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人間不信の俺が恋なんてするわけがない。  作者: 長谷川雫
第一章

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70 お揃いで、いつか終わる関係性

 お腹に食べ物を詰め込んだせいで、なかなか動けず朝比奈さんと話ながら食休みをした。


前に出かけた時もそうだが朝比奈さんとの会話は意外と続いた。


朝比奈さんからも話題を振ってくれるし、俺の話題もきちんと話を広げてくれる。


だけど、どこまでが本当で、何処までが嘘だったかわからない。


まぁ、俺の考え過ぎかもしれないけどな。


「そろそろお店見回りはじめるか、お待たせしてごめん」


「いえ、全然大丈夫ですよ」


「一応事前に調べては見たんだけど、朝比奈さんのおすすめがあるならそこ行こうか」


もともと決めていた予定だったのであらかじめお店に何があるか調べておいた。


基本的には食器や朝比奈さんが必要とする料理器具の為このショッピングモールで売っている店は四店舗くらいだった。


「そうですねぇ。私もよく行くお店があって雑貨も多く売っているのでそちらに行きましょうか」


「へぇ、雑貨も多いのか。おもしろそうだな」


「お店自体もそれなりのスペースがあって色々売ってるので見てるだけでも楽しいんですよね」


「じゃあ、早速行こうか....えっと、朝比奈さん?」


朝比奈さんの顔をみるとまたしても頬を膨らませていた。


「柊くんは、そんなに私の名前を呼びたくないのですか?」


今日一日定期的に見た朝比奈さんの不満げな顔は、どうやら行く道中で決めた下の名前で呼ぶ事ができていなかった事が原因らしい。


「えっと、そういう訳ではないんだけど...」


「じゃあ、どういう訳があるのですか!」


理由は単純明快で恥ずかしい以外の何もないんだが....それを言うのもどことなく恥ずかしさが残る。


「一応言っておくけど行きに決めた事を忘れてた訳ではないですからね」


「じゃあ、尚更なんでですか!」


「えっと、その....女性の人を名前で呼ぶことなんてなかったから...」


俺が理由を並べていると朝比奈さんは目を大きくした後に笑みがこぼれた。


「一ノ瀬くんは女の子の名前を呼んだ事がないから恥ずかしい...そう言うことですね?」


間違ってはいないが...いや、もういいか。


「さらっと呼び慣れてる、メンズじゃなくて悪かったな」


これ以上何を言っても揶揄われる気しかしないので潔く諦めた。


「でも、柊くんが呼び慣れてるのもちょっと違和感ありますけどね」


「それは、俺のことバカにしてるって捉えてもいいか?」


「違いますよ。あなたは別に人の名前なんて意図も容易く呼べるでしょうに」


….めんどくさいお嬢さんだ。


「今回は許してくれ、月」


彼女が求めていたのはきっとこれだ。


普段の一ノ瀬柊なら必要なことは抵抗なくそれをする。


荒治療もすぎるな....


