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プロローグ第二章 「二年間の断絶」

 その次に意識が覚醒した時、私の置かれていた状況は一変していたんだ。

 最初に感じたのは、背面を包み込む柔らかな感触と手足や鼻孔といった様々な箇所に差し込まれたケーブルの煩わしさだったの。

『何だろう?アチコチに色々と刺さっているな…私の身体はどうなったんだろう?』

 そうして瞼をゆっくり開けた私は左の視界が回復しているのに驚き、思わず両眼を見開いてしまったんだ。

「えっ…あれっ?」

「ご…御覧下さい!ち、千里さんが目を!?」

 悲鳴のようなソプラノ声に促されて視線を向けた先にいたのは、小6の時に特命遊撃士養成コースで知り合って以来の親友である伯爵令嬢の生駒英里奈ちゃんだった。

 両手で口を押さえちゃって、こんな時でも上品で御淑やかなんだから。

「おい、ちさ…分かるか、私達の事が?」

「良かった…意識が戻ったんだね、千里ちゃん!」

 見れば堺県第二支局に正式配属されたばかりの頃に仲良しになった同僚である和歌浦マリナちゃんと枚方京花ちゃんの二人も、傍らに立っているじゃないの。

 場所も先程までの瓦礫が散乱する戦場ではなくて白い壁で四方を囲まれた清潔な部屋に転じていたし、私の手足や鼻孔に差し込まれたケーブルやらチューブやらと接続された様々な機械が間近に鎮座していたんだよね。

 そうして私は事情を大まかに把握したの。

 どうやら私はドゥームズデイ博士を射殺して力尽き、救出後に人類防衛機構の付属病院に収容されて治療を受けていたって事だね。

 そして適切な治療が功を奏して回復傾向にあるって事も。


 だけど事態の把握という点では、それだけじゃ不十分だったんだ。

 後になって分かった事だけど、もっと重要なファクターを私は見落としていたみたい。

「分かるよ、みんな…随分と心配かけちゃったね。だけど何時までもこうしちゃいられないよ。こんな風に私を病院送りにしたアポカリプスの奴等なんか、一人たりとも生かしちゃおかないんだから。」

 この一言を口にした次の瞬間、その場に居合わせた全ての人間の表情がサッと強張ったの。

「えっ、千里…」

「千里さん…」

 見舞いに来た同期の友人達も付き添っていた家族も、そして医療に従事する衛生隊員達までも。

 何も知らないで無邪気な事を言っているのは、当の本人である私だけ。

 昔から「知らぬが仏」とか「町内で知らぬは亭主ばかりなり」とか言うけど、正しくこの事だよ。

「今回の掃討作戦には戦列復帰出来るか怪しいけど、残存勢力の追撃任務には参加したい所だよ。遅くとも私が中一のうちに、彼奴等を殲滅しなくちゃ…」

「焦りは禁物で御座います、吹田千里准佐。掃討作戦は無事に成功して黙示協議会アポカリプスは壊滅したのですから。」

 起き上がろうとした私は、そうして衛生隊員のお姉さんにヤンワリと止められたの。

 言葉の端々に違和感を覚えてはいたものの、「目下の懸念点だった敵対勢力が無事を掃討出来た」という安堵の方が勝っていたんだ。

「へえ、アポカリプスが滅んだ…それは良かった。当座の危機は排除出来たって事だね。あれ?でも、さっき私の事を『准佐』って…まだ私は大尉のはずじゃ?二階級特進ってどういう事?」

「あっ、あの…落ち着いてお聞き下さいませ、千里さん…誠に申し上げ難いのですが、千里さんの負われた御怪我は非常に深刻で、意識レベルの低下により長らく昏睡状態にあり…」

 親友である伯爵令嬢の解説に、私は徐々にではあるが事情を理解していったんだ。

 要するに私は、二年以上の間を昏睡状態で過ごしていたって事。

 それは要するに、中学時代の大半を棒に振って間もなく卒業式だったり、せっかく二階級特進で准佐にまで昇級したのに同期の子達に追い抜かれてしまったりと、色々と無視出来ない変化が生じていたって事。

 早い話が、私は浦島太郎状態に置かれていたって訳だよ。

 それも恐ろしい事に、年単位でね。

「ええ…嘘でしょ…?」

 月並みな感想ではあるけど、当時の私にはこんな事しか言えなかったんだよ。

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― 新着の感想 ―
うん、まあ、これはショックですよね。 二年という時間はあまりにも若いものには長い。
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