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ラストダンジョンに登場する雑魚モンスター『ヘルライダー』になっていた。魔王のお手伝いをすることになった  作者: 愛原ひかな
第1章

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四天王を召喚した妖精


「四天王の召喚主さん、そろそろ出てきたらどうかな?」


『魔王が気づいているみたいとなると……逃げないのも手か』


 透明化の魔法を解除。

 大杉たちの前に現出したのは、小柄な妖精だった。


 その妖精は、つばがついているピエロのような桃色帽子を被り、帽子と同じ色味のローブを身につけていた女の子。


 緑の長い髪を揺らして、妖精の白い羽を背中から生やして空中に浮かび続ける。

 彼女の両手は空いていた。武器とみられる装備品は隠し持っているのか、あるいは……。


「貴方は何者なのかしら?」


「わたしは、ルチカ・フレシオン。教導のリーダーをやっていて――」


 ルチカは喋りながら両手を左右に伸ばして、黒い魔法陣を展開していた。


「奥にいる勇者パーティーの一員には、滅んでもらう必要があります」


 黒い魔方陣から球体のようなものが発射されると、ヨミルを避けるようにして弧を描き、ナギのいるところに目掛けて飛んできた。


「どこを狙って……あっ、ナギちゃん!」


 大きな声を出したヨミルは冷や汗をかく。


 大杉とナギが立っている左右から、黒い魔法がすぐ近くにまで迫ってきた。


 このままでは、死ぬ。


 そう確信した大杉は、ナギの胸元を強く押して突き飛ばした。


「ぐあああああああっ!」


 激しい激痛で、手足の感覚が麻痺する。

 それ以上にヤバいのは……頭が地面に転げ落ちていくであろう俺の視線で……。


「お、大杉さん……!」


 ナギの掠り声を耳にした大杉は、すぐに意識が途絶えた。




 ――気が付いた時には、俺はお墓の前に立っていた。

 生い茂る短めの雑草が静かにゆらゆら揺れていて、お墓に添えられた一輪の花はどこか新しさを感じ取れた。


 俺はお辞儀すらせず、ただお墓に目線を向けていた。

 そのお墓に刻まれているのは……。

 


 大杉修二郎(しゅうじろう)


 大杉京子(きょうこ)


 大杉結花(ゆいか)



 あのトラックに敷かれた、俺の家族の名前で間違いなかった。


「うあああああああっ……!」


 俺は泣き叫んだ。

 悔しさよりも、憎しみよりも、悲しさが勝った瞬間だった。


「お父さま、お母さま、姉さん……。俺は何も出来ていなくて……!」


 地球に戻ってきた自覚が徐々に芽生えてきているが、こんなところに俺の居場所なんてない。


 添えられた花は、親戚の者が置いたと考えるのが妥当。

 俺はここで何もしていない。だからこそ、何かをしてやりたい。

 そう思ったところで、状況は何も変わらない。


 実行力もない。足がすくんで動かない。


 異世界転移?

 魔族召喚の儀?


 いやいや。


 異世界で、俺は殺されたんだ。


 ルチカという妖精に。


 もしかすると、ナギを守れたかもしれない。


 それで現実世界に引き戻されたと考えるべきだが。


 現状を把握した俺は、地球でやり残したことなんてないのに……。


 これから俺は、どう生きて行けば良いんだ?


「大杉、さん……」


 そっと手を触れてきたのは、暖かなぬくもりだった。

 振り返ると、半透明なナギの姿が見えていた。


「ナギ……? 俺は……」

「大杉さんは、泣かないでください……。体のことは心配しなくても、ボクが直しますから……」

「でも、俺は……死んで……」


「その……大杉さんの家族のことも見えてしまっているのですが、大丈夫です……。ボクは大杉さんと、もっと冒険が……したいです……ので……」


「そ、そうか。ナギ、ありがとう」


「いえ……」

「あっ、二人でズルいわね!」


 薄っすらと、ヨミルの手も出てきた。


「ヘルライダー大杉君! 早く戻って来なさいな」


 半透明なヨミルの顔を見ると、涙なんて流している場合じゃないのは確かだった。


 俺の居場所は、ある。


「その、ごめん」

「……?」

「ほら、ナギちゃんが困っているわ。ヘルライダー大杉君が謝る必要は、これっぽっちもないからね」

「そうなのか?」

「とりあえず例の妖精さんはダンジョン奥地に逃げていったから、私たちの心配は不要よ」

「うん……??」


 敵を退けたってこと?

 詳しくは、後ほど問いかけるとして。


「俺はどうやって、もう一度異世界転移するんだ?」

「そこは……ボクの、回復魔法です……!」


 ナギが癒しのエネルギーを俺に注いでいた。

 異世界転移するのではなく、蘇生魔法という類のもので呼び戻すというか。


「俺は……!」


 一瞬だけ視界が白くなったあと、大杉は仰向けの状態になっていた。

 そこにナギが上から覗き込む。


「無理させて、ごめん」

「むぅ……?」


 困惑したナギが頭を引っ込める。

 ひとまず、ヘルライダー大杉は復活した。


 大杉は頭からゆっくりと起こすと、ヨミルと視線が合った。


「とにかく無事でよかったね」


「そうだな。この後はどうするんだ?」


「三十六階層に設置してあると思われるクリスタルに触れて、一度地上に戻りましょう。ここから先のダンジョンの探索は、ギルドと合流して話し合う必要がありそうだわ」


「ヨミル、そうなのか?」


「まぁ、歩きながらいろいろとね。私も考えなしには動かないし」


「魔王ご本人の動きを見ていると、そうは思えないが……」


「気のせい、気のせい!」


 ヨミルは次の階層に向けて歩きはじめる。

 そのヨミルについて行くように歩き始めた大杉は、ナギに尋ねた。


「ルチカという敵が言っていた、教導ってなんだ?」


「教導ですか……。それは、レジスタンスと相反する組織と……呼ぶべきものです……」


 少しばかりしんみりしているナギは、瞬きを二回ほどする。


お読みいただき、ありがとうございます。

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