4話 苦しむ過去、話せない事
そして放課後
授業が終わった、多分ずっと顔が赤かっただろう。なんでああいうことしちゃうかなと後悔している魈斗であった
と彩奈が声をかけてきた
「ずっと顔赤くしてたよ?そんなに恥ずかしかった?」
「当たり前だろ、普段あんなことしてねぇんだから………んぁーー!なんで無意識にぃーー!」
「あはは………でも真名城さんも反応可愛かったね?」
「梨美の好きな人の前でやっちまうとは大失態………」
見てない所でもやっちゃいけなかったんだが、よりによって梨美の好きな人の前で無意識にやっちまうのは大失態であった。
梨美が照れるのはちょっと分からなかったが、アイツが照れたから、こっちも恥ずかしくなっちまったじゃねぇか。しかも、ちょっと可愛いと思っちゃったしよ、ぼっちには厳しいよ、あの顔は、可愛いと思ってしまう照れ顔だった
顔なんか合わせられっかな
「はぁ………帰ろうぜ………彩奈」
「僕は放課後デートがあるから、一緒に帰れないよ?」
「あ、そっか………見守り役してやっかぁ………ってあれ?なんで見守り役が当然になってんだ………?」
「まぁ、僕としては嬉しいから、そのまま続けて」
「………しゃぁねぇな………一仕事すっか」
今日の放課後デートにおすすめした場所はゲームセンターである、ゲームセンターにある、UFOキャッチャー。魈斗が唯一疲れが解消出来る場所を、彩奈に教えた
ゲームセンターにはコインゲームもあり、スポーツゲームもあり、ホラーゲームもあり、カートゲームもある。だが魈斗が一番おすすめする場所はUFOキャッチャーである、UFOキャッチャーで大物を取った時、ハイタッチが出来、サラッと手が触れる
これがUFOキャッチャーのいい所
「まだあるが、聞くか?」
「ううん、大丈夫。おすすめな場所教えてくれてありがとうね?」
「おう、んじゃ、楽しんでこいよ」
「うん、楽しんくるよ」
彩奈と魈斗は分かれて、彩奈は好きな人と放課後デートに行く、魈斗はその見守り役。出来ること、出来ないこと、人にはそれぞれあるが、魈斗が唯一出来ることはこれだけ、彩奈が告白するまで見守り役として居ることである
魈斗は少し離れた所から、彩奈とその好きな人とのデートを見守っている。魈斗が彩奈におすすめした場所、ゲームセンターへと向かっていった。好きな人はどうやらゲームセンターが好きらしい、なら良いアイディアだったかもしれない
(その好きな人がゲームセンターを好きなら、俺、ナイスアイディア!さあ、UFOキャッチャーへGO)
「魈斗先輩?」
「冴橋君じゃないか、何をやってるんだい」
「・・・きやぁぁぁっ!って隠れて!」
「あ、ああ」
2人を隠れさした
一瞬こちらを見たが、怪しまれていなかったのでセーフ、いきなり話しかけられた魈斗は叫んでしまった。彩奈にも一瞬見られて多分心配されたが、明日説明しておこう。
タイミング悪く鉢合わせてしまった、デートに楽しみすぎて、梨美は昼休みの事を覚えていないようだ。魈斗の叫びで2人に気付かれなくてよかった、気付かれたら、ストーカーと思われてしまうため、魈斗のやっている事はストーカーだが、見守り役だ
2人に事情を説明した
「魈斗先輩、なんか振り回されっぱなしで可哀想です………」
「大丈夫なのかい?冴橋君は振り回されっぱなしで」
「彩奈の幸せが見れれりゃ、それでいい。俺は見守り役としての役目は最後まで果たすつもりだから」
「魈斗先輩………」
「お前達もちゃん………んん、まぁ、仲良くしろよな、喧嘩なんてするなよ、相談は大丈夫だが、んじゃ、またな」
隠れ場所を変えて、梨美と先輩の元から去っていった。笑顔で別れを言ったが、魈斗の笑顔は少し、辛い感情が乗っていた感じがしていた。それに気が付く、梨美と先輩は何も言えなかった
