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人間不信の俺が恋なんてするわけがない。  作者: 長谷川雫
第一章

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75 余韻は今日という日が終わるまで

 楽しい予定だったはずのパーティは質問攻めの気まずさが溢れるパーティと変わったが食事が終わっていくと同時に終わりを迎えた。


結局朝比奈さんがした質問に対してはある程度の許される回答をしなければ次に進んでくれないのでほぼ強制を強いられたのだが....


とはいえ、質問にもいろんなバリエーションがあったのでこちらも楽しかったのは否めない。


「柊くんの事少しは知ることができましたね」


「そりゃあ、ほぼ強制で答えさせられたからな。なんなら回答が偽りである可能性も考慮して何度も聞いただろ」


「バレちゃってましたか。結構上手くやっていたつもりだったんですけどね」


可愛い顔をして恐ろしいことを言っている朝比奈さんにジロリと視線を向けた。


「でも、最初の質問に可愛いって返してくれたのは意外でしたね」


確かに最初は驚き誤魔化そうとしたが、別に嘘をつく必要もなかった。


俺は朝比奈さんに対して可愛いなと思うことが何回もあったのだ。


「女神様?って聞いたくらいには思ったことがあるってことだよ」


「残念ながら女神様ではないですけど。あの答えは聞けてよかったです」


満足そうに笑う朝比奈さんを見て飲み物を口に運んだ。


「でもそうですね」


徐に話し始める朝比奈さんの言葉に耳を向ける。


「やっぱり、今日みたいな髪型で学校行くのはどうですか?せっかく整ったお顔ですし、少しは見えてる方が良い印象ですよ」


「さっきも言ったけど....」


「モテたい訳ではないでしょう?印象が悪いといわれないことも言われてしまうことが多々あるじゃないですか。柊くんはそもそも人と関わりたくないかもしれませんが何かと印象が良いというのは良い方向に運べますよ」


「朝比奈さんの言う事はわかるけど....今から変にイメチェンに走ったとしてもヘイトがより集まるだけだと思うんだけど」


「だからこそ良いと思いますよ?今が大分敵意を向けられてますからね」


 今の現状がすでに敵意を向けられているし、クラスの人たちも俺なんか擁護したら変に飛び火しそうなどの理由から避けていそうだしな。


そういうのを取り入れるタイミングは今なのかもしれないが、流石に今すぐ実行する気にはならない。


「一旦考えておくよ。朝比奈さんの言うこともわかるから」


「検討してもらえると嬉しいですね」


朝比奈さんはどうやらだいぶ肯定的らしい。


中学生の時も言われた事あるなと思いつつ、容姿が整っている朝比奈さんまでに言われるとお世辞だと思っていても少し疑ってしまう。


「ち、ちなみに変なことを聞きますが....俺の顔って整ってるの....?」


自信がある訳でもないし、どちらかといえば悲観的なのだが朝比奈さん相手に聞いてみたくなった。


「そうですね。かっこよくも見られると思いますし、可愛いとも見られる中性的な整ったお顔だと思いますよ?」


「左様ですか....」


自分で聞いておいてあれなのだが中々に受け取りづらいものだった。


それに男に可愛い要素はいるのか....?など疑問が出てきてしまう。


「自分で聞いておいてその反応はどうなんですか」


「それは自分でも自覚してる」


「でも、そうですね。柊くんが髪型変えたりするのはこういう時だけだと同じマンションのよしみとして役得ですね」


「俺相手だと別にそんなことないだろ」


「そんなことないですよ。現に今日も驚きましたし、それに普段と違うところを見れるだけで新鮮な気持ちになります」


「自分で置き換えると何も思わないけど、月で置き換えると確かにそう思うことがあるな」


「そういうことですよ」


わかりましたか?と念を押すように指を向けられ大人しく降伏した。


 楽しい時間に終わりはつきものでこの時間もそろそろ終わりに近づく。


女性を長く家に止めるのもよろしくないしな。


「そろそろお開きにしようか」


「そうですね。長居しちゃってすみません」


「俺から誘ったんだから気にしないでくれ。むしろ付き合ってくれてありがとう」


空になったピザが入っていた箱をたたみさっきまでテーブルに広がった豪華な食卓はいつも通りになっていった。


その光景に少し寂しさを感じた。


「わざわざ片付けまで手伝ってくれてありがとう」


「お金を出していただいたのでこのくらいはしますよ」


「本当に気にしなくていいからな」


「次頼む時は私が出しますからね」


「じゃあ間をとって割り勘で」


不満げな表情を見せているがこれがいい落とし所だろう。


帰る支度を済ませた朝比奈さんと玄関へと向かう。


「今日はここで大丈夫ですよ」


「わかった。じゃあ家に着いたら連絡入れてくれ」


「過保護ですね。柊くんは」


「一緒に遊んだ後に何かあったら嫌だろ」


「わかりました。では、お邪魔しました」


朝比奈さんを送り出し、姿が見えなくなるまで扉から見守った。


 部屋に戻り静かになった部屋でソファーに横になる。


すると、メッセージアプリに家に着いたとしっかりと連絡がきたのでスタンプボタンを押して返信した。


そのタイミングでスマホの画面が着信に切り替わった。


俺はそのまま応答しスマホを耳にあてた。


『もしもし、久しぶりだな柊!』


電話の相手は先ほど公園で連絡を送った相手からだった。


『久しぶりだな。成』


電話の相手の名前は白石 成(しらいし せい) 小さい頃からずっと一緒に過ごしてきた親友だ。


久しぶりに聞いた声は変わりなく落ち着く声だった。


『思ったより元気そうだな。俺と離れ離れになっちゃったから毎晩泣いてるかと思ってた』


『なわけないだろ。逆にそうだったとしたらすぐに連絡するだろ』


『そうだぞ。全然連絡来なかったからちょっと心配はしてた』


 なんだかんだ心配してくれたみたいだ。


『最初から頼って電話してたら新生活の意味も半減しそうだったからさ』


『という事は上手くやれてるのか?』


『その逆だな、今絶賛敵意を向けられてめんどくさいことになってるよ』


『お前は本当にいつも何かに巻き込まれてるな。そういう星の元から生まれてきたのか?』


『それは俺が聞きたい』


 久しぶりに話した成との会話は弾み、気づけば一時間程経っていた。


『もう一時間経ったのか、時間の進み方怖いな』


成も同じことを思っていたらしく驚いていた。


『まぁ、久しぶりだったからな話すこともいっぱいあったよ』


『ところで柊くん彼女はできたかい?』


『そんな訳ないだろ』


藪から棒に聞いてきた成に呆れて返す。


『花の高校生活だぞ!仲良い女の子もいないのか?』

 そう言われ朝比奈さんの顔が浮かんだが少々言うのには憚られた。


『まぁ、同じマンションのよしみなら』


『まじか!可愛い?』


露骨にテンションが上がっているのがわかる。


『誰が見ても可愛いと言うぞ多分』


『なるほど、なるほど。柊はその子の事好きなんだな』


『なぜそうなった』


『はっきりと否定しないって事はーー』


その先を聞く前に俺は通話ボタンを切った。


「そんなわけないだろ。バカだな....」


そんなことを呟きながら、心地よい睡魔に身を任せて眠りについた。


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