沿いをよく歩いた。
「……でも、楽しそうにしてた」
逆光のなかで、少女が薄く笑う気配があった。
「思い出に残るかなって」
少女は海をながめる。風に乗って飛んできたユリカモメが、空中でぐらぐらと揺れている。
「私、明日引っ越すんだ」
思いもよらなかった少女の言葉に、少年はますます何も言えなくなった。
「じゃあね」
少女はあっけらかんとそう言うと、くるりと踵を返した。残された少年はこわごわと息を吐き出して、拳を握りしめる。
町へとつづく長い階段を降りたところで、少女が不意に振り返った。
「私、あなたたちみたいな人、大っ嫌い!」
笑いまじりにそう言って帰路に着く少女の言葉をリフレインするように、潮騒がひときわ高く鳴った。
すっかり小さくなった少女のうしろ姿を見送って、少年はようやく拳から力を抜いた。
「……だから嫌だったんだよ」
<おわり>




