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プロローグ

「また、あの民子、殿下に付きまとっているわ」

「アークトゥルス殿下の婚約者の座を狙っているのかしら」

「身ほど知らずですことで」

「高貴族ばっかりに話しかけていっしゃると聞きましたわ」

「あんなにべったりとはしたないですこと」

 3階の窓から外を眺めていると、今はアークトゥルス殿下に侍っている。その前の休憩時間は騎士団長のイザク・ランベール様。その前は宰相の令息のアレン・オリオン様。さらにその前は……。


 ヒロインって、あんな感じだったかな? もう少し、礼儀を弁えていた気がするけど。もしかして、裏ではあんな感じだったのかもと思い直した。課金とかしていないし、メンイストーリー以外の彼らのことは知らない。課金していたらヒロインのこういう一面も見れたのかも。


 貴族女性って隙を見せないように表情も隠すのが上手いし、無邪気に笑うようなことも人前ではしないし、あれを無邪気な天真爛漫っていうのかは知らないけど、喜怒哀楽がはっきりしているヒロインに惹かれたのかもって気にもとめなかった。

 私はするべき事をするだけ! うん。そうと決まれば、やることは一つ。


 最初はヒロインのヴィーナスちゃんの本やノートを焼却炉に投げ捨ている。

「ヴィーナスちゃんの机は此処ね。……本とノートもあったわ。あの子、もういじめられているの? こんなに早くから? 知らなかったわ」

 ノートや本に心無い罵倒がぎっしりと書かれた。断罪されたの私だけだから、私以外にもヴィーナスちゃんを虐めているひとが居ることにも驚いた。直ぐに支給されるし、勉強には困ることはない。

 私がする事はストーリーに沿って虐めて、平民になること。私の夢の為にごめんなさいって心を痛めて焼却炉に捨てた。のちに貴女は、誰よりも幸せを掴めるわ。今だけの辛抱よ。

 これで一つクリア。平民になる一歩よ。


 今度は、確かアークトゥルス殿下に近づくヴィーナスちゃんに暴言を吐くのよね。暴言ってよりは嫌味かな。


「平民風情が尊いアークトゥルス殿下に近づくなんて、分を弁えるべきではなくって」

「学園内では身分関係なく平等なはずです」

「平民が可笑しな事を言っているわ。平民は、養育がなっていないのかしら」

 扇子を口元で広げてにやける。私、悪役令嬢に向いているかも。周りから嘲笑う声が聞こえる。

「アーク様も何かあったら頼っていいと言っていました!」

 ん? こんな初頭から愛称で呼んでいたっけ? 後半だった気がするけど。

 アークトゥルス殿下に近づくな、牽制するだけだった。


 実は私、ヒロインよりも悪役令嬢の方が好きだったからヒロインのセリフは覚えていない。覚えていないけど、この段階で愛称で呼んでいない。好感度アップのアイテムを使ったのならもしかしたらあり得るのかもしれない。私は使ったことはないけど、課金したら好感度がアップできた。好感度アップのアイテムまで売っていたの!? お願いだから、そんな物を使わないでよ。ストーリー通りに進まないと私が混乱してしまう。それなら、セリフは――。

「貴女が如きが、アークトゥルス殿下を愛称で名を呼ぶのは不敬に当たるのではなくて。恥を知りなさい。お猿さんでもわかることですわよ。貴女の知能は猿以下なんですか? あら、お猿さんにも失礼ですね」

 大勢の前で暴言を吐き、恥をかかさせ、ヴィーナスちゃんの頬を平手打ちをした。

「叩くなんて、酷い。アーク様に言いつけますから」

 ん? "アークトゥルス殿下に言いつける"そんなセリフあったっけ? 覚えていないけど、たぶん、あったのよね?

「あら? (わたくし)は貴女を助ける為に打ったのよ? ホーネットキラーに刺されましたら……」

 そして、そこにヒーローのアークトゥルス殿下が現れて私を咎める。

「あたしとアーク様は深い仲だからって嫉妬しているですよね。わかっています。あたしは、可愛いからアーク様に愛されているけど、愛されないスピカが可哀想――。あたしからスピカも愛してあげて言ってあげる」

 深い仲!? 可哀想!? 言ってあげる!? 上から目線の言い方だったかしら? ヴィーナスちゃんって、こんなキャラクターだったっけ!? このさえどうでもいいわ。早くヒーロー現れて!!

 ……? あれ? 何故かアークトゥルス殿下が現れない。アークトゥルス殿下だけではない。他のヒーローたちも現れる様子がない。

 ちょっと、待て! 悪役令嬢(スピカ)は他に何か言っていったっけ? こんな感じだったはずよ。

「今日のところはいいわ」

 とりあえず、今は引くべきだと思い、私は一人で考えを纏めたく裏庭へ向かった。


「何で? どうして? アークトゥルス殿下は現れなかったのかしら? 私は確かにヒロインに暴言を吐き、恥をかかせた。ストーリーの通りなら、あそこでヒーローのアークトゥルス殿下が現れて、ヴィーナスちゃんを背中にし守り、私を咎める手筈だった。可笑しい。何処で間違えた?」

 私はストーリー通りにいかない歯がゆいに頭を抱える。

 そもそも、幾つか物語りも飛んでいる事もおかしな話。


 この世界が乙女ゲームと知ったのは、ヒロインのヴィーナス・ラピノヤに出会ってから。雷に打たれかのように前世の記憶が流れ込んできた。こうしちゃいられない! 運命に抗わないと、思うかもしれないけど、王子妃、ましては王妃なんてまっぴらごめん被りたい。アークトゥルス殿下とヒロインがくっつかないと私が婚約者に選ばれる運命になる。良くある処刑エンドは無いし、前世は普通の大学生でアルバイトの経験もある。平民になっても何も問題はない。寧ろ、平民になりたい。なので、乙女ゲームのストーリーに沿って行動も、一語一句間違えないようにセリフを言ったのに、どうしてこんな事になっているの? 断罪は? 途中、トラブルはあったけど、些細なこと。ヴィーナスちゃんが好感度アップのアイテムを使ったりしたから、戸惑ってセリフを間違いそうになっただけで、それ以外の事は私はストーリー通りに動いていた。


 私を断罪するはずのこの国の皇太子アークトゥルス様が私を追いかけるという可笑しな光景になった。どうしてこうなったかのかが分からない。


 今、私は何故かアークトゥルス殿下の膝の上にいる。がっちり捕まえられて逃げれない。

「放してください」

「放したら逃げるだろう?」

「に、……逃げませんわ」

「スピカは、嘘が下手だね」

 どうしてこうなった? 誰か説明してください。


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