誕生日
「スキルを変更しますか?」
「はい」
「それでは確認いたします。確認したところ、あなたのスキルは変更できません」
「えっ?嘘でしょ」
「嘘ではありません」
・・・・・・終わった。
俺は、この世界でも負け犬なのか。
ーーさかのぼること、誕生日の5分前。
中学の頃、俺をいじめていた和田島が結婚し父親になっていたのを知ったのは、30歳の誕生日を目前に控えた23時55分の出来事だ。
「因果応報……そんなもんねーーな。あーー、爆破させてーー。つうか、脱税とかしてねーーかな」
和田島は、今じゃ年商20億円の社長のうえ、フォロワー数78万人のインフルエンサーだ。
俺と違って、和田島春樹の世界は、キラキラと輝いているのを知った。
俺は、カップラーメンをすすりながら誕生日を迎えようってゆうのに。
世界は、俺に何もしてくれない。
産まれた時から決まっている。
キラキラした世界の住人は、いつだってキラキラしていて。
俺、みたいなのは……。
「ケーキぐらい食いたかったな。30歳になるんだし」
時刻は、0時1分。
真夜中でもコンビニに行ける日本という国は、平和なものだ。
ズズッと麺をすすりスープを半分飲み干して、俺は立ち上がる。
空きっ腹で飲んだビールのせいか、立ち上がるとフラフラした。
「じゃあ、行きますか」
独り言を呟きながら家を出る。
鍵を閉めて歩き出すと何故か頭の中に【ギルドの魔法使い】の曲が流れてくる。
【ギルドの魔法使い】とは、主人公の女の子がドジで間抜けで、それが何だか可愛くて最後まで見てしまったアニメのこと。
でも、あれって主人公が女の子だからいいわけだよな。
おっさんとかなら無理だっただろうし。
かと言って、お祖母ちゃんとかも何か違うし。
キキッーー
車が急ブレーキを踏む音がする。
向かい側のコンビニに行こうと信号が青になったタイミングで走り出す俺の耳に響く。
全てが、スローモーションに進んでいく。
死ぬ時って、こんなにゆっくりなのかな。
ずっと、こんなにゆっくりなのかな。
こうやって、走馬灯とか見るのかな。
ケーキ食べたかったなーーとか考えてさ。
いや。
無理。
直視できないよ。
自分が死ぬかもなんて、そんな現実みたくない。
ギュッと目をつぶって、走る。
絶対、間に合う。
渡りきる。
いける、いける。