過去に何があったのかは誰も知らない、誰にも知られたくない、魈斗は海音でも知らない過去を持っている、知られたくない過去を持っている。理事長にも過去について隠している、ずっと話さないでいるため、お母さんは知らない
幸せの裏には必ず、悲しみはある
このことは必ず起こる、起こるからみんなには幸せでいて欲しい、だから俺は相談を受けて、サポートしている
「…………思い出しちまったな、彩奈はっと………お、楽しそうにしてて何よりだ」
彩奈と好きな人はUFOキャッチャーで取って喜びあっている、過去を思い出し、辛そうな顔をしながらも見守っている魈斗。この辛さは多分一日くらいで消えるだろう
辛いからって彩奈達にぶつけてはダメだ、傷付けてしまうし、迷惑かけちゃうし、多分気付かれる。なんかあったんだって、何も知らない方がいい、知らない方が幸せになる。だから聞かない方がいい、聞かないでくれ
(そのまま、幸せで居てくれよ。彩奈、梨美も。海音は一足遅かったが、でも笑顔にさせられた。特に2人はそっちの事に集中して欲しい、俺を気にしてちゃ、好きな人にバレちまうからな………どうか、幸せでいられますように)
その日も何も無かった、ただ幸せな時間を送っていた
それだけでいい、チャンスはいくらでもある。今は2年生だから、まだ一年もある
幸せは必ず起きる、悲しみは俺が無くす、悲しみが無いように俺がサポートして幸せにする
その物語でいいんだよ、それでいいんだよ
魈斗は近くの公園で、暗い中ブランコを漕いでいた
「魈斗?まだ帰ってなかったの?」
「ん……?彩奈か、あいつは?」
「もう解散したよ?近くに魈斗が居なかったから、探しに来た」
「そっか」
「どうしたの?魈斗、なんか暗い顔してるよ?」
「………んーん、大丈夫。さ、帰ろうぜ」
「う、うん………」
彩奈には本音を話さなかった、こんな事を話して誰が幸せになる、誰も幸せにならない、幸せになる選択を取るには余計な事を話さなくていい。話さない方が幸せと繋がる
幸せになるのは俺以外の奴でいい、俺は幸せになることを求めてないし、要らない。だから話さなかった、聞かれたら、話を逸らす、余計な事を話して、暗くさせるのは良くない。話さない、話したくない。平和だ
あぁ、平和だろ?それが一番
(過去なんて話さない方が楽なんだよ、楽で自由なんだ。こう、トラウマを自分に再構成すると、感情が変になるからやめとくか)
「どうかしたの?なんか考え込んでそうな顔してるけど」
「大丈夫だ、何もない」
「魈斗、なんかあったら話してよ?」
「おう、ちゃんと話すさ」
嘘を隠し通すのはこんなにも辛くて、重い事なのだろうか。聞かれても話さない、嘘を隠し通す、それでいるつもりである魈斗、誰にも話さない、それが一番いい
そしてそのまま、解散して
朝を迎えた
寝れなかった、寝れるはずが無い
「はぁ………最悪なトラウマだよ、本当………」
起き上がる
「うし、学校行きますかね」
学校に行き、いつも通りに授業し、授業終了後
いつも通りにぐったりする
「今日もグッタリしてるね、魈斗」
「授業はとんでもなく、疲れるからなぁ………」
「分かるよ、僕も疲れることあるから。ねえ、魈斗、昨日元気無かったけど、それはもう大丈夫なの?」
「それは………聞かないでくれ」
「どうして?何か言えない理由とかある?」
「…………」
過去の事は掘り返したくない、思い出したくもない。あんなトラウマの出来事なんて言いたくもないし、聞きたくもないはず。幸せは絶望でもあるんだって、それは俺だけ知っておけばいい
不幸なんて味がしないんだから、聞いても仕方がない
聞いたら、不幸になる
味がする幸せの方がいいじゃないか、幸せを
「魈斗?大丈夫?」
ガタッと席を立つ
「ごめん、ちょっと今日は、、、、帰るわ」
「え?あ、うん………お大事に………」
「………ああ」
逃げるように去っていった
無駄に迷惑がかから無いように
今はこれでいいんだ
そしてまた明日、過去を忘れて、また明日、笑顔で挨拶をしよう