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ラストダンジョンに登場する雑魚モンスター『ヘルライダー』になっていた。魔王のお手伝いをすることになった  作者: 愛原ひかな


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ボロボロの勇者パーティーが……


 俺が深手を負わせたかもしれないが、現在まともに対話できそうなのが、その赤髪ヒーラーしかいないと思っている。


 あと……なんだろ……戦闘で傷つけたことに対して詫びたい気持ちもあったはずだが……。

 俺はヘルライダーである自覚を持ちだしてから、人間の良心的な感性を何処かに消していたかもしれない。


「到達ですね。およよ?」


 ワープすると、緑の空間が広がっていた。


「聖なる白き鳥よ、我らの傷を治したまえ」


 赤髪ヒーラーが懸命に、勇者パーティー全員の回復を図っていた。


「ヨミル。勇者パーティーが回復されてますが、どうするんだ?」

「私は聞きたいことを聞き出す。それだけだ」


 ヨミルは勇者パーティーに近づいて行こうとしたが、すぐに足を止めた。


「ふざけるな! 師匠に十年間みっちり鍛えてもらった勇者の左腕が、治らないだと!」

「俺様の目も一緒だ。ヒーラーっていうのは、傷を治して当然なのでは! これでは三流以下だろ!」

「うっ……ボクの努力不足で……。ごめんなさい……」


 赤髪ヒーラーが、大泣きしていた。

 金髪の少年と拳使いの男が怒り狂って、今にも暴れそうだという状況にヨミルは黙り込む。


「二人とも……彼女も立派な勇者パーティーのひとりだよ。だけど……この状況は流石に庇えないわ」


 倒れ込んで起き上がれない弓使いは、自身の両足を気にしていた。

 この勇者パーティーは、皆ボロボロだった。


「ヘルライダー大杉君、人型になっておいてください」

「わかった。……空気が重いなぁ」


 俺が人型の姿になると、勇者パーティーがヨミルと俺の存在に気づいた。


「魔王! 次こそは……ぐっ」

「はいはい、動けない勇者パーティーはもう終わらせてあげるからね。それを実行する前に、詳しく聞きたいことがありまして」


「魔王に話せることはない」

「俺様は難しいことわかんねーの!」

「ないわね」

「……何も、ないです」


「勇者パーティー、どうか聞いてくれ。俺もさっき聞いたが、魔王は二百五十四年も眠り続けていたらしくてな」


「えっと、ちょっと! ヘルライダー大杉君がそれ言っちゃうんですか!」

「駄目だったのか?」


「うーん、この場で重要そうな情報を聞き出せたら許すと思う……」


 ヨミルの頬が少し膨らんだが、気にしないでおく。

 勇者パーティーの仲に問題がありそうなのは、ちょっと気になるが……上手く情報を聞き出したい。


 正直なところ、俺がこの場を仕切って話を進めるは怖い。

 だから、少しだけ強がった口調になるかもしれない。


「まずお前ら、勇者パーティーが倒したとされる四天王というのは、二百五十四年前には存在しなかったそうだ。そして、魔王の現在の目的なのだが、この魔王城が何故ラストダンジョンと呼ばれるかを探しているところなんだ。俺は思った、もし魔王ヨミルが四天王に会えたら、何かわかるかもしれないと」


「求めているのは、一定期間で何度でも復活してしまうあの四天王たちの居場所か。その情報そのものが、ギルドの秘蔵クラスの代物だぞ?」


 金髪の少年が、険しい顔つきになる。


「四天王の情報は、街のギルドが持っている……ありがとうね。それじゃあ金髪勇者君には、お役御免ということで」


 金髪の少年に向かってヨミルが手をひらを向けると、きれいさっぱりいなくなってしまった。

 残された三人の勇者パーティーは、黙り込んでしまう。


「ヨミル、何をしたんだ?」


「転移魔法よ。転移先は魔獣ヒュドラドの上で――」


 いかにもヤバそうなモンスターの名前を挙げたヨミルは、再びにやける。

 金髪の少年は、もう助からなさそうだ。


「次の質問をするか。秘蔵クラスの情報を扱っているギルドは、どこのことを指しているんだ?」

「そんなの言えるわけがねーだろ――」

「はい。こぶし男さん、さようなら」


「流石にそれは言えないわよ――」

「弓使いさんもさようなら」


 ヨミルが容赦なく転移魔法を使用する。

 ワープ先には、もちろん魔獣ヒュドラがいるのだろう。


 これで三名、魔王城で帰らぬ者となった。


「ユウリス、ベクさん、レティア。皆が死んだのはボクのせいだ……」


 赤髪ヒーラーは、いまにも泣き崩れそうになっていた。

 少しは同情したくなるが、俺はただの雑魚モンスターだ。


 救いの手なんてものは、地球に置いてきたと思い込むことにした。


「さてと。勇者パーティーがヒーラーひとりになっちゃったけど、ヒーラーさんのお名前ってなんて言うのかな?」

「ボクは……ナギ・クエリス……。王都ハウルクエリスにあるギルドマスターの一人娘です……」

「なるほど、勇者パーティーのヒーラーさんは、ギルドマスターの娘だったのね」


 他の三人と違い、突然ヨミルが興味を示した。


「ナギさん、とりあえず私に手を差し出してみて」

「えっと……こう、ですか……?」

「ちょっと、じっとして待ってね」


 ヨミルは、ナギが身に着けている白っぽいドレスの袖をめくった。


「薄っすらとした模様……やっぱりね。確信した」

「ヨミル、何か分かったのか?」

「彼女が使用する回復魔法の効果が弱まっている理由よ。いま、この子の身体には特殊な魔法が掛けられていてね、回復魔法を使用すると信号として何処かへ送られるようになっているのよ。現在地の特定かしらね」


「それでまともな回復が出来ずに……俺たちに負けたんだな」


「いやいや、回復魔法が正常に機能していても、勝つのは魔王なんだからね?」


 勇者パーティーひとつくらいでは、そう簡単には負けないという自信がヨミルから伝わってきた。



 一方で、ナギという赤髪ヒーラーは大泣きしていた。

 彼女自身が被っていた、細い赤色の横線が入っている白くて丸い帽子で必死に顔を隠して、勇者パーティー壊滅という現実に心を痛めていた。 


 ナギが着ていた白い襟のある赤っぽいドレスが、戦いで血が滲んていたり泥んこだったことを踏まえると、四天王を倒してきたのは本当だとみて間違いないのだろう。


お読みいただき、ありがとうございます。

面白いと思いましたら、感想やブックマークをよろしくお願いします。


愛原ひかなの代表作

「ダンジョンで遊ぼう!! ~VRゲームの世界ですが、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので楽しくダンジョンを作りたいと思います」

小説家になろうでも連載しておりますので、こちらも何卒よろしくお願いします

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