表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人間不信の俺が恋なんてするわけがない。  作者: 長谷川雫
第一章
6/65

06 いつもと違う帰り道

 お互いにレジでの会計が終わり袋詰め作業していた。


「女子高生はエコバックすら常に携帯しているのか...」


隣で朝比奈さんが鞄から取り出したの見て言葉がこぼれた。


「どうなんですかね?私は持ち歩く用にしてますが他の人まではわかりませんね。」


「逆になんで持ち歩いてるんだ?」


「シンプルに節約ですね。積み重なったらすごそうですし、後はエコバックの方が手が痛くなりにくいのも理由ですね」


「なるほど。確かに家に袋めっちゃ余ってるなぁ....」


「まぁ、ちゃんと畳んでしまえば、あまりかさばらないですけど、一ノ瀬くんは...」


あぁ、今明らかにやらないだろうなって思われただろうなぁ。


「今度ちゃんと畳みます..」


「あの、一ノ瀬くんって」


「ん?」


「その大量に入っているハンバーグってお一人でたべるのですか?」


そういう朝比奈さんの顔がすごく引きっていた。


まぁ、朝比奈さんに限らず誰もがこのかごに入っているものをみたら同じ反応をするであろう。


「あぁ、まぁ一応一人で食べる予定だけど...」


 自分で聞いてきたはずの朝比奈さんが唖然としていた。


俺としては一人暮らしを始めてから普通の食生活なんだけどなぁ...。


 自分でも体に良くないことはそれなりに理解をしてこの生活を楽しんでいるのだが他の人から見たらやはり異常だと思う量だったみたいだ。


「一ノ瀬くんって自炊とかしないのですか?」


「自炊以前に、家事全般苦手で」


「意外ですね。何でもそつなくこなすタイプだと思ってました」


 この言葉にはさすがに苦笑いせざるを得ない。


「まぁ好きなもの毎日食べれるのは幸せだよ」


「そうかもしれないですけど、さすがに心配になるレベルですね..」


「成長期なんですからしっかり栄養考えてくださいね?」


「善処します」


 まるで母親と接しているかのようなお節介ぶりの朝比奈さんを見て笑いがこみあげてくる。


「なんでニヤニヤしてるのですか?」


「あーごめんごめん。なんか母親と接している気分になったから、懐かしいなって」


「あ、これプリン。どうぞ」


「一ノ瀬くんのお母様もこのカゴの中をみたらきっと私と同じように言うと思いますよ」


「プリンありがとうございます。感想文でも書いてきましょうか?」


 朝比奈さんがニコニコしながら冗談を交えてお礼を言ってきたので呆気に取られて一瞬思考が停止した。


「朝比奈さんがおいしく食べてくれたらそれで十分だから感想文は大丈夫です」


 さすがに俺だって年頃の男なのだ。


不意打ちであんな笑顔を見せられたらドキッとしてしまう。


 朝比奈さんに動揺を悟られないよう冷静を装いながら、かごに入っているものを全部レジ袋に詰め込んだ。


 学校からいくら早く帰ったといってもスーパーに寄って買い物を終えれば当たりは日が沈みかけており、暗くなり始めていた。


「さっきまで明るかったのにもう暗くなり始めてるな」


「ちょっとスーパーで長居しちゃいましたね」


「俺のせいだなごめん、他にやる事とかあったよな」


「いえ、全然大丈夫ですよ。特に他の予定などはありませんから」


 そう言ってもらえて安堵する。


 自分的に謝罪するにしても場所を選ぶべきだったと思っていたからだ。


....スーパーで謝罪というのも何だか変な気もするが許してもらえて何よりだ。


 この辺の治安は良いらしいが、ここからどれくらいの場所に住んでいるかわからない以上、暗い中を女の子一人で返すのも心配だ。


 送って行ってあげるべきな気もするのだが、彼女と初めて話したのもつい先日というのもあるし、さすがに迷惑な気もする。


なにより、朝比奈さんといるところを誰かに見られるのも避けたいところだ。


しかし何か事件に巻き込まれたりでもしたら、心残りになると思い、提案してみることにした。


「あ、あの」


「はい?」


「迷惑じゃなかったらその、暗くなってきてるし荷物も結構重そうだから家の近くまで送るけど...」


 その発言を聞いた朝比奈さんは目をパチクリさせふふっと笑みをこぼした。


「やっぱり迷惑だったよね、ごめん」


「いえ、全然迷惑だなんて思ってませんよ、ただ..ふふっ」


何か意味ありげに笑う朝比奈さん。


少なくとも、気分を害したわけではなさそうだ。


「ただ気づいていないんだなと思いまして」


「気づいてない?」


迷惑かと思っていたのに迷惑じゃないと言われ、何かの意図が隠された笑みに情報量が多すぎて俺の頭はほぼパンク状態だ。


「じゃあお言葉に甘えて、送ってもらってもいいですか?あと、さっきの答えは歩いていればそのうちわかりますよ」


 そういって彼女は笑いながら答えた。


下駄箱での一件はすっかり忘れたかのようにご機嫌で、俺は少しホッとした。


「荷物持つよ」


「これくらい余裕で持てますよ、家もすぐそこですし」


 そう言う彼女のエコバックの中には俺とは違い調味料や生野菜などと家庭的なものが入っているのが目に見えていた


 調味料も小さいものがあるとはいえそれが複数入っていれば朝比奈さんの細い腕では心配になってしまう。


「じゃあその手のひらを見せてもらってもいいかな」


やはり、かなり重かったのであろう。彼女の手のひらは真っ赤に染まっていた。


「うぅ..今日ちょっと買いすぎてしまって...」


「普段は一人で持って帰ってるかもしれないけどこういう状況の場合は男性に任せるほうがいいぞ」


そういい俺は朝比奈さんの荷物を預かった。


「すみません、ありがとうございます」


俺の家はスーパーから15分かからないくらいだけど朝比奈さんの家はどれくらいかかるのだろうか?


近いと言っていたので俺の家より手前くらいだろうか。


 今歩いている方向が自分の家の帰宅コースなので通り過ぎて戻るか家につくまでの道中にあるんだろうなと思いながら俺の視線の先で歩いてる朝比奈さんをみる。


やけに楽しそうで足取りが軽やかだ。


「朝比奈さんずいぶんと楽しそうだね」


「そりゃあこの後の一ノ瀬くんの反応が楽しみですから」


そういう彼女は悪戯めいた笑みを浮かべていた。


「すげぇ、怖いんですけど。俺一体どうなっちゃうんですかね」


「どうなるんですかね、私も楽しみです」


朝比奈さんと会話していると学校での印象とやはり大分違いがある。


 綺麗な言葉遣いや所作は変わらないのだが表情とか感情が学校で見るものと表れが全然違う。


これが本来の彼女の素なんだろうなというのが見て分かるのだが、まぁ詮索も野暮かと思っていると。


気づけば自分の家のマンションの前だった。


 ということは朝比奈さんの家はこの先かと思って通り過ぎようとしたら彼女がピタリと止まってこちらを振り返ってくる。


「一ノ瀬くんのお家ってここですよね?」


彼女の一言で俺は驚愕した。


「え、何で知ってるんですか?」


「ふふっ」


「私の家もここですよ」


「は?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