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人間不信の俺が恋なんてするわけがない。  作者: 長谷川雫
第一章
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05 ガラスのハートと話題のプリン。

「あぁ、今帰りだよ」


いきなり声を掛けられ少し戸惑ったが何とか会話に成功する。


「朝比奈さんも今帰り?」


「はい。そうですよ」


「今日はまっすぐ帰れそうでよかったね」


「そうですね、ここ最近は先生に仕事を頼まれることが多かったですからこんなに早く帰るのは久しぶりです」


「さすがに優等生すぎるな、先生にまでお優しいとは学校のみんなが女神って崇めるわけだ」


「私は...そんな偶像的な存在じゃないですよ...普通の女の子ですよ。」


 先ほどまでとの雰囲気が一変してそう言った彼女は儚くて不安定で今すぐにでも壊れてしまいそうだった。


どうやら俺は彼女のパーソナルスペースを踏み込んでしまったみたいだ。


俺は一足先に行った彼女を追いかけた。


「ごめん。君を傷つけるつもりじゃなかったんだ」


「いえ、私の方こそすみません。では失礼します」


そう告げ歩き出す彼女の背を見送りながら俺は立ち尽くした。


 朝比奈さんと初めて喋った日俺は普通の女の子だなって自分で思ったじゃないか...。

それなのに考えなしに発言してしまった。


俺は”あいつ”にみたいに...最低だ。


「女の子の心はガラスのハートで出来ているのよ」昔から母に言われて育ってきた。


 正直当時の俺はその抽象的な言葉をあまり理解できなかったが今の朝比奈さんを見て俺は母親が言っていたことが分かった気がした。


明日もう一度ちゃんと謝罪しよう、そう誓い俺も学校から帰宅する。


学校を後にした俺は帰り道にあるスーパーに寄った。


俺は中に入りカゴを取るとカップ麺コーナーに向かう


 湯を沸かすだけで食べられるというのは非常に便利で、火の面倒を見る必要がないというのもあって時間を有効に使えるのも魅力だ。


文明の発展に感謝しながら、とりあえずおいしそうなカップ麺をカゴに何個か放り込み、次に向かうのは俺の大好物であるチーズinハンバーグが売っている冷凍食品コーナーだ。


 売り場につくと裏面の賞味期限を確認して7個かごに放り込んだこれで毎日ハンバーグが食べれる。


料理ができない俺にとって、冷凍食品は非常にありがたい存在だ。


というかふと思ったのだが、最低限の料理すらできないのに一人暮らしを始めたのはかなり無謀なのではないだろうか。


 母親が一番それを知っているのによく一人暮らしを勧めたものだが今更そんなことを考えても後戻りはできないので諦めることにする。


親元にいたらこんな不摂生な食生活まずありえないし好きなものだけを食べるという贅沢はできなかっただろう。何より野菜が出てくるので偏食である俺にはそれが憂鬱だった。


まぁ、作ってもらっている以上文句など言えないので水で流し込んで食べていたが...


 自分の好物を大量に詰めたあと他に買い忘れがないかスーパーを巡回してる途中昨日見ていたテレビで流れていたCMを思い出した。


そういえば。なんかおいしそうなプリンのCMやってたな..もう売ってるのかな?


そう思い立ってとりあえず見に行ってみようとデザートコーナーに足を運んだ。


デザートコーナーに足を運べばお目当てのものは見てすぐ分かった。

今テレビで話題のPOPで豪華に装飾されていたからだ。


 テレビで話題だけあってやっぱり人気がすごいらしい目の前の売り場でもラスト1個しか残っていない。


これは次買えるかわからないなと思いながらプリンに手を伸ばす


「あっ...」


「すみませんでし...あっ」


プリンを取ろうとして手が重なった相手は朝比奈さんだった。


まさか先ほどの別れからこんな風にして再開するとは思わなかった。


「あ、ごめん。よかったら朝比奈さんがこれ買ってよ」


「いえ、これはあなたが先に買おうとしていたのであなたが買ってください」


 強情に朝比奈さんに押しつけられる。


「朝比奈さんだってテレビで話題のプリンが気になってたんだろ。これは君に譲る。」


「なっ..ま、まぁ、気になってましたけど..」


 恥ずかしそうに顔を赤らめながら小さい声で朝比奈さんはそう言った。


「さっきはごめん、本当に君を傷つけたいわけじゃなかったんだ。また明日謝罪しようと思っていた矢先にここで会うと思わなかったけど」


「だからその、謝罪とお詫びということでこのプリンも朝比奈さんが買ってくれというか奢らせてくれ」


「いえ、、本当に気にしてませんから。」


「俺の気持ち的にも今回はご馳走させてほしい。そうじゃないと気が済まないというか..」


俺に諦める気がないのを察したのか、朝比奈さんの方が先に折れたようだ。


「では、お言葉に甘えてありがたく頂戴しますね」


そう言って朝比奈さんは少し困ったように笑った。


「受け取ってもらえて良かった。じゃあ俺はもう必要なものはあらかたカゴに入れたから、先に会計済まして待ってるよ」


「私も必要なものは揃っているのであとはレジに向かうだけですよ」


「じゃあ、お互いに会計済まそうか」


「そうですね」


計画性のかけらもない俺の買い物はなかなかの金額になった。

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