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毒善。5


「ああ、こただ問題ないよ。大丈夫。」


 絶対に今年勝たないといけないんだ。そうじゃないと、剣を取った意味がない。だから、早く決めないと!


「………今年(基礎課程)が終わったら、魔導科、普通科合わせてシャッフル。

来年(応用課程)からは、卒業するまでごちゃ混ぜになり続けるから、それまでに、ドラゴンに乗った王子様のように迎えに行きたい。

そのために総大将になった。これも合ってる?」


「こただ合ってる」


「ドラゴンのブレスみたいに焼いて欲しいの?

貴方ならさぞ、甘い薫りがするでしょうね。

……これは向こうの総大将も言ってたことだけど」


「どうした急に、勿体ぶって」


 向こうの総大将ねぇ……どんなヤツだろう?

 アニスの友達って考えた方が自然か。絶対ロクでもないヤツ。


「そんな、勇者様みたいに、好きだなんて堂々と私にも態度で出せるなら、なんで魔導科、オルフェリアさんの隣に居なかったの?」


「━━━━━そうだな。えっと、」


 アニスと俺の距離は、何処までもテーブル、この板きれ一枚のせいで近づかない。

 それでも、どうしても、って口ぶりだ。


「別に、そんなカッコ良い理由があった訳じゃないよ。たまたま剣を人に向けて振り回すのが好きだったんだ。……その、」


 本音を求めているのだろう。今の俺のように。


 これはきっと、オルフェリアや騎士への憧れのような胸の内から来る自発性のある者じゃない。


「どうしたの急に、宙ぶらりんの先鋒みたいに勿体ぶって焦らして。

……やっぱりアレ?自信がなかったから?

他の男と一緒になるところを近くで見るなんて、ボク耐えられない、ってとこかしら。その癖、堂々と意地悪してきて憎いやつ」


 アニスを見ているとそれが蒸発して、もっと何か、

あっちに居た時もひっくるめた違う自分になってしまう気がする。

 もっと理想的ではなく、思想的、極めて人間的な何か。


「魔法が嫌いだからだよ。オルフェリアがその道に進むって言った時も、虫唾が走った」


 オルフェリアが打ち明けてきた時の、あのはにかんだ顔を思い出すだけで、指の付け根がズキズキと鋭く痛む。


「え? …ァ…貴方、自分がどんな馬鹿なこと言ってるか分かってる?

人間が、どれだけ魔法に頼って、今まで生きてきたと、……思ってるの」


 よせ、やめろ。短絡的になるな。いつものように、


「だからだよ、アニス。あんな得体の知れない物なのに、生まれた時から力の優劣は決まっているのに、それを祝福?ハッ、笑わせる。呪いだよ、こんなの。

人を型に嵌め、可能性を潰す。人は人による力、技術で生きるべきだ。持って生まれた物ではなく、死んでいく過程で身につけた物。それで死に立ち向かう姿こそが人間だ。

大体、与えられた物なのに、何を学ぶってんだ。

オルフェリアもどうせ、使えるから使ってんだろうなぁ」


「………きっと、そうね。誰も彼も、考え無しだったと思うわ。ただ、出来るからやっただけ」


 俺にとって魔法とは、昔の人間がよく分からん事象に、神だのなんだの意味づけしたのと同じこと。

 ここの人間もそれだ。

 頭付いてんのに、こんなの知らねぇって、魔法で括らないと自分を納得させられない。

 なまじ、地球での生活を抱えてると、なんでもかんでも魔法で解決する今の世界は気色が悪すぎる。


「否定、したいのね。私達人間の上に、魔法があるということを。……」


 けど、まぁ、あっちはあっちで問題あったし、

 第一、剣と魔法、って世界でワイワイやってる俺が、言って良い言葉ではないよな。

 治癒とか、ゴリゴリ恩恵受けてるし。

 謝るべきだろうアニスに、独りよがりを押し付けて。


「嫌いは言い過ぎだったな。偉そうなこと言ってごめん。そんな、長々話すなら、魔法に変わる何かをまず、見つけてからにしろって話しだよな。ごめんな。変な話を押し付けて」


「━━━━━そう。」


 アニスは、俺の自分語りの最中から、額に両手で作った山を押し付けて、こちらに表情を見せない。

 たまにする身じろぎで、綺麗な赤い髪が手の甲に張り付いて魅せるばかりだ。


 やばいよう。

 また、ガチギレさせちゃった。

 あぁ、やっぱりの総大将、それかM2ーCに友達居るんだ。

 アニスがなんで総大将を目指してたかも知らないで、こんな。俺は、


「カエルム君」


 俺が頭を掻き毟りたい衝動に駆られていると、アニスが声を掛けて来た。


「アニス。その、大将決めの時もそうだし、今回の」


「気にしないで、同じだって分かったから」


 そう言って立ち上がり、こちらを振り返らず扉に向かっていく。


「待てよ、話は終わってねぇし、先鋒だって」


 そんな顔で別れたくない。

 けれど、足が、砕けたように、進めなくて。


「いっしょに帰ろ? もう12時過ぎてるわ」


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