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第104話 Sランク【狂姫】の紹介!?②

「それでは引き続き早乙女瑠奈さんを深掘りして参りますが……いやぁ、やはり注目すべきはその圧倒的な成長速度だと思うんですよね!」


 探索者歴一ヶ月でEランク、更にその一ヶ月後にはDランク昇格という瑠奈の経歴を見ながら、女性キャスターが前のめりになりながら言う。


「ソロでの探索は基本的に効率が悪いとされてますよね? 探索において単純に目の数が少なくなりますし、戦闘でも役割分担出来ないですから。それでもこうまで瑠奈さんがハイペースで実力をつけていくことが出来たのはどうしてなんですか?」


 一般的な探索者の通念を提示した上で、それを真っ向から破壊するような瑠奈の探索方法の秘訣を尋ねるキャスター。


 質問を受け、瑠奈はにこやかに笑った。


「簡単です。毎日ダンジョンに潜ってモンスターを狩りまくれば良いんですよ!」


 それはまるで女子トークの中で何のコスメを使っているかと聞かれて答えたときのようなテンションだった。


「へぇ、なるほど毎日――えっ、毎日!?」


 瑠奈があまりに平然と答えるものだから、キャスターも流されて納得しそうになったが、やはり引っ掛かりを覚えないわけもなくすぐに驚愕へと変わった。


「た、探索は体力だけでなく精神的な疲労も大きいですから、ほとんどの探索者は週に三回から五回くらいを目安に探索を行うものなんですが……」

「あっ、そうなんですね~。でもまぁ、私の場合、学校帰りにちょっと寄って帰ればそう手間でもないですし」

「だ、ダンジョンはお洒落な喫茶店でも何でもないですよぉ……!?」


 決して相容れないであろう価値観の差に、キャスターは苦笑いを禁じ得ない。


 しかし、そんなキャスターの戸惑いなど露知らず、瑠奈は更に常軌を逸した効率的なレベリング方法を提示する。


「でもまぁ、一番手っ取り早いのはやっぱりジャイアントキリングですかね~」

「じゃ、ジャイアントキリング……!?」


 もう何度目になるかわからない驚きをキャスターが見せたとき、スタッフによって『映像あります』と書かれたカンペが出される。


「ど、どうやらそのジャイアントキリングの映像があるそうなので、実際に見てみましょうか~!」


 カンペの指示を受けたキャスターの進行の下、モニターに映像――記念すべき瑠奈の初LIVE配信を一部切り取った映像が流される(第12話~第14話)。


 Dランクダンジョン内でイレギュラーに出現したBランクモンスター【アイアンスケイル・グレータースネーク】と、当時まだEランク探索者の瑠奈の無謀とも思われる死闘。


 全身を覆い尽くす鋼鉄の鱗に文字通り歯が立たず、何度も何度も吹っ飛ばされてはその度に怪我を負っていく瑠奈。


 それでも工夫を凝らして立ち回り、最終的には左腕を食い千切られながらも初のスキルとなる《バーニング・オブ・リコリス》を発現させて勝ち切った大逆転劇。



○コメント○

『懐かしいなぁ~』

『リアルタイムで見たかったぁ!』

『これルーナの初LIVE配信だろ?』

『初めてのLIVE配信でこれは放送事故すぎるw』

『リアタイで観てたけど、マジで生きた心地がしなかった』

『今ではすっかりルーナの日常だけどなw』

『頭おかしいんか!w』

『これ切っ掛けで【迷宮の悪魔(ダンジョン・デビル)】って呼ばれるようになったんよな確か』

『当時大反響だったもんな』

『ワイもこのLIVE配信でルーナのこと知った』

 …………



 寄せられるコメントも賑わいを見せる中で、モニターに映し出されるLIVE配信映像が終了し、再び瑠奈とキャスターに焦点が当てられる。


「わぁ~、懐かしいですね~!」

「えぇっと、まるで思い出を振り返って感慨深くなっているようなテンションでいられる瑠奈さんへのツッコミは置いといて……これが【迷宮の悪魔(ダンジョン・デビル)】の物語の始まりなんですね~」


 こんな無謀極まりない死線を何度も潜り抜けてきたからこその、他の追随を許さない圧倒的な成長速度――キャスターは分析した結果をそう簡潔にまとめて口にした。


「そして、歴一年三ヶ月では見事Aランクモンスター【ヴォルカニック・フレイムドラゴン】を討伐し、Aランクダンジョンを踏破されたんですよね!」


 当時瑠奈はBランク探索者。

 まだ探索するには早いAランクダンジョンをこともあろうにソロで攻略していき、ボスモンスターとも呼べるAランクモンスターを討伐。


 それこそ初LIVE配信の【アイアンスケイル・グレータースネーク】戦を彷彿とさせるような絶体絶命のピンチにも陥ったが、最後の最後には持ち前の狂気的な根性で勝利の糸を手繰り寄せて見せた。


