役に立つのか?
「ヤベェ。また、あいつらが来るじゃねーーか。すぐに、逃げなきゃ」
「大丈夫じゃ、大丈夫」
「何で?」
「ここの音は外には聞こえん」
「えっ、そうなの」
「実はな」
ロージュは、俺に丸いボールを手渡してくる。
・・・・爆弾?
似てるけど。
何かが違う。
「何だ、これ」
「憧れだったんじゃよ」
「いや、そんなキラキラした目で見られても」
「わしはな。回復魔法なんぞいらんから、爆弾スキルが欲しかったんじゃよ」
爺さんは、嬉しそうに笑いながら新しいボールを取り出して撫でている。
「だからな。クエストに来ていた爆弾スキルをもった連中に聞いたんじゃ。そしたらな!何と、違う世界では材料を混ぜ合わせれば、この爆弾が作れるらしくてな」
「それで」
「それで作ったんじゃよ、爆弾を」
「で、ここで練習してたってわけ?」
「違う、違う。わしのは、スキルほど強力なもんじゃないから。ここに放り投げて遊ぶ程度なんじゃよ」
「それで、こんな壁を作ったってわけか」
「壁じゃない。これは、温泉だ」
「温泉?」
ロージュが作っているのは、俺の世界にあるウォータースライダーみたいなものだ。
入り口は、石の壁で囲われていて真ん中に的がついている。
そこに投げると爆弾が爆発し、なぜか爆発音がパパーンとラッパの音にかわる仕掛け。
そして、スライダーを通って流れる先には・・・・。
「今日のお湯、マジで最高だったな」
「久々だったよなーー」
「爺さん、しばらく直せねーーって言ってなかったっけ?」
「言ってた、言ってた」
・・・・お風呂。
「わしが思いついたんじゃよ。風呂の火は、ずっと見とかなきゃならんくてな。体が辛かったんじゃよ。そしたら、観光客が温泉ってのを教えてくれてな」
ロージュは嬉しそうに温泉の話をする。
ロージュはクエストに来たものの
体の痛みや疲れを癒すために大型の露天風呂のようなものを作ったのだ。
しかし、その湯を沸かすのが大変で大変で仕方なかったらしい。
それを観光客に話すと観光客からマグマで沸かす温泉があるという話を聞いたのだと言う。
その話にヒントをもらったロージュは、街で一番の大工にこの装置を作ってもらったらしい。
爆発で温められたお湯は、スライダーを流れ落ちる。
お湯が流れ落ちる間に爆弾の破片は綺麗になくなり、滝のようにお湯が降り注ぐ仕組みだ。
この装置ができてからは、お風呂に浸かっているもの達がずっと温かいと満足してくれているという。
「クエストに来る人が減ったわしとしては、この爆弾温泉での収入が生活費なんじゃよ。だけど、ほら。爆弾の材料が手に入らなくなってしもうてな。クエストに来る観光客に頼んで持って来てもらってはいたんじゃが。それもいつ手に入るかわからんくなってしもうてな。最近は、温いや寒いやとゆうて。ほとんど風呂に入らずに帰ってしもうてな。困り果てていた時にお主に出会ったのじゃ。これは、神がわしに与えてくれたチャンスじゃ。頼む、このとおりじゃ。わしと一緒に湯を沸かしてくれーー」
「湯を沸かすって・・・・」
おいおい・・冗談やめろよジジイって突っ込みたくなったけれど。
ロージュは、めちゃくちゃ真剣に頭を下げている。
まじで、言ってんの?
でも、戦いが減ってるなかで、クエストだけの収入で食べていくのは厳しいんだろうな。
俺にもわかるよ。
給料増えないからさ。
それに、ここも俺の住むとこと一緒で。
物価高ってやつなんだろうな。
だから、たぶん爆弾の材料もなかなか手に入らないんだろうな。
それに、最初に出会った人も寒いって言ってたし。
「わかった。もうええわ。このわしに毎日毎日薪をくべて火の番をせいということじゃろ。爆弾なら放り投げたらしまいなのに。わしは竹筒で息を吹いて薪をくべて火を消さないようにしなきゃならん。しかも、ここ最近は四季を楽しむからって薪の値段があがってきて。あんなにたくさんある木を切るのは10日に1本までとかって法律まで作ろうとしておるらしいからな。もう、足も腰もガタガタなのにじゃ。老体にむちうって。安月給でこき使われて。高くなる薪代に給料が消えて寒い日も暑い日も。毎日、毎日わしは」
「あーー、もう、わかったよ、わかった」
さっきまで、足をガタガタ震わせて悲しそうに俺を見ていたロージュはその言葉を聞いて嬉しそうにスキップをし始めた。
何だよ、演技だったのかよ!
