3話 無意識にやってしまうこと
翌日の昼休み
授業が終わり、昼休みとなった。授業がダルすぎて半分聞いていなかった、授業が終わった後、直ぐに魈斗はぐったりと机に倒れ込む
「どひぁ………疲れたぁ………」
「ふふ、お疲れ様。魈斗、今日も半分聞いてなかったでしょ?」
「だってダルいんだもん………はぁ………」
「それで学年一位だもんね、凄いよ魈斗は。テストが終わった後、みんな悔しがってた」
「なんか泣きながら、勉強教えてくれーとか言われてたが、ぼっちだから無理って断ったんだよぉ………」
そう魈斗は授業を聞いていなくても、勉強していなくても、学年一位になってしまう、とんでもない子であった。テストで毎回一位を取ると、男子に泣きながら勉強を教えてくれーと言われるが、ぼっちだからそういうのは慣れていなかった。
そう慣れていなかったため、断っていた。断ったら諦めてくれた。だが聞いてくれ、魈斗は学年一位を取っても人気にはならず、友達も出来ずにいた。友達にすらなってくれない、だから毎回ぼっちである、ぼっちだから一人で勉強している事もある
だが唯一友達になってくれたのは彩奈であった
「絶対一位取れ~とか親に言われたりしてるの?」
「そうだなぁ……それは無かったな、母さんは何位でも喜んでくれてた、何位でも褒めてくれたんだ」
「へぇ~魈斗のお母さん見た事ないけど、何してる人なの?」
「ん?理事長」
「え?理事長?」
「ああ、理事長」
そう、魈斗のお母さんはこの学校、青楼高校の理事長であった。何故みんな、知らないのかと言うと、魈斗が自分から目立ちたくないからと、お母さんに言っているそうだ。だからみんな、魈斗のお母さんが理事長だという事は知らない
友達である、彩奈ですら知らない。唯一知っている人物は小学校からの幼なじみの海音であった、海音だけが理事長の息子だと知っていた、その他は知らない。
目立ちたくないから知られていない、そんなムスコンである理事長は知らせていいと言っているのだが、魈斗が断っている
「理由は多分、目立ちたくないから?」
「当たり、だって話したら目立つだろ?嫌なんだよぉ………目立つなんて、ぼっちで居たいし」
「ぼっちって………僕が友達でしょ?それとも友達じゃなかった……?」
「な訳無いだろ?彩奈が居ない時の話だ」
「ほっ………良かった」
彩奈の前で失礼な事を言ってしまった、彩奈という友達が居るのにぼっちと言い張ってしまったが、それは彩奈が居ない時の話である。彩奈は唯一大切な友達である
友達というのはあまり好まないが、彩奈だけは友達と言っていいだろう。だがあまり失礼なことを言いすぎると友達を失ってしまう、それを気をつけて今後は言わないようにしよう。人前ではあまり素直になれない、接し方があまり分からない
だから失礼なことを言ってしまう、気をつけよう
すると………
ガラガラッと勢いよく、教室の扉が開く
「せんぱーーい!」
「げっ…………」
「あれって………真名城さんだよね?ってあれ?魈斗?」
「しーーーっ、見つかったらまずい」
名前 真名城 梨美
髪色 赤色
後輩である、先輩である魈斗によく絡んでくる。絡まれたくない魈斗は隠れている、何故絡まれたくないのか、何故、魈斗は隠れているのか、それはもう分かりきっていることだ
無視したら、上目遣いで会話をしてこようとしてくる、見つかったら、嬉しそうに会話してくる、恋愛相談に乗ってくださいとか言ってくる、めっちゃ目立つであまり関わりたくない人である、関わったら絶対に目立つ、目立って噂される
だが魈斗の隠れ術は甘かった
「魈斗せーんぱいっ!みーつけた!」
「最悪!甘かったぁぁぁ!」
「あはは………」
「先輩………一緒ご飯食べませんか………?」
(上目遣いだ、くそう、断ったら本気で落ち込むんだよ、こいつ)
後輩である、梨美の上目遣いには勝てない魈斗であった。上目遣いで頼み事をした時、一度断ったことがあるが、その時、梨美は本気で落ち込んでしまい、アワアワしていた魈斗は仕方なく、受けてやった。今後無いように気をつけている