「いやぁ、強いモンスターに限って身体が硬くて刃が通らないんですよぉ。ドラゴン戦でも苦労させられました」

「あはは、苦労で済むんですからやはり瑠奈さんは凄いですね……」


 普通は苦労したところで刃が通らないまま返り討ちに遭うだけなんだけど――というマジレスは、胸の内だけに留めておくことにしたキャスター。


『ツッコミを飲み込んだぞキャスター』『大丈夫。言わなくてもわかる』『俺達はわかってるぞ!』等々、そんなキャスターの心内を察してか、コメント欄には視聴者らの共感の声が寄せられていた。



 そして、これから小一時間、瑠奈のモデル活動やAランク昇格試験などについても深掘りしていき、最後にはSランク探索者として今後もこれまで以上に頑張って活動していくという意気込みを宣言してから、番組は終了した――――



◇◆◇



「早乙女さんテレビ見たよ~!」

「瑠奈ちゃんほんっと大注目じゃん!」

「おいおいそりゃそうだろ!? なんたってダンジョン・フロート七人目のSランク探索者だぜ!?」

「加えて最速記録だもんな~!」


 後日、瑠奈は学校に登校するなり、すれ違う生徒やクラスメイト達から早速特集番組の話題を持ち出されていた。


「あはっ、みんな大袈裟だよ~。それに、ワタシがここまで来られたのも配信を見て応援してくれてるみんなのお陰でもあるんだからさ」


 そう言ってニコッ、と微笑み掛けると、男子達が複雑そうな表情を浮かべて頭を抑える。


「くっ、可愛い……!」

「動画で見る瑠奈ちゃんとの寒暖差で風邪引きそう」

「惚れそうだけど惚れてはいけない気がする……」

「瑠奈ちゃんとルーナちゃん実は別人なんじゃ……!?」


 複雑な男心を抱く男子生徒らの様子に、女子達はやや呆れたような視線を向けたが、すぐにその目を瑠奈に戻す。


「ねぇねぇ、Sランクになっても配信者続けるんでしょ?」

「なんか新しいこととかしていくの~?」

「私めっちゃ楽しみにしてんだけど!」


 期待に満ちたキラキラとした瞳をいくつも向けられて、瑠奈は「そうだなぁ~」と顎に手を添えて少し考えを巡らせた。


「まぁ、基本的にはこれまで通りダンジョンに潜って探索の様子を配信しようかな~って思ってるけど、考えてるのは、特定のモンスターを倒すコツみたいな攻略動画も作ろうかなって」


 珍しく真面目な表情で今後の方針を語る瑠奈だったが、だからこそ話を聞いていた周りの学生らはとても口に出来なかった。


(((いや、それ誰にも真似できない攻略動画だろ……)))


 そんな見事なまでの心境の一致がここにあった。


 だが、瑠奈は気にもせず「あっ」と声を上げると楽しそうに笑顔を浮かべると――――


「でもまずはやっぱり、潜りたいよね! Sランクダンジョン!」

「――だ~め~で~すっ!!」


 そんなことさせてたまるかとばかりに声を上げてやって来たのは、一学年下の鈴音。


「もう! 先日の番組関連の話題で瑠奈先輩が集られて困ってないかと心配になって来てみれば……本当に心配すべきは瑠奈先輩の頭の方でした!」

「えぇ~! だってSランクになったんだよ? Sランクダンジョンにだって潜りたいよぉ!」


 一体どちらが年上なのかわからない構図で、鈴音は駄々をこねる瑠奈を咎めるように言う。


「駄目なものは駄目です! というか、SランクダンジョンはSランク探索者だからって好き勝手に入れるところじゃないんです! そういうギルドのルールなんです!」

「え、そうなの?」

「……Sランク探索者認定にあたって、その辺りの説明もギルドからされているはずですよ、瑠奈先輩?」


 瑠奈が人の話を聞かないのは今に始まったことではないので、鈴音は驚きもせず、ただただため息を吐く。


「まぁでも、きちんとした手続きを踏んで条件さえ満たせば入れますから、あとで私から改めて説明します。詳しいことはお姉ちゃんに聞けば良いですし」

「やった! やっぱり鈴音ちゃんは頼りになるなぁ~! 大好きっ!」


 パシッ、と鈴音の両手を包み込んで握る瑠奈。

 鈴音は突然のことにみるみる顔を赤く染め上げていく。


「だっ……だだだだいっ、好き……!?」

「ん、鈴音ちゃん?」

「瑠奈先輩が、わわわ私のこと……す、すすす――」

「え? ちょ、鈴音ちゃん? お~い、鈴音ちゃ~ん!?」


 Sランクダンジョンに入れるようになるのは、もう少し先のことになりそうであった――――

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です、もう完全に鈴音に手綱を握られてますね、でもやっぱりルーナは何かをやらかすと確信が持ててしまう
更新お疲れ様です。 >Sランクダンジョンには勝手に入れません 鈴音「ダメだこの先輩、早くなんとかしないと…!!」 まさにこんな感じですねww彼女という手綱(?)がついてなかったら、絶対勝手に入って…
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