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第79話 天才魔法師、本領発揮!!

 鈴音が瑠奈の前で始めて見せる召喚・創造系スキル《クリスタル・ヴァルキリーズ》。


 自身の身を守る結晶の守護天使。

 保有する魔力容量が許す限り何体でも生み出すことが可能で、自身の魔力を各個体へ自由に割り振ることができ、その量によって個体の戦闘能力を調整することが出来る。


「私の魔力容量は全快で8500。二体の瑠奈せんぱ――コホン、天使の召喚に500の魔力を消費し、更にそれぞれの天使に2500の魔力を割り振って強化。単騎で並みのBランクモンスター程度の戦闘能力は有しています」


 突如鈴音の前に姿を現した二体の《クリスタル・ヴァルキリーズ》を警戒し、今にも飛び掛かろうとしていた【アサシンズ・ラプトル】四体が動きを止める。


「さて……こうして前衛が二体出来た以上、【魔法師】が動くに不足はありません……」


 スッ、と長杖を頭上に掲げた鈴音が、紺色の瞳に灯した鋭利な眼光で、眼前に群がる四体のラプトルを貫く。


「精々足掻け。そして、死ね」


 鈴音の周囲に冷気が漂う。

 それらが宙で結晶化していき、徐々に大量の鋭利な氷柱を形成していく。


 ラプトルもまたそんな鈴音の準備を黙って見逃すことはなく、一度止めた足を四体一斉に動かし始めた。


 正面から二体。

 左右から一体ずつが回り込むように駆けてくる。


 そして、それに対して真っ先に動くのは二体の《クリスタル・ヴァルキリーズ》だ。


 長剣を携えたヴァルキリーが右手から来るラプトルを、両手にナイフを構えるヴァルキリーが左手から迫るラプトルを相手取る。


 空いた正面。

 そこから二体のラプトルが突っ込んでくるが、間合いは充分。


「《アイシクル・レイン》ッ!!」


 自身の周囲に生成した無数の氷の槍を一斉射出。


 同じBランクモンスターでも、鋼の強度を誇る鱗に全身を覆われた【アイアンスケイル・グレータースネーク】と違い、ラプトルには身を守る鎧はない。


 多少上下左右に動いた程度では避けきれないほどの広範囲に降り注ぐ氷柱の雨は、正面二体のラプトルをまとめて――――


 ズザザザザザッ!!


「「ギュアァアアア……ッ!!」」


 ――射殺した。


 その間に、両側面でもそれぞれ戦闘が繰り広げられている。


 右手から回り込んできたラプトルの正面に立ちはだかったヴァルキリーが、長剣を大上段に構える。


 突っ込んでくるラプトルの姿を捉え、力強い踏み込みと同時に一気に振り下ろす。


 当たれば頭蓋を粉砕する一撃なのは間違いないが、予備動作が大きいため、寸前のところでラプトルに身を捻られて躱される。


 ラプトルはそのカウンターとして、長い尻尾を振り払い、ヴァルキリーの横腹を打ち据えた。


 大きく体勢を崩し、足裏を地面に滑らせるヴァルキリー。

 しかし、決して少なくない量の鈴音の魔力が分け与えられているためか、はたまたその姿形がどこかの美少女大鎌使いに似ているからか、すぐに体勢を立て直す。


 グッ、と地面を踏み込んで得られた反力を活かし、開いた間合いを一気に詰める。


 長剣を腰に引き付けるようにして構え、ラプトルが迎え撃とうと振るってきた前脚の長い爪をしゃがんで回避。


 生まれた隙を見逃さず、体勢を落としたまま長剣を横薙ぎに一閃。


「ギシャァアアア!?」


 ラプトルの両足を切断し、立ち上がる力を奪った。

 そして、地面の上でのたうち回るラプトルを無感情に見降ろし、逆手に持ち替えた長剣で、その頭蓋を貫き、トドメを刺した。


 また、同時進行で左側では対照的に機敏な戦闘が繰り広げられており――――


 シュッ――ピュッ――!!


 ラプトルが振るう長い尻尾を飛んで躱し、宙で身を捻った勢いでナイフを煌めかせ、浅い切り傷を刻む。


 また、ラプトルが突っ込んできたところを身体捌きで回り込み、すれ違いざまにナイフで身体に切り込みを入れる。


 一撃一撃の威力は大きくないが、両手にナイフを構えるヴァルキリーは、機敏な動きで着実にラプトルの身体を刻んでいく。


 ひたすらに体力を消耗させられ、動きが鈍っていくラプトル。

 それでも、やはり生き物の性か、死んでたまるかと抵抗し続け、致命傷を与えるには至らない。


 しかし、それでいい。

 ヴァルキリーは後方に飛びながら両手のナイフをビュッ! と投擲し、狙い違わずラプトルの両目を突き刺し、視界を奪った。


 得物を失ったが、それはもう役目を果たしたからだ。

 時間稼ぎという役目を。


「《アイシクル・エッジ》ッ!!」


 ヴァルキリーの後ろでは、鈴音が長杖の柄を地面についていた。


 突然目の前が真っ暗になり、むやみに動けなくなったラプトルの足元から、鋭い氷柱が飛び出す。


「グギャァ……!!」


 氷柱は容赦なくラプトルの腹を突き刺し、背から貫通。

 スリーカウント数える間には、ラプトルの息は止まり、黒い塵となって宙に散っていった。


 この第二次試験を通過する条件の一つが【アサシンズ・ラプトル】の魔石五つを持ち帰ることなので、これで一人分の魔石を用意できたことになる。


 しかし、鈴音は周囲に押している【アサシンズ・ラプトル】の魔石には目もくれず、召喚した《クリスタル・ヴァルキリーズ》を宙に溶かすように消してから、瑠奈のもとに駆け付けた。


「瑠奈先輩、怪我はっ……!?」

「え、あぁ、うん。治癒ポーションのお陰で傷は塞がったけど、毒はまだちょっと残ってるみたい」


 瑠奈は「よいしょっ」と言って木の幹を支えに立ち上がってみる。


 決して命に関わるほどの毒ではない。

 ただ、身体が若干麻痺する感覚があるだけ。


 治癒ポーションのお陰でもうかなり毒も抜けているが、それでもやはり万全に行動できる状態ではない。


「では、今日の探索はここまでにしましょう」

「でも、まだ素材が全然……」

「万全に動けない状態での探索は――まして、Aランクダンジョンの探索は危険です。それに、もうすぐ夜になりますから、明るいうちに夜営場所を確保しましょう」


 鈴音がそう計画立てて、まだ若干足元がおぼつかない瑠奈に肩を貸す。


「ありがとね、鈴音ちゃん」

「いえいえ全然。むしろ、私の方こそラプトルの奇襲から庇ってもらって……ありがとうございます、瑠奈先輩」


 今日の探索に一区切りつけて、瑠奈と鈴音は寄り添い合いながら夜営場所を求めて樹海を再び歩き出した――――

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