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パチンコあっての我が人生

作者: ロック

1999年の夏頃、僕はその台に賭けていた。

マリンと呼ばれる水着姿の人魚姫を彷彿とさせるキャラクターが画面上に映っている。

僕の手元には、僕のお小遣い1000円。少しだけ大人びていた僕は成人を装い、逆転一発を狙っていた。

こんなところ、先生に見つかったら、面倒なことになるのはわかっている。


でも、僕にはどうしてもお金が必要だった。どうしても。

それは当時、流行していたプレイステーションの陰に隠れて、殆ど目立つことのなかったドリームキャストというゲーム機が欲しかった僕は、親に何度もねだったが、「ゲームは頭が悪くなるから買いません」と一括され、さらには唯一の希望のお年玉さえも、親が「貯金してあげるから」という理由で僕から奪った。


結局、月1000円の小遣いを貯めてやりくりするしかなかった僕は、ドリームキャストだけは本当に欲しかったゲームなのだ。

なるべくなら高校に上がるまでには欲しかった。

だから僕はパチンコで元手を増やし、一発逆転を狙った。


だが現在手元の玉が少なくなった。回転はトータル23回ほど。

これはおそらく負けるだろう、そして1000円のお小遣いは、海の底へと消えていくのだ。

そう僕は確信していた。だが、突然台から「リーチ!」と聞こえた。

そしてBGMが普段のBGMとは違うものに変わる。


これは・・・、これは・・・!

そして海老の5番がそろって、僕は当たった!

玉があふれんばかりに出てくる。

僕はハンドルを強く握った。ドル箱がすぐにいっぱいになり、僕は優越感に浸った。

パチンコってなんて面白い遊びなんだ!

中学1年生の僕は、滝の如くあふれる玉を前に、強い快感を覚えた。

思えばこの遊戯は、テレビゲームよりも楽しいものなのかもしれない。

こうして、僕は結局本来欲しかったはずのドリームキャストは、買わなかった。

もっとお金が欲しくなった僕は、中学生ながらパチンコ店に通い続けたが、ある日、警察の通報を受けて僕は、店への出禁処分と小遣い没収の刑を喰らった。

僕は勉強して一流企業に入って、そして給料でまた海物語にトライしようと考えた。


あれから時は経った。

2009年、僕は社会人となり、大手企業に月手取り20万円の給料で暮らしている。

僕は久々にパチンコ屋へ赴き、海物語を行った。

CRスーパー海物語 IN 地中海。

10年ぶりとなる海物語に僕は胸を馳せた。


店内は昔よりもさらにおしゃれで豪華になっており、おしぼりまで僕に差し出してくれるスタッフさんのその笑顔は10年前だったら考えられないものだった。

だが、その接客の素晴らしさとは上原に、全然玉が出ない。

回転数は500回、明らかにおかしい、あのころとは全く違う。

あの頃のパチンコはもっと出たし、何よりも今より楽しかった。


時が経って大きな変化を遂げたその台の演出に関しては10年前よりだいぶ豪華になっている。

だが、演出の豪華さと反比例するがごとく全く当たらなくなっていた。

思えば、あの頃のパチンコはよく出たが、もう出ない。

そうか、俺の青春は1999年代がピークだったのかもしれない。

そう思い、10000円つぎ込んだところで勝負を終えることにした。


帰りがけ、背広姿でショートピースを蒸かしながら歩いていると、見覚えのある老夫婦が経営しているゲームセンターが眼中にあった。

「パチンコ台もあるのか」

僕は、そのゲームセンターに入り、どんな機種があるのかを確認した。

するとそこにはあの懐かしの初代海物語があった。

夫の方は、僕を見て誰だか思い出してくれたようで、「お前は、中学生ながらにしてプロ級の腕を持つ・・・」

思い出した。この人はパチンコ屋で出会ったんだ。

僕がまだ中学生の頃、自称パチプロだったこの方に色々とテクニックを教えてもらったのを僕は思い出した。

「久しぶりです“師匠”」

「元気しよったか。」

「まぁ・・・一応元気にはしておりました。師匠の方こそ体調はいかがです?」

「俺はまだまだ元気だよ。だから今もこうして小さなゲームセンターを経営してるんじゃないか」


聞くところによると老夫婦は、1978年頃からゲームセンターを経営していて、それこそ90年代まではそこそこ稼いでいたみたいだが、家庭用ゲーム機がアーケードゲームの性能にほぼ追いついてしまった結果、赤字が続き、どうやら、店を畳むことさえも検討していたようだ。


置かれているゲームもレトロなものが占めていて、スペースインベーダーやストリートファイターII、ハングオン筐体や初代のメタルスラッグ・・・のような店長の趣味があふれ出たようなレトロなものばかりで、当然のようにプリクラ機や、太鼓の達人など一般人の集客を狙っているのではなく、一部のレトロゲームマニアを喜ばせるような筐体ばかりであった。


しかし、多額の負債をパチンコでチャラにしようとした師匠は、パチンコに手を出し、テクニックを研究し、負債をチャラにし、地元でも話題になるほどのパチプロになったのだ。

だが、近年の出玉規制の厳しさから、パチプロから足を洗わないといけなくなってしまった師匠はパチンコを辞めて店の経営が厳しくなったら日雇い労働で金を得ていた。

「久しぶりに打っていかんかね」

僕は師匠に勧められるがまま、ゲームセンター用の初代海物語の台に百円を入れた。

懐かしい音色に僕は中学生だった当時のことを思い出しながら、この海物語をプレイした。


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