「名前も呼んでもらえたので許します。そのうち自然と呼べるようになりますよ」


月は満足そうに笑みを浮かべていた。


「じゃあお店までの案内は月に任せるよ」


「任せてください」


俺はご機嫌になった朝比奈さんの後ろについていった。



****



「着きました!ここですよ」


朝比奈さんがお店の前で止まると俺の方に振り返り手招きしていた。


「本当だ、結構お店でかいんだな」


お店の規模はショッピングセンターの中にあっても大分広々としており店内にはすでにお客さんがそれなりにいた。


「では、私はお言葉に甘えて色々と物色してきますね。柊くんはせっかくですのでお店を一通り見てきてください」


要件だけ伝えた朝比奈さんは、慣れた足取りで店内に入っていった。


初めてくる店でいきなり一人取り残された俺は店の前に立っていても仕方なく、後に続いて入店した。


「本当だ、色々売ってるな....」


店内に入店するや否や、一か所見るだけでも商品の数が多く情報量が凄い。


これを管理しているお店側もすごいなと感心しつつ見慣れない小物雑貨を手に取った。


来ている人は女性が多いがちらほらと男性客もいる。


朝比奈さんが言っていたとおり見に来るだけでもおもしろいのだろう。


 一通り店内を回り楽しんだ後に、朝比奈さんが居るであろうコーナーに足を向けた。


「あら、案外早かったですね。もう少しゆっくり見ててもよかったのに」


「色々あって面白かったけど、一人で見てるのに気まずさがあったよ」


「あーなるほど」


朝比奈さんは周囲を見渡しながら俺の言ってることを察してくれたらしい。


「でも、戻ってきてくれてちょうどよかったです。その...とりあえず色々見繕ったのですが今日柊くんの御予算ってどれくらいですか?」


「あー、確かに伝えてなかったね」


俺はボディバッグを開き銀行の封筒を朝比奈さんに渡した。


封筒の中を見た朝比奈さんは凄い勢いでその封筒を俺のバッグにしまった。


「なっ...なんて金額持ち歩いてるんですか!!」


「えっ...生活必需品だし、これくらいあれば足りるかなと...それにどうせ買うなら長く使えたほうがいいから」


「確かに柊くんの言っていることはわかりますけど.....とりあえず、それだけあれば大体買えるのでお買い物終わったらすぐ銀行へ預けにいきますよ」


「了解。じゃあ、朝比奈さんが選んだ奴買っていきますか」


俺は近くにあった買い物カゴを手に取った。


「え?私が選んだの確認しなくていいんですか?」


「朝比奈さんが選んだって事はいい代物だろうし、さっき俺に対して予算を聞いたってことは俺の所持金に合わせて選んでくれてるって事だから心配してないよ」


俺が答えると朝比奈さんは息を一つこぼした。


「では、一度に買うととても重くなってしまいますから足りない分は後日買いましょうか」


「あいよ、司令官」


「そんなふざけた返事を司令官にする人なんて居ないと思いますけど....」


などとやり取りしながら朝比奈さんが選んだ物をカゴへと入れていく。


食器の形や大きさ、使用用途など細かく説明を挟みながらピックされていった。


正直俺にはわからない事が多すぎたが、話している朝比奈さんが楽しそうだったので口を挟む事をしなかった。


「これで大方選び終わりましたね」


選ばれた食器達が買い物かごの中に綺麗に重ねられ手で持つのも大分きつくなってきた。


「そうだ、この機会だからお箸とかも買っていこうかな」


「あら、まさか一ノ瀬くんからお箸を買うという言葉がでてくるとは」


「流石にここまで揃えたんだから買おうかなってなるでしょ」


「それは良い傾向ですね。一ノ瀬くんが人として成長してます」


….今確かに人としてって言ったよな。


一体俺はなんだと思われて接されていたのだろうか....


「お、このお箸セットいいな」


手に取ったセットはお箸にしては値が張るが毎日使うものであるし特に躊躇なくかごにいれた。


「このもう一膳は朝比奈さんが家に来た時に使ってくれ」


俺が選んだセットを指さして言うと朝比奈さんはコクンと小さくうなずいた。


「そうだ、どうせなら二人分のコップも買っていこうか」


「そ、そうですね」


どこか朝比奈さんがぎこちない気もするが、俺は一番最初に入った青とピンクのセットのマグカップを選んだ。


「これでいいか?あったかいのも冷たいのも飲めるし青とピンクだから分かりやすいし。朝比奈さんが気に入ってるデザインがあればそれでも全然いいよ」


「し、柊くんがいいなら、私はいいですけど....」


「あいよ、じゃあ流石にレジに行くか。腕ちぎれそうだ」


 お会計に向かいレジに重たくなったカゴを丁寧に置く。


店員さんが丁寧に商品をスキャンしていく。


「お二人で新生活ですか?」


「いえ、今住んでいる家に食器類が無くて買いにきたんです」


いきなり喋りかけられ驚いたが無難に返答しておく。


「そうだったんですね~お揃いの食器なんてうらやましいです、しかも夫婦箸までいいなぁ~」


店員さんがどんどんエスカレートして抑えもきかなくなっていった。


その中で一人気にせず選んでしまったがかなり大戦犯をやらかしてしまった事実に気づいてしまった。


朝比奈さんをチラッと見やると顔を赤らめ恥ずかしそうに店員さんと話していた。


俺は会計を済ませ丁寧に梱包された紙袋を受け取り店を後にした。


「朝比奈さんマジでごめん」


店を出て開口一番に謝罪をいれた。


「私は柊くんが理解した上で選んだかと思ってましたがどうやら違ったみたいですね」


「マジで見てなかったです....」


「言ったでしょう?柊くんがいいならって」


もっと具体的に言ってくれればよかったのに...と心の中で泣きながら呟いた。


「まぁ、もう買っちゃったしな。一応いいお値段だったからさ、この関係が終わったら持って帰って使ってくれ」


「わかりました、その時はありがたくもらい受けますね」


体育祭が終わればこの関係性も終わる。


その時にお互いの関係がどうなっているかなんてわからない。


「それじゃあ帰ろうか」


「そうですね、帰りましょう。でも、その前に必要分以外はお金を預けて帰りましょうね?」


このまま帰宅しようとしていたが、先程の会話を忘れていなかった朝比奈さんに釘を刺されたため大人しく従うのであった。


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