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人間不信の俺が恋なんてするわけがない。  作者: 長谷川雫
第一章

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68 見習った変装

 一度二人で帰宅し解散した後、シャワーを浴びて運動の汗を流し外出用の服に着替えなおす。


朝比奈さんと出かけるのでいつものラフな格好よりもきちんと服を選んだ。


着替えた後、洗面台の前に立ち自分の髪を指でつまむ。


 少し長めの前髪は目にかかり、同性の中でも長い部類にはいるだろう。


そろそろ切らなきゃなと思いながら、自分の中で今の長さを気に入っているのでなかなか美容室に足を運ばないでいた。


とはいえ印象が悪く見えてしまうのは事実だろう。


学校ならそれで人との関わりを制限できるので問題はないが、外見である程度ラベルを貼られてしまうので学校以外でも朝比奈さんに迷惑が被るかもしれない。


普段と違うと変装になるというのは前回朝比奈さんから学んだ事でもあるしな。


俺はドライヤーを手に取り前髪に温風をあて癖をつけた後、使う機会が少ないワックスを取り出した。


人差し指で適量取り出し、手のひらになじませる。


俺は後ろ髪からワックスを馴染ませていき、手にあまったワックスで前髪も上げていった。


最後に全体を整えれば鏡に映る自分は多少は好青年に近づいたのではないだろうか。


自分で見ても印象が大分違うので、他の人からしたらもう俺だと気づく人はあまりいないだろう。


視界が良好になり、落ち着きはしないがもうワックスをつけた後出し手遅れだ、洗い流す時間ももうないしな。


俺は洗面台の電気を消しリビングに戻った。


 時計をみればそろそろ待ち合わせの時間だったので財布とスマホをポケットに入れシャツを羽織り家を出た。


エントランスに降りると朝比奈さんが先に待っていた。


「ごめんね。朝比奈さん、待たせちゃったかな?」


俺が声をかけると朝比奈さんはジロジロと上から下へと視線をなぞらせた。


「一ノ瀬くんですよね...?」


「そうですけど....」


「一ノ瀬くんのお兄さん?」


「姉さんはいるけど兄はいないよ」


「えっ...じゃあ...柊くん!?」


朝比奈さんは驚き空いた口を手で覆っていた。


こちらもいきなり下の名前で呼ばれた事にビクッと驚いた。


「変だったかな?その、前回の朝比奈さんを習ってやってみたんだが...」


やはり変だったのかもしれない...そう思うと段々と恥ずかしくなってきた。


「全然変なんかじゃないです、むしろとてもお似合いです!」


朝比奈さんは両掌をふり肯定してくれた。


「普段髪が長くて隠れてますが、一ノ瀬くんお顔調っているし顔ださないのもったいないですよ!」


「それ廣幸にも言われた事あるけど、顔がいい人たちに言われてもなぁ」


「そんな嫌味のつもりで言ってません」


朝比奈さんは頬を膨らませた。


「朝比奈さんは今日もその髪型なんですね、似合ってます」


 前回出かけた時にしていた髪型だったが、普段学校では髪を降ろしているし見慣れないこともあるがやはり清楚で可憐の彼女にはとてもよく似合っていると髪型だと思う。


「一ノ瀬くんこの髪型好きなんですか?前回も大分褒めてくださったので」


「多分好きなのかな?でもなんていうか、朝比奈さんにすごく似合ってるからであって他の人がしてたら好きか聞かれてもわからないかな?」


「それはとても嬉しい褒め言葉ですね。でも、一ノ瀬くんの正直さは心臓によろしくないです」


喜んでいるのか怒っているのか難しい反応をされたが顔をみればわかるので野暮な事をいうのはやめた。


「帰るの遅くなっちゃう前に行こうか」


「休日で混んでいるでしょうし用事を済ませて早めに帰りましょう」

 マンションを後にし、歩き始めて駅へと向かっていた。


日に日に朝比奈さんと縮まった関係はある程度気を許せる相手へとなっていた。


最初に比べれば他愛ない会話も増え、初めて出かけた時は存在感が薄く朝比奈さんに置いて行かれさえしたが今はそんなこともなく隣を普通に歩けていた。



休日な事もあり道行く人は多く以前は周りばかり気になっていたが、いつもの自分とは容姿....と言っても髪型を変えただけなのだが誰にもバレないだろうという自信もあるおかげで気にならなかった。


