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ラストダンジョンに登場する雑魚モンスター『ヘルライダー』になっていた。魔王のお手伝いをすることになった  作者: 愛原ひかな
第2章

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王都でのお買い物


「新入りさんの足が止まっているネ」

「すみません、つい会話に専念してしまいまして」


 大杉は平たく謝ると、ヒュドラトがほのかに笑った。


「道案内はアタシがするから、あまり深く考え込みすぎないようにしてネ」


「そうさせてもらいます」


 ヒュドラトは大杉より一歩前を進み、大杉はその後ろ姿を見失わないようについていく。


 初めて王都ハウルクエリスに訪れた時とは別の道を進んでいるが、今のところ街並みの風景に大きな違いは見受けられない。


 怪しげな場所へ連れていかれる心配はなさそうだ。


「ところで新入りさんのこと、なんと呼べば良いかナ?」


 後ろ向きに歩くヒュドラトは、俺の顔と視線を合わせる。


「俺のことは、大杉で大丈夫です」

「オオスギさんネ。改めて、ヨロシク!」


 ヒュドラトは、暖かな微笑みをみせる。

 太陽の光も相まって、とても眩しく輝いていた。


「さてと、ちゃんと道案内しますかネ!」


 ヒュドラトが進行方向に振り返ると、真っ直ぐに指をさした。


 大杉の視界には、一風変わった建物が見えていた。

 藁で固められた丸っこい一軒家。


 紫の屋根があって、出入口付近には看板が置かれている。

 ひとことで述べるなら、魔女の家といったところだろうか。


 大杉は慎重になりながらも、看板の文字を読む。


 クーネルウィングの家具屋――。


 店名であることを確認した大杉は、慎重に建物の入り口についているのれんに手をかける。


「ええっと、失礼します……!」


 恥ずかしながらも、のれんを避けて中に入っていく。

 店の中に入ると、まず目に入ったのは大きな釜である。


「見ない顔……いらっしゃいませ」


 おっとりした雰囲気がある、女の声がした。


「はいっ……!」


 大杉は背筋を伸ばして、周囲をくるっと見渡した。

 クーネルウィングの家具屋は、ごく一般的なお店ではなく、工房のイメージに近かった。


「一見さんはお断りですが……」


 大杉に降り注いだのは、呆れの視線だった。



「あれ、そうだったのですか。すみませんでした……!」


 大杉はすぐに謝罪しようとして、店主らしき銀髪の女性に目を向ける。

 すると、その女性が持つエルフのような大きな耳がピクリと動いて、ため息をついた。


「はぁ……。連れがいるのね、入らないの?」


 明らかに大杉に向けられた言葉ではなかった。

 これはむしろ、大杉の後ろにいるヒュドラトに対して投げかけられたものである。


「アイリーンさん、お久しぶりですネ。地の四天王が作ったとされる新たなダンジョンが発見されたということで、隣国から出稼ぎに来ていると聞きつけたものでして」


「ええ……。嘘ではないけど、正確にはギルドから要請があってここに滞在しているのよ」


「なるほどでス。それで、アイリーンさんがしばらく王都におられるのですネ」


「まぁ、そんなところかしら」


「アイリーンさんは、相変わらず堅苦しいネー」


「調子、狂いそうだわ……」


「そんなこと言わないでくださいヨー」


 かつての友との再会を果たしたような明るい表情のヒュドラト。その明るい勢いに押し負けていたアイリーンは、口を酸っぱくしていた。


「それで、今日のご用件は?」


 アイリーンが尋ねてきたので、戸惑いながらも大杉が答える。


「できるだけ早く、新しいキッチンを用意したいんだ。サイズは少し小さくても構わない」


「ふーん……。ヒューが同伴しているから、きっと魔王城のキッチンのことかな……」


「アイリーンさん、よくわかりましたね。魔王城のキッチンは長らく使用されてなかったものでして、いざ使おうという機会が訪れた際には使い物にならなくなってましたネ」


「使い物にならない……えっと?」


 店の中の棚に近づくアイリーンは、首をかしげる。


「キッチンでも爆発したのかなと思ったのだけど。違う?」


 さらりと酷いことを言われた気がするが……。

 魔王城は爆破されていません。


「すみません。汚れがこびりつきすぎていて、掃除できなかっただけです」 


「掃除できなかった、か……。再び使われるようになるまで本当に長かったのかしらね」


 アイリーンの手には幾つかの瓶を抱えていた。

 そのどれもが半透明な液体であり、中身が何なのか全くもって不明である。


「それじゃあ、いまから作るね」


 アイリーンは瞬きをすると、釜の前に立った。


「あの、すみません。ここって何屋さんでしょうか」


「クーネルウィングの家具屋だけど……」


 すぐにアイリーンが答えるも、回答になっていない気がした。

 慌ててヒュドラトに視線を向けると、ヒュドラトはほんわかした顔つきで口を滑らせる。


「彼女は一流の錬金術師なのでス。彼女自身がエルフ種族な故に長生きできるので、様々な知識も持たれております」


「そうなんですね……!」


 大杉は、世界の広さをまた一つ知った。


 これから始まるのは錬金術である。

 アイリーンの手によって開けられた瓶が、すぐに傾けられる。


「見るのはどうぞご勝手にですが、これが錬金というものです。世間一般ではお目にかかれること自体が、おそらく貴重なのでしょう」


 透明な液体が釜の中に注がれると、店の中が一瞬にして青白い光に包まれる。


お読みいただき、ありがとうございます。

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