3日前からこうやって教室に来て、ご飯に誘って来ることが多い、みんなには驚かれている。ぼっちである、魈斗が誘われて驚くのは多分、当たり前だろう。これも断ってしまうと、また多分、落ち込んでしまう、だから魈斗は
「仕方ねぇな、屋上で飯食うぞ。彩奈も居るが、いいか?」
「はい!あ、先輩も居ますけど大丈夫ですか?」
「あ~、あの人な。分かった分かった、良いぞ」
「やった~」
「甘いね、魈斗は」
「うっせ」
彩奈、魈斗、梨美、先輩で屋上でご飯を食べることにした、その先輩は梨美の好きな人である。梨美からよく聞いているため、知っている。本当に恋愛相談ばかり受ける
彩奈、魈斗、梨美、先輩は屋上へ向かった、何故屋上を選んだか、ぼっちには一番心地良い場所だからだ。誰も来ない、誰にも邪魔されない空間だからだ。だから屋上を選んだ
ちなみにだが、先輩という人とは面識があるため、初対面ではない、だからごもごもすることは無い
屋上
「すまないね、冴橋君。梨美のわがままを聞かせて」
「謝るこったないよ、なんだかんだ、お前と梨美と居るの、楽しいしな」
「ありがとう、冴橋君」
「気にするな、さて、食べようぜ………ってもう弁当を開いてんのかよ!はぇよ!?」
「魈斗先輩が作ったんですか?」
「違うよ、母さんが作ってくれたんだ」
いつもは魈斗が作っているのだが、今日は何故か母さんが作ってくれた。だいぶ珍しい事だが、久しぶりに作ってくれたのは嬉しかった、久しぶりに作ったのに中身は凄い美味しそうである
理事長である、魈斗のお母さんはこっそり料理本を学校まで持っていって、鈍らないため、勉強していたらしい。だがこのことは魈斗に内緒にしているため、魈斗は知らない。裏で鈍らないための勉強をしている事が
弁当はおせちだ、みんなで食べることがバレていた、いや読まれていた、お母さんに
「どうやら、読まれていたみたいだね?冴橋君」
「はぁ………よく読まれるんだよ、俺の行動が」
「食べましょうよ!おせち、美味そうです!」
「食べるか」
「僕がよそってあげるよ、みんなは自由にしていいよ」
「おう、サンキュ」
理事長side
理事長室で料理本を読んでいる
「うふふ、気付いたかしら?魈斗の事はなんでも分かるのよ、張り切っておせち作っちゃったわ、うふふっ」
名前 冴橋夜宵
髪色 紺色
盗聴器でも付けているんじゃないかってくらい、恐ろしいほどに読まれる魈斗。母親だからなんでも分かるかもしれないが、なんでも分かりすぎて逆に怖いくらいだ
張り切りすぎておせちを作ったが、おせちは大好評であった。後輩である、梨美はおせちに釘付けであった。みんなで食うのならおせちが一番良いと思った理事長は張り切って作った
そして理事長は再び、料理本を読み始める
魈斗side
お昼ご飯、おせちをみんなで食べ終わった。めちゃくちゃ美味かった、みんなも美味しいと言いながら食べていた。梨美は食べることにめっちゃ集中していた、どうやらおせちを気に入ったらしい
ご馳走様をした
「ありがとうと、君のお母さんに伝えておいてくれないかい?」
「ああ、伝えとく」
「魈斗先輩!美味しかったです!」
「ちゃんと伝えとくな………あ、梨美、お前、唇の横にケチャップ付いてるぞ」
「はぇっ………!はぅっ」
「取ってやるから、じっとしてろ」
「は、はい!」
ハンカチを取って梨美の唇の横についているケチャップを拭いてやった、拭いてあげた後、梨美は顔を赤らめている。魈斗は自分が何をやったのか、ようやく気付いた。何をやっているのだろうかと気が付いた、魈斗は顔を逸らした
先輩と彩奈はニヤニヤしている、そのニヤニヤ顔でこちらを見ていた。完全にやらかしてしまった、人前で恥ずかしいことをやってしまった、しかも梨美の好きな人の前でやってしまった、やべぇ所を見せた
そして魈斗は顔を真っ赤にしながら、屋上を去った
「あ、先輩っ」
「なるほどね、無意識であれなら、冴橋君はとんでもないね」
(魈斗は無意識でやって、真名城さんは嫌がっていなかった………これはこれは興味深い、展開だね)
彩奈はこの展開に興味深いと興味を持ち始めた
先輩はこの梨美の反応に気付き始めた
魈斗はやってしまったとぶつぶつ言いながら、少し顔を赤らめて授業を受けていたとのこと