「一ノ瀬くん...その少し変わりました?」


唐突な「変わった」という言葉に返答を悩んでしまった。


「どうだろう?自分ではそんなこと全然思ってなかったけど」


「だって、少し前は周りばかり気にしていましたし、私との会話も言葉を崩して会話もありませんでしたし」


色々刺されている気はするが...それでも自分自身が変わったなと思ったことはない。


「今日で言えば一ノ瀬柊ってバレない自信があるし、言葉を崩せて話せてるのは朝比奈さんと過ごす時間が増えた事もあるけど、君が変わる手助けをしてくれたから」


「ふふっ...そうでしたか。私が少しでもあなたの助けになれたのならとても嬉しいです」


隣にいる朝比奈さんはとても嬉しそうに笑っていた。


「朝比奈さんは俺の事変わったって言ってくれるけど、俺自身はそこまで変わったって気は特にしてないかな」


「それはそうでしょう。ただ私は一ノ瀬くんと一緒にいる期間が多いので気付いただけですから、焦らなくても大丈夫ですよ。それに....」


「それに?」


「一ノ瀬くんってバレないようにもう一つ助言してあげましょうか?」


朝比奈さんは少し悪戯めいた表情をしているが一応聞いてみる事にする。


「それは....どんな方法なんです?」


「とても簡単です。私の事を下の名前で呼ぶだけですよ」


朝比奈さんはすごい爆弾を投下してきた。


「それは流石に....」


「あら?私の名前を知らない?それとも下の名前は呼ぶに値しないですか?」


とてつもない圧力をかけられてたじろいでしまう。


「えっと、あれですよ...もちろん下の名前も存じてますし、とてもお似合いなお名前ですけど、いくらなんでも諸刃の剣というか....」


「だからですよ、目撃情報があったとしても私の下の名前を気軽に呼んでいるし、一ノ瀬くんってことにより気づかれにくくなると思いますよ」


 確かに朝比奈さんの言う事は間違っていない様にも受け取れるが流石に抵抗はある...。


「あなたは学校で自分がどのように立ち回っているのか忘れたのですか?」


俺が提案に渋っていると朝比奈さんが言った言葉で気付かされた。


普段日頃から目立つのを避けクラスの日陰者の俺が、そもそも朝比奈さんと交流があるなんて事をそもそもありえない。


だけど今の期間は違う気が....。


「確かに今は体育祭の期間でグループも一緒ですが、二人で出かけるなんて思われますか?」


「確かにその可能性は大いにないな」


「その場合は神宮寺さん、清水さん、岸宮さんが居て成立するお出かけの可能性を加味されますよね?」


少し強引なような気がするが、特段返す言葉も見当たらない。


「る...月さん....?」


「はい!なんですか。柊くん?」


俺はぎこちなく彼女の名前を読んでみると、可愛らしく俺の目の前に寄って返事をした。


それも俺の下の名前を呼んで。


その行動に目を惹かれ言葉を失ったのだが。


「朝比奈さんが俺の名前を下の名前で呼ぶと色々と話が違うのでは?」


「柊くんだけ私の事下の名前で呼ぶのずるいじゃないですか」


そう言って朝比奈さんは笑った。


俺は朝比奈さんにはめられたのかもしれない....。


「今日は余裕持って駅に着きましたね」


俺の少し前に歩いて嬉しそうに言う。


「階段あって危ないから先行かないでね」


「もう!私はそこまで子供じゃないです!」


どこかしてやられた気分になったので、俺は朝比奈さんを少女扱いしておいた。


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