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第83話 超難易度の一石二鳥!?

「駄目です、瑠奈先輩。ここにもありません……」

「ワタシの方も同じだよぉ……」


 一悶着あったものの、無事に二人分の【アサシンズ・ラプトル】の魔石――計十個を手に入れた瑠奈と鈴音。


 あと第二次試験に必要なものは二つ。

 トレイポロニアの実とAランクモンスターの巣の撮影・マッピング。


 それらを同時進行で探しながら探索を続け、広大な樹林をかなり奥まで入っていったところでようやくトレイポロニアの実がなる木を発見した。


 しかし、そのどこにも実が見当たらない。


「もう他の受験者に全部取られたってことはないよね?」

「それは……ない、と思います。他受験者の妨害を考えるならともかく、必要なのは一人一粒。仮に受験者全員が既に取っていったと計算しても、あまりある数が実っているはずです」


 確かに、自分達以外の受験者を合格させまいと妨害工作を図るならこの事態も考えられるが、試験の性質上それは考えづらい。


 合格者数に上限がないため、他の受験者を蹴落とす理由がないのだ。


 そんなことをしている暇があれば、一刻でも早く自分の分の素材を持ち帰って合格を掴み取れば良い。


「じゃあ……何でこんなことに……」

「わ、わかりません……」


 瑠奈と鈴音が向かい合って表情を曇らせる。


(どうしたら……このままじゃ、合格出来ない……!)


 瑠奈が歯噛みしながら辺りを見渡した。

 視界を埋め尽くす、草木。


 遠くの方ではモンスターの鳴き声がする。

 恐らく、狩りでもしているのだろう。


(……ん?)


 そこまで考えて、瑠奈の脳裏に何かが閃いた。


 ここはダンジョン。

 魑魅魍魎が跋扈する、弱肉強食の世界。

 弱者は強者に食われ、強者も寿命を全うすればダンジョンに還る。


 そこに存在するのは、ダンジョンの外と変わらない――食物連鎖。


「あっ!!」

「な、なんですか……?」


 突然瑠奈が声を上げたので目を丸くする鈴音。

 瑠奈はそんな鈴音の両肩に手を乗せて、瞳をキラキラさせていった。


「肉を喰らうモンスターがいるなら、植物を喰らうモンスターもいる。だから、トレイポロニアの実を糧にするモンスターもいるんじゃない?」

「……っ!? なるほど!」


 瑠奈の推測に、鈴音が表情を晴らした。


「何かのモンスターでいない? こう……トレイポロニアの実を収集するような……」


 閃きはあった。

 推測を立てることも出来た。

 しかし、瑠奈には圧倒的にダンジョンに関する知識が足りない。


 精々、第一次試験突破のためにその場しのぎで頭の中に知識を叩き込むくらい。


 単なる付け焼き刃。


 だから、瑠奈は頼る。

 学校では瑠奈の方が先輩でも、探索者歴は鈴音の方が長い。


「そ、そうですね……」


 鈴音は顎に手を当てて思考を巡らせる。

 瑠奈の期待に応えるべく、脳内にあるダンジョン知識の海を泳ぎ、潜り、探す。


 そして――――


「このダンジョンに生息しているモンスターで、森の木の実を食し、収集するのは三種類」


 鈴音が人差し指を立てる。


「まず、Eランクモンスター【フォレスト・スクワール】。リスのようなモンスターで木の実を食します。ですが、身体が小さいのでこの広大な樹海の中から探し出すのは難しいです」


 続けて、鈴音は中指を立てた。


「次に、Cランクモンスター【ハイディング・バード】。こちらも木の実を食べますが、その名の通り潜伏能力が非常に高いです。向こうから襲い掛かってきてくれるならまだしも、こちらから見付け出すのは至難でしょう」


 そして、最後に躊躇われるように立ち上げられた薬指。


「最後は、一番見付けるのは現実的……というより、試験の課題的に発見する可能性が極めて高いモンスター……【ドライアド】。Aランクモンスターです」

「【ドライアド】……Aランクモンスター……」


 険しい表情を浮かべる鈴音に対し、瑠奈はゆっくりと金色の瞳を見広げていった。


「はい。間違いなく、試験の課題である『Aランクモンスターの巣の撮影・マッピング』は、【ドライアド】のことを指しています」


 鈴音の説明に瑠奈は「なるほどぉ……」と呟きながら、その名前のイメージを脳内に浮かび上がらせていた。


(ど、ドライアドってアレだよね? 木の精霊的な……美少女だったり、美人のお姉さん!!)


 当然、浮かぶのは二次元コンテンツ引っ張り凧のビジュアル。


 植物を模した緑の衣を纏い、裸足で、穏やかで可愛らしい性格。


「……俄然、やる気が湧いてきた……!」

「え、瑠奈先輩?」

「そうと決まれば出発だよ、鈴音ちゃん!」

「ちょちょちょ……!? 何が決まったんですか!? 今何か決まりました!?」


 瞳を輝かせた瑠奈に手を引かれる鈴音は、慌てた口調で尋ねる。


 すると、瑠奈は構わず樹海の奥へ奥へと向かっていきながら、明るく答えた。


「決まってるじゃん! その【ドライアド】を見に行くんだよ! 巣が見付かれば、トレイポロニアの実も集められてるかもしれないしねっ!」


 いつになくテンションの上がった瑠奈。


 無理もない。

 もとはと言えば可愛いを追求するために始めた探索者稼業。


 可愛い自分が物騒な武器を持ってダンジョンを駆け巡るそのギャップ萌えの素晴らしさを広めることに、全力を尽くしてきた。


 そんな中、今このダンジョンに【ドライアド】――美少女もしくは美人のお姉さん系モンスターがいるかもしれないのだ。


 可愛いの道を追求する者として、見過ごす選択肢はない。


(これまで人型のモンスターとは出会ったことないけど……あはっ、一体どんなだろう~!!)


【ドライアド】を発見して、巣の撮影とマッピングだけでなく、トレイポロニアの実も手に入れることが出来れば、一石二鳥だ。


(いやっ、【ドライアド】の姿を見れたら一石三鳥かも……!!)


 瑠奈の足取りは、ここがAランクダンジョンと思えぬほどに軽かった――――

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 >ドライアドは美女に決まってんだろJK! ホントかなぁ…? 海外のファンタジーものだと『樹木関係の精霊やモンスター→カートゥーン風のバタ臭い感じだったり、マンドラゴラやムンクの叫…
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