これがヘルライダーなのか!!
心当たりがありそうな原因といえば、魔族召喚の儀しかない。
絶対これの影響だろ。
そういえば、視界が戻ってくる際にヘルライダーと言われた気がする。
真相は、ヨミルの口から聞き出すしかない。
「俺はいま、人間なのか?」
「随分と直球な質問に聞こえましたが、魔王直々にお答えしましょう! 貴方はいま、ヘルライダーというモンスターになっています。正確には半分くらい違うというのが丸い表現になりますけどね。中身はもしかしたら意志を持つ人間だけど、雑魚モンスターです」
「俺は雑魚モンスターか」
「そうです。雑魚といっても、ここはラストダンジョンでもありますから、戦闘力はそれなりにありますよ?」
「ここ、ラストダンジョンなんだ。ラスボスは誰なんだ?」
「私ですよ」
「そうか」
「なんか反応薄くないですかね?」
「魔王がラスボスというのは、既視感があったりしてな。そんなことよりも、魔族召喚の儀とやらで俺をここに呼んだのは理由があったよな?」
「そうでしたね、私が招いたから貴方がここにいる」
「それで、ヨミルの目的は何だ」
「ずはり言います。雑魚モンスターよ、私のお手伝いをしてほしい」
「俺のことはヘルライダー大杉と呼んでくれ」
「ニックネームですか……わかりました。では、ヘルライダー大杉君。私と一緒に、この魔王城がラストダンジョンと呼ばれてしまう理由について探しに行きましょう!」
ヨミルの口から、冗談っぽい言葉が出てきた。
「は……はぁ……?」
「すみません、これには決して冗談という言い訳をしてはいけない理由がございまして。その、ですね」
「言い訳できない……? 魔王城をラストダンジョンと呼んだのは、誰なんだ?」
「冒険者ですよ。そういえば、ちょうど魔王城を探索している勇者パーティーが一組いましたね。捕まえて聞き出してみましょうか」
「そんな事が出来るのか」
「はい。だって私、魔王ですからね!」
少女っほい口調を耳にしていると、冗談なのか本気なのか本気でよく分からなくなってきた。
「ヘルライダー大杉君は何が不安なのかな?」
「分からないんだ。俺は交通事故で家族を害されて、トラックの運転手に対して憎しみを抱いて失望していたはずなのに……」
「大杉君が抱いた失望や憎しみは、私がぜんぶ食べてあげるからね?」
ヨミルは俺の頭を撫でた。
五秒だ。そのたった五秒でも、俺の肌身には何も感じない。
どういうことかやっぱり分からないけど、魔王は俺を心の底から支えてくれる存在なのか?
今のところ、ヨミルの言葉を信じるしかないが……。
「こんな俺でも、魔王について行って大丈夫なのか?」
「勿論、歓迎しますよ」
ヨミルは俺に手を伸ばして、握手を求めた。
俺は黙ってそれに応じる。すると、ヨミルの小さな温もりを感じた。
ヨミルがやりたいことを、俺がお手伝いをする。
異世界転移した俺に求められることは、シンプルでわかりやすいと思う。
今回、情報を聞き出す相手となるのは、探索している勇者パーティー。ということは、さぞかしレベルやステータスが高いと思われる。
実戦経験すらない雑魚モンスターの俺が、足手まといにならないと良いが……。
「ヘルライダー大杉君。勇者パーティーと接触する前に、ヘルライダーの能力を少し使っておきましょうか」
「あまり難しくなければ、だが」
「思ったより自信がないみたいですけど、きっと扱いこなせると思いますよ。まずヘルライダーはですね、四足歩行するのです。馬に乗った気分をイメージしてみて下さい」
「馬か、歩くイメージ……うん?」
俺の両足が溶けた粘土のように変形したあと、身長が急激に高くなっていく感覚を味わった。
勢いよく馬の頭が生えてくる。
そのあと足が四つ生えてきて、がっちりと固まる。
馬に乗っているではなく、俺の足が馬の下半身と一体化してしまっている感覚に近かった。
少し動き回ってみるが、思ったより速度が出てしまう。
人間の姿よりも早く走れるな、これ。
「それがヘルライダー本来の姿です。大杉君の器は人間なので、人型の方が普段は動きやすいかと思いますが……」
「これで戦うのだろう。武器はないのか」
「ありますよ。ヘルライダーの適正装備は槍です」
「頭でイメージすれば良いんだな?」
「はい!」
ヨミルに言われた通り、頭の中でイメージする。
すると今度は、手が槍に変形した。
これも一体化していて、軽やかに振り回すことができた。
「モンスターって、意外と面白いな」
「それは良かったですね。ただしそのままでは、槍として突きにくいのではないでしょうか?」
「うん? たしかにそうだな」
ヨミルに指摘されたが、的確だ。
一体化していると槍として突きにくかったので、頭でイメージをし直す必要がある。
ただ今回は恐らく、手に槍を持つイメージを抱くだけで大丈夫そうだ。
「こうか」
「上手くいきましたね」
ヨミルが褒め称える。
俺自身の手で、シンプルな紫の槍を持てている状態になったからだろう。
軽やかで振り回しがしやすく、突くことも軽々と出来てしまう。
まるで、ゲーム画面越しに見てきた動きを明白に再現しているようで、とても新鮮味を感じた。
これで、勇者パーティーとの接触を図りにいく準備ができたともいえる。
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愛原ひかなの代表作
「ダンジョンで遊ぼう!! ~VRゲームの世界ですが、冒険者にいきなり襲われるのは嫌なので楽しくダンジョンを作りたいと思います」
小説家になろうでも連載しておりますので、こちらも何卒よろしくお願いします