まあ、いいや。
どうせ、役に立たなくなったスキルだし。
それに、間違って持ち物を取り出して、爆発させちまったら死刑になる・・・・。
それを考えたら風呂を沸かすのが一番安全だ。
「お主の名前を聞いてなかったな!名は、何だ」
「俺?俺は、望月礼於」
「礼於か、いい名じゃな。これからよろしくな、礼於」
ロージュは、嬉しそうに握手をしてきた。
腕をぶんぶんふられてちぎれそうだ。
あっと、そうだった。
ひとつ忘れていた。
爆弾スキルが何故使えなくなった理由だ。
爆弾スキルを廃止するという法律を王様が決めたのは、このままじゃ国が滅びると判断したかららしい。
魔物や魔獣との戦いにおいて、剣や弓などで戦った場合は、仮に負傷したとしても生き延びる確率がかなり高かったらしい。
だけど、爆弾スキル所持者が産まれてからは、生き延びる魔物や魔獣はほとんどいなくなってしまったという。
魔物や魔獣が死ぬのはいいことなんだけど。
魔物や魔獣の数があまりにも減りすぎるのは困るらしい。
まるで、俺達の住む世界と同じだ。
爆弾スキルの勇者が産まれたせいで、魔物や魔獣達の数はいっきに減っていったという。
生存率が上がったおかげで、魔物や魔獣を退治するものの数だけが異様に増加したらしい。
王様は、ずっと不安に思っていたらしい。
これだけ人族が増え続けると、いつかは人族同士で争い始めるのではないか?って。
そう考えていた王様は、地球への旅行に向かったのだ。
そして、地球という星を見て、人を見て、動物や植物を見て。
バーム王国も変わらなくちゃならないと確信したのだという。
そのために、まず排除すべきは爆弾スキルだと考えたのだ。
そして、爆弾スキルを廃止する法律が作られた。
元々爆弾スキル保持していた者達は、別の王国に移り変わったり、スキル変更を余儀なくされた。
そしてかつて勇者と呼ばれていた一族達は、今は宝飾品を売っているらしい。
弓を使って戦っていたものは、大工へ転身した。
魔法使い達は、傷や病気を治してあげる医者や看護師のような存在になった。
しかし、変われなかったものもいる。
そのもの達は、この洞窟で今も戦っている。
この洞窟内のみ、唯一戦うことが許されているのだ。
しかし、爆弾スキルだけは威力が強すぎるうえに死人が出ることから使えない。
もしも、使ったとしたらそのものは死刑になる。
だから、爆弾スキル保持者はこの王国にはひとりもいない。
まあ・・・・俺を除いてって話なんだけど。
かつて爆弾スキルを所持していたのは、選ばれし勇者のみだったらしい。
全ての勇者が爆弾スキルを持っているわけではなかったらしい。
爆弾スキルを発動させることが出来れば、負傷者0で戦いに勝つことができる。
だから、そのスキルを持つものは英雄になれた。
ずっと・・・・。
それは、一生続くと信じられていた。
しかし、王様の考えが変わり。
英雄になれるはずだった爆弾スキルは、何の役にも立たないものに変わったのだ。
それだけじゃない。
爆弾スキルを使ったものは、死刑が確定している。
昔は、追放だったらしいけれど。
ロージュが言っていたみたいに別の国では爆弾が作れるから受け入れ人数が少ないらしい。
ってか、よく考えたらそんな危ないスキルをいまだに習得できている事が問題なんだよな。
だって、できないようにしてくれていたら俺は爆弾スキルを持たなくてすんだわけだよな。
そうだよ。
それが問題だよ!
だから、悪いのは王様だな。
そうだ。
悪いのは王様だ。
「よからぬ考えをしているな、礼於」
「じ、じ。いや、ロージュさん」
「まあ、いい。爆弾スキルを持ってくれたことをわしは感謝しとる」
「そうですか」
「ああ、そうじゃ。ほれ、見てみろ。礼於のお陰で観光客がまた増えたじゃろ。お風呂がいいって有名でな。時々、王様も入りにきとるらしいぞ」
「えっ?本当ですか!王様も」
「ほれ、今日はボーナスの金貨三枚じゃ。上手いもんでも食え」
「ありがとうございます」
俺はここで爺さんに日雇いで雇ってもらっている。
日雇いなのは、爆弾スキルがバレた時のためだ。
まあ、爺さんはバレたら王様に話してくれるらしいけど。
爆弾スキルは、危ないスキルじゃないぞって。
使い方によっては、いいスキルだって・・・。
俺もそう思うよ。
だって。
「あーー、今日も良かったな」
「いいお湯だったよなーー」
「来月には、もうちょと湯船を広げるらしいぞ」
「最近、風呂目当ての観光客も増えたらしいしな」
こうやって誰かを笑顔にできる、魔法みたいなスキルなんだからさ。




