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人間不信の俺が恋なんてするわけがない。  作者: 長谷川雫
第一章

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74 ピザと境界線

 家の前に着き、ここまで繋いでいた手を朝比奈さんは名残惜しそうに離した。


家の鍵を開けリビングまで一直線で入り、ここまで運んできた中々に重かった荷物を下ろす事ができた。


「朝比奈さんもお疲れ様。重かったでしょ?早く降ろしてゆっくり休んで」


「いえ、それより...私当たり前のように柊くんのお家に上がってしまいました」


 買い物した荷物もあったし別に普通なことでは?と思いつつも気にしているみたいだ。


「俺は別に構わないというか、荷物もあったし、それに手繋いでたからな....」


自分で言って少し恥ずかしくなった。


「それはそうですけど....」


朝比奈さんも恥ずかしそうに喋り後半は聞き取れなかった。


部屋は照れくさい空気感で満たされお互いにどこかよそよそしい空気が漂っていた。


「そうだ。よかったら朝比...いや、月も一緒に夜ご飯食べないか?もちろん俺の奢りだ」


俺は途中まで呼びかけた名前を飲み込み、彼女の希望通りに呼ぶ。


「な、なんですか急に。結局ずっと苗字で呼んでたのに....」


 予想していた反応と少し違ったが、名前を呼ばれるのは嫌ではないみたいだ。


可愛らしく拗ねているといったところだろうか。


「まぁ、二人でいる時くらいは、頑張ってみようかと」


「ばか...」


軽く小突かれた部分を大袈裟痛がっておく。


「それでどうかな?」


「お誘い嬉しいですけど、せっかく食器とか買ったのに使わなくていいんですか?」


「今からご飯を作るとなると朝比奈さんの負担がでかいから無しの方向で。一緒に食べるのがオッケーなら候補はこれだ!」


俺はポストに投函されていたチラシを二枚朝比奈さんの前に出した。


「えっと、お寿司とピザ?」


「月はどっちが好き?」


「ピザがいいです」


俺は選ばれたピザのチラシを朝比奈さんに渡した。


「遠慮せず好きなのを選んでくれ」


「ありがとうございます」


朝比奈さんはチラシを手に取り目を輝かせていた。


「朝比奈さんは出前とか頼まなそうだね」


「そうですね。覚えてる限りだと大分小さい頃ですかね」


「そっか。なら、尚更遠慮なんてしないで好きなの選んでくれ。トッピングも自由だ」


俺が笑って答えると、朝比奈さんも嬉しそうに笑ってくれた。


 時々見せる朝比奈さんの顔は過去に触れると見えてくる顔であり、俺とは理由は違うだろうが家族が関係している。


俺とは遠からず近からずといったところだろう。


それを聞き出す程には関係性は遠い。


たとえ近くなったとしても教えてくれるかは別だろうし。


「ちなみに一枚頼むともう一枚無料だから二枚選べるからな」


俺の言葉を聞き朝比奈さんは驚いていた。


「すごい太っ腹なサービスですね」


まぁ、今は頭を悩ますよりこうして朝比奈さんの反応を見ながらこの時間を楽しんだ方がいいか。


彼女を救いたいと思う気持ちは確かではあるが、朝比奈さんの笑顔を見るたびにその気持ちは濾過されていくようなそんな気分になる。


今笑っている朝比奈さんは本当に心からの笑顔なのだろうか....。


「柊くん....?」


「ごめん、ちょっとぼけっとしてたよ。決まった?」


「はい!決まりました!これとこれがいいです!」


「了解。じゃあ腹も減ったし注文しようか」


朝比奈さんが選んだピザにトッピングしたり、サイドメニューやドリンクも選び注文を終えた。


「結構な金額になりましたけど大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。それにパーティーの費用にしては安い方だろう」


「ふふっ...なんのパーティーなんですか」


「えっと、一ノ瀬家に食器が増えたパーティー?もしくは人間化パーティとかかな」


「この流れで健康的な生活を送って欲しいものです。でもパーティーは嬉しいですね」


一発程ジャブが飛んできたが結果的には喜んでもらえてるみたいで何よりだ。


 少しするとインターホンが鳴り出来立てのピザが届いた。


配達のお兄さんに支払いをしピザを受け取り、リビングへ戻る。


朝比奈さんが今日買ったお皿やコップを一度洗って用意してくれたらしく準備は万端だ。


俺は真ん中にピザを置き、朝比奈さんが見てるのを確認してから箱を開けた。


「あったかい内にたべようぜ」


「はい!」


「では、改めまして。パーティー開催だ」


俺が宣言すると朝比奈さんは俺の顔をじっとみつめていた。


「柊くんはすごいですね。ほんとうに...」


後半の言葉は少し震えていた。


「ごめん。ちょっと強引に誘いすぎたか?あれだったらピザ持って帰るか?」


「全然大丈夫です。気にしないでください。ちょっと今日は嬉しいことが多くて、ありがとうございます」


自分がやらかしてしまったと思い慌てたが、嬉しいと言ってくれていることに安堵した。


「せっかく一緒に飯食べるんだからさ楽しく食べようぜ」


自分でこの言葉を言って思い出す。


食事なんてただ生きる為の義務で食べていたあの時の俺にそう声をかけてくれた親友の存在を。


「そうですね。ではご飯を食べながら柊くんのこと教えてください」


「俺の事か....じゃあ聞きたいことがあったら答える質疑応答系でいこう」


「なんでも聞いていいんですか?」


「俺が答えられることなら答えるよ」


朝比奈さんはうんうんと頷いている。


「それは面白そうですね」


「そんなに俺に聞きたいことあるか?」


「ありますよ。柊くんは不思議な人なので」


「不思議じゃないと思うけどな、とりあえず乾杯」


グラスに注がれた炭酸飲料を口につけた。


「じゃあ早速質問です。柊くんは好きな人とか気になる人っていますか?」


口に含んだ飲料が変なところに入りむせた。


「ちょっと、大丈夫ですか?」


朝比奈さんにティッシュを渡され受け取る。


「びっくりした。最初の質問でそれ聞く人いないでしょ」


「一応高校生ですからよくある普通の質問だと思いますけど....私の周りの友人もよく聞いてきますし」


「俺の聞いたところで何の意味もないだろ」


「気になったから聞いたので意味はあるんじゃないですか?それでどうなんですか?」


「今の所そういうのとは程遠いな。自分が人を好きになることもないし、好意を持たれることもないだろ」


「ふーん、そういうものですか。今日みたいにお顔が見える髪型にしたら柊くんかっこいいので好意を持つ人多いと思いますけどね」


「視界が開けてると気疲れするから遠慮しとくよ。モテたいってわけでもないしな」


「回答が高校生っぽくないですねぇ。じゃあ次の質問ですが、私の事はかわいいと思いますか?」


ん?と聞き直したいほど普通に聞いてきた質問に固まる。


「どうなんですか?」


咳ばらいをしてごまかしたがどうやら答えないと次の質問に進まないらしい。


楽しい食事改め冷汗を垂らすドキドキパーティが始まったのであった。